日本ヒューレット・パッカードは9月21日、個人向けインクジェット複合機の新モデルを発表した。スリムデザインが特徴のハイエンド機「HP ENVY110」、両面印刷に対応したスタンダード機「HP Photosmart 6510」、リーズナブルなエントリー機「HP Photosmart 5510」の3機種。いずれも無線LANに対応し、多彩なモバイル印刷機能などを備えている。3モデルとも電源ユニット内蔵でスッキリしており、2時間で電源がオフになるオートオフ機能を搭載。無駄に電力を消費しない仕様だ。

注目はiOS用とAndroid用が用意された無料アプリの「HP ePrint Home & Biz」。スマートフォンやタブレット端末へインストールすることで、PCライクに複合機を利用できる。JPEG形式の画像やWebサイトはもちろん、マイクロソフトのオフィススイート(Word、Excel、PowerPoint)やPDF形式などのデータを印刷可能。今回のすべての新モデルがHP ePrint Home & Bizに対応している。

加えて、複合機に割り当てられたメールアドレス宛に印刷したいファイルを送信して出力できる「HP ePrint」、PC不要でGmailやGoogle Docsを印刷できる「Google Cloud Print」、ドライバ不要でiPhone/iPad/iPod TouchからWebサイトやJPEG画像を手軽に印刷できる「Apple Air Print」など、スマートフォンやタブレット端末で便利なモバイル印刷機能を用意している。

「HP ePrint Home & Biz」

モバイルプリンティングソリューション

ちなみに「HP ePrint」は昨年(2010年)のモデルでもサポートされていたが、複合機に割り当てられるメールアドレスが英数字の並びで覚えにくかった。この点は改善の要望が多かったそうで、新たに好きな文字列のメールアドレスで登録できるようになった。複合機にもユニークなメールアドレスを持たせることで、複合機を家族の一員であるかのように迎え入れて欲しいとしている。

「HP ENVY110」

「HP ENVY110」

メモリカードスロット

インクカートリッジ

高さ約10センチのスリム設計を実現したモデルで薄型のスタイリッシュな外観が特徴。印刷解像度は4,800×1,200dpiで、印刷速度はモノクロで約7枚/分、カラーは約4.5枚/分と高速。インクシステムは顔料Bkカートリッジと染料3色(CMY)一体型カートリッジ。SDメモリーカード/メモリースティックスロットを備え、自動両面印刷にも対応。イメージセンサーは光学1,200×1,200dpiのCIS、コピー速度はモノクロで約6枚/分、カラーは約4枚/分。価格は29,820円(HP Directplus価格)で、11月1日の発売予定。

「HP Photosmart 6510」

「HP Photosmart 6510」

上下2段の給紙トレイ

ブラックを基調とした落ちついた外観デザインが印象的なスタンダードモデル。印刷解像度は4,800×1,200dpiで、印刷速度はモノクロで約11枚/分、カラーは約枚/分。インクシステムは顔料Bkと染料CMYの4色独立カートリッジ。SDメモリーカードスロットとメモリースティックスロットを備え、イメージセンサーは光学1,200×1,200dpi、コピー速度はモノクロで約6.5枚/分、カラーは約5.5枚/分。両面印刷に対応し、本体前面に上下2段の給紙トレイを採用している。価格は19,950円(HP Directplus価格)で、11月1日の発売予定。

「HP Photosmart 5510」

「HP Photosmart 5510」

インクカートリッジは上位モデル「HP Photosmart 6510」も共通

下位モデルに当たる「HP Photosmart 5510」は、コピー速度がモノクロで約5.5枚/分、カラーは約4.5枚/分など印刷速度が少々遅くなるが、基本性能は上位モデルとほぼ同等。両面印刷や2段給紙トレイが省かれている。価格は12,810円(HP Directplus価格)で、10月14日の発売予定。

3年後には15%のシェアが目標

9月21日には新モデルの発表会も開催された。初めに登壇した日本ヒューレット・パッカード 取締役 執行役員 イメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏は、現在の個人向けプリンタ/複合機を巡る状況や新モデルの背景を述べた。現在はデジタルデータが膨大に増え続けているが、デジタルデータだけでは完結せず、"紙"の重要性が改めて再認識されているという。自由に読み書きできて電源もいらない"紙"は究極のモバイルデバイスではないかとし、デジタルデータの増大とともに、実際に見たり触ったりできる"紙"への印刷ニーズも高まるという見通しを示した。

日本ヒューレット・パッカード 取締役 執行役員 イメージング・プリンティング事業統括、挽野元氏

同社の個人向けインクジェット製品のネットワーク対応

また、同社の個人向けインクジェット製品は、2009年モデルでWeb印刷、2010年モデルでクラウドプリンティングを実装してきており、今回の2011年モデルではスマートフォンからの印刷やクラウドプリンティングをさらに強化。「イノベーションはいつもHP」からと、高い自負をアピールした。

新モデルの概要や販売戦略を紹介したのは、日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括 コンシューマービジネス本部 本部長の松本達彦氏。日本におけるスマートフォンの台数は、2014年には4,000万台にのぼると予想しており、充実したモバイル環境によってライフスタイルの変化が生じているとした。そこで競合他社との大きな差別点として、先述した専用アプリ「HP ePrint Home & Biz」を挙げる。スマートフォンやタブレットデバイスから、今回の新モデルでいかに簡単に印刷できるか、そして「スマホに変えたら、HPプリンターに変えよう!」というキャッチコピーを紹介した。

日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括 コンシューマービジネス本部 本部長、松本達彦氏

「スマホに変えたら、HPプリンターに変えよう!」のキャッチコピー

なお、現時点では「HP ePrint Home & Biz」のGUIは英語だが、同社のWebサイトで画面上の英語表記と日本語の対応などを公開するという。アプリ自体の日本語ローカライズも前向きに検討中とのことだ(時期は未定)。英語のGUIで提供することには抵抗もあったらしいが、とにかくスマートフォン/タブレットデバイスからの印刷が便利で使いやすくなるため、英語GUIの状態でもまずはユーザーに使ってほしいと考えて投入するそうだ。

販売戦略については、既存市場でのシェア拡大と、新規市場の開拓が大きな2本の柱。前者では低価格や無線LANの簡単接続、スマートフォン連携などを前面に出し、3年後には15%のシェアが目標とした。後者はスマートフォンユーザーの取り込みを狙い、量販店の携帯コーナーで訴求したり、PCをあまり使わないユーザーにもアピールするという。