「出雲モデル」――富士通は先に、同社のノートPCの生産拠点である島根富士通で製造したPCを「出雲モデル」としてプロモーションすること発表した。デスクトップPCを生産する、福島県伊達市にある富士通アイソテック製造の「伊達モデル」と共に、日本の工場で生産している製品であることを前面にアピールする。これを受け、島根富士通では出雲モデルのブランド活用を前に、工場内を報道陣に公開した。富士通が出雲ブランドを大々的にアピールする狙いはどこにあるのだろうか。
「フルスタックでICT製品を提供している点が強み」
工場公開にあたって、最初に富士通の齋藤邦彰執行役が、富士通のパソコン戦略について説明した。齋藤執行役は「最近のパソコンを巡る動きについて、避けて通るわけにはいかない」と他社の動向についても言及した。
同氏は「海外では世界トップシェアのHP社がパソコン事業分離のための戦略的検討を開始し、国内トップシェアのNECがレノボと合弁会社を設立した。さらに、パソコン生みの親の一人であるアップルのスティーブ・ジョブズ チェアマンが、『パソコンはまもなくデジタルライフの主役ではなくなる』と発言している。パソコン産業の変化点に差し掛かっていることは間違いなく、富士通も大丈夫なのか? という声をいただく。それについてお答えする」と言う。
富士通は世界第3位のトータルICTベンダーとして、「デバイス、パソコン・携帯、ネットワーク、ミドルウェア、ストレージ、サーバーと全てのレイヤーをやっている。スパコンの『京』で世界ナンバー1になったことは記憶に新しい。このうちパソコン・携帯はお客様に触れるユビキタスフロントとして、クラウドなどICT製品全体の印象につながる重要なものと考えている。全てを自分自身の手でやっているからこそ、責任を持てる」とフルスタックでICT製品を提供している点こそ強みだと説明する。
生産についても、競合他社がODM (Original Design Manufacturing)による生産を増やしている中、「パソコンの90%以上が中国生産となっているが、開発から生産まで国内で一貫して行う体制を持っていることで、きめ細かいカスタマイズ対応に答え、ニーズの変化に迅速に対応できる」という。
その結果、富士通ではWindows7を搭載した強固なセキュリティを持ったスレートPC「STYLISTIC Q550」、簡単に利用できる使いやすさへのこだわりを持った「らくらくパソコン」シリーズなどの独自製品、世界最小のWindows 7搭載の携帯電話「Windows 7ケータイ F-07C」など世界に先駆けた製品をはじめ、ノートからデスクトップまでフルラインの製品を提供している。
また、2010年度実績で542万台の出荷実績があったのに対し、「中期計画として1,000万台規模へ」という目標を掲げる。1,000万台を達成するためには、現在は50%の海外比率を70%まで拡大し、従来に比べAPEC地域で低価格製品の販売量を増やす計画だ。
なお、海外に提供する低価格モデルの搭載OSについては、「なんとも言えない」としている。「現行のWindows-Intelは企業系中心に残っていくことは間違いないが、AndroidやARMなどそれとは異なるプラットフォームもマトリックスで伸びていく」との見解を齋藤執行役は示した。
また、「現在は中国地区でプレミアモデルを中心に販売しているが、悪い言い方になるかもしれないが見せ球として低価格モデルが欲しいという需要もある。プレミアムモデルと共に低価格モデルを販売することで販売量が全体に増加する」とも言い、生産体制としては1,000万台までは現状のままで対応できるという。