金価格が急上昇し、今後も上昇すると予想される中、スーパーファンド証券の金建て日本公募ファンド「スーパーファンド・グリーン・ゴールド・ジャパン」も、設定来リターンが+61.29%と、好調な実績をあげている。今回は、同社社長のヨハン・ピーター・サンター氏に、金価格上昇の要因や今後の金価格の動向、同ファンドの仕組みなどについてインタビューした内容を、2回にわたり紹介したい。

スーパーファンド証券の社長のヨハン・ピーター・サンター氏

あらゆる資金が「ゴールド」に流入

「スーパーファンド・グリーン・ゴールド・ジャパン」は、世界中の商品先物と金融先物市場に分散投資し、相場の動向から独立したヘッジファンド戦略(マネージドフューチャーズ/CTA)と、潜在的に強い上昇の可能性を持つ"金価格"を単一の運用手法に統合した投資商品。

2011年8月末時点の実績(サブファンドB)は、前月末比リターン : +12.17%、前年末比リターン : +23.82%、設定来リターン : +61.29%と、2009年8月3日の運用開始から2年経過し、好調な実績をあげている。

同社社長のヨハン・ピーター・サンター氏に、金価格上昇の要因や今後の金価格の動向、世界経済・日本経済の行方について聞いた。

――なぜこれほど金価格が上昇しているのでしょうか?

さまざまな要因があります。現在、欧米の財政危機問題等を背景にマーケットの緊張感が高まっています。2008年のリーマン・ショック以降、米国、欧州、アジアなど、多くの市場で、株価指数や個別株価が下落しています。これに対し、「金=ゴールド」は比較的安全な資産で、資金の逃避先と考えられています。近年より、金価格は上昇していましたが、買う人はあまりいませんでした。しかし、マーケットの緊張感が高まり、「通貨」に対する信用が低下する中、現物資産であるゴールドにお金がシフトしている状況が続いています。そういう背景があって、ゴールドの価格が上昇していると思われます。

――それにしても、金価格の上昇スピードは急です。

通貨や株価の変動率(ボラティリティ)が高くなると乱高下するのと同様、ゴールドも同じような振幅で価格が上昇するのも不自然ではありません。多額の資金が他の市場からゴールドへシフトしているため、金市場だけではなく、さまざまな市場での値動きがスピードを増しているのです。

――金に流入している資金はどこから来ているのでしょうか?

あらゆる資金が移動していると思われます。かつては安全資産だと考えられていた米国債ですが、米国が巨額な借金を抱えている為、今はもう安心できないというところから、ゴールドに資金が移動しているのではないでしょうか。特に中国など、多くの米国債を保有している国がそのような動きをしていても不思議ではありません。

新興国の中央銀行や個人投資家も積極的に購入

――新興国が積極的に金を購入しているという報道もあります。

20年間にわたり、世界の中央銀行はゴールドを売る傾向が強く、2000年初頭のゴールドの価格は、最安値の1オンス当たり250ドル近くでした。ただ近年では、韓国などの新興国は以前は微々たる量しか保有していなかったのに、最近はゴールドを買うようになっています。世界中がこのような傾向にあると思います。

特に中国などは、外国準備高の多くを米国債で持っている中で、保有するゴールドの量は、米国債に比べてかなり少ない額です。したがって、今後、中国がゴールドの購入を継続して行うモチベーションはかなりあると見ていいでしょう。

――各国の中央銀行の動きが、金の高騰を引き起こしている主因なのでしょうか?

中央銀行の動きももちろんですが、それ以外の要因も当然あります。中央銀行の動きは、投資家心理にもかなり影響してきます。また、投資家は以前に比べて金へ投資しやすくなりました。その証拠として、ゴールドの「ETF」の残高もかなり増加しています。

また、中国やインドの投資家も経済成長でお金を持つようになってきているので、中央銀行だけでなく個人としても、ゴールドを買っています。

――先進国の個人投資家も金を買っていますか?

米国、ドイツ、日本など先進国を含めて世界中がゴールドを買う傾向にあります。したがって、ゴールドが大きく下がる要因は今のところないというのが現状です。

中長期的には「1オンス=3,000ドル」も

――金相場の今後の動向はどうなるでしょうか?

ゴールドの相場は、今後も継続して上昇していくと考えています。我々はゴールドの価格が300ドル~400ドルだった頃から、上昇していくと言い始めていました。最近、1,900ドルを超えましたが、中長期的に見て2,500ドル、場合によっては3,000ドルの可能性もあると見ています。もちろん、一時的な価格の反転はあると思います。

「"金本位制"に戻るのは難しい」

――冒頭で、金価格の上昇には、「通貨」の信用下落が背景になっているとおっしゃいました。

根底にあるのは、通貨自体の価値がドルもユーロも下がっていることが挙げられます。借金がある国や地域の通貨が下がっているのです。

ただ、ゴールドは1グラムは1グラムです。それだけの量を買うのにどれだけの通貨が必要かが問題になってくるので、通貨自体の価値が下がっている現在、ゴールドを買うためにより多くの通貨が必要になっています。

通貨というのは、国の信用を基に成り立っています。借金が増え続けている国の通貨が強まることはないでしょう。

――通貨の信用を取り戻すために、「金本位制」に戻るという選択肢はありますか?

「金本位制=ゴールドスタンダード」に戻るというのは、そう簡単ではありません。ゴールドスタンダードをやめてから結果的に先進国でペーパーマネー(紙幣)がどんどん増えて借金も生まれるという流れになっています。当時は1オンス当たり35ドルぐらいでした。しかし、もし今の状況でゴールドスタンダードに戻るとなると、金との交換のためには、とてつもない額のドルが必要となってしまいます。1オンス当たり6,000から7,000ドル、またはそれ以上が必要になってしまうのではないかとも言われています。したがって、現状ではドルをゴールドで裏付けることは難しいといわざるをえません。

――ただ、ドルやユーロなどの通貨の価値が下がっている中、政府が莫大な借金を抱えている日本の「円」が高くなっているのは、どういった理由からでしょうか?

1つの理由は、歴史的に見て、経済危機時には、米国債やスイスフランや日本円が安全資産と考えられていることが挙げられます。合理的な理由に基づくのではなく、条件反射のような形で、「こういう状況の時は円を買う」といった人間の歴史的な行動パターンのようなものが要因になっていると考えられます。

また、日本の借金についてですが、日本の国債の買い手はほとんどが国内の金融機関などで、自分の国の中で借金をしているため、対外的な理由で日本国債が売られたりする要因が少ないことも理由です。

歴史的に安全資産と言われている3つの投資先に対して信頼が低下し、金がより安全な資産と考えられるようになったため、ゴールドが上昇しているのです。

――今後の日本経済、世界経済について、どんな見通しを持っていますか?

世界中で問題が発生しています。米国は予算が縮小し借金が増え、失業などの問題もあります。欧州は財政問題が危機的です。日本は借金が増大し、東日本大震災で大きな被害を被り、政府には復興財源が必要です。世界中の経済にひずみが出てしまっています。その一方、ペーパーマネーだけが膨張していますが、問題解決にはなっていません。

一つ言えるのは、政府も個人も借金がかさみ続けているので、今後も厳しい経済状況となるでしょう。そういった中、ゴールドの価格が上昇し続ける可能性はかなり高いといえます。


今回は、なぜ金価格が上昇を続けているのか、また今後はどうなるのかなどについてインタビューした内容を紹介した。次回は、運用開始から丸2年経過し好調な実績をあげている、スーパーファンド証券の金建て日本公募ファンド「スーパーファンド・グリーン・ゴールド・ジャパン」について、サンター社長にお聞きした内容を紹介したい。