世界中でつくられているパンの種類は5,000とも6,000ともいわれている。そのうち数百種類は日本でも手に入り、海外で修行を積んだパン職人も国内には大勢いる。ここでは、パンの歴史やちょっと意外な情報などを紹介。これを読めば、普段食べているパンを見る目が変わってくるかもしれない。

フランスのバゲット、イタリアのフォカッチャ、イギリスのイングリッシュマフィン、ロシアのピロシキ、ブラジルのポンデケージョ。各国、「それ、知ってる! 」というような有名なパンがあるわけだが、今回は日本発祥のパンについて紹介していこう。

「あんパン」は明治2年生まれ

まずは「あんパン」。まだパン食が日本で一般的でなかった明治時代、現木村屋總本店の創業者が日本人にあったパンをつくりたいという思いで、5年かけて明治2年に考案したのが「酒種あんパン」である。これに桜の花の塩漬けを添えて明治天皇に献上したのが「桜あんパン」となり、現在も木村屋の人気商品のひとつとなっている。

桜の花の塩漬けをトッピングした「桜あんパン」

明治33年生まれの「ジャムパン」

「ジャムパン」も木村屋が考案したとされている。明治33年、木村屋總本店3代目の儀四郎氏によって考えられ、当時はあんずジャムが主流だったというが、のちにイチゴやリンゴなど様々なジャムが用いられるようになった。

ジャムパンは明治33年に発案されたという

シュークリームがヒントの「クリームパン」

「クリームパン」もほぼ同時期の明治30年半ばに、新宿中村屋の創業者相馬氏が考案した。そのきっかけは同氏が初めて食べたシュークリーム。このおいしさに感動し、クリームパンを考えたという。

シュークリームのおいしさに感動した新宿中村屋の創業者が考案したクリームパン

「カレーパン」のルーツは「洋食パン」?

さらには「カレーパン」も日本生まれ。昭和2年、東京のパン店・名花堂(現カトレア)がカレーを入れた「洋食パン」を発案したのがはじまりといわれている。

カレーパンも東京のパン店が昭和2年に考案したとされる

西洋のパンが本格的につくられるようになるのは、横浜開港がきっかけ。西洋人向けにイギリスパンやフランスパンが焼かれ、さらには日本人の嗜好にあったパンが研究され、以降、今回紹介したパンをはじめとする多くのパンが誕生したわけだ。フランスやドイツなどの欧米パンの導入も進み、日本は世界中のパンが手に入る大変恵まれた国となっている。

「パンの図鑑」

・著者: 社団法人日本パン技術研究所 所長 井上好文
・定価: 1,659円
・A5判176ページ
・発売日: 2011年04月27日

世界中の食卓で愛されているパンのうち、比較的日本でも手に入れやすい113種をフルカラーの写真と詳しい解説文で紹介。材料、発酵・成形・焼成の方法、さらにはおいしい食べ方につくり方まで、奥深いパンの世界を案内する。

また、パンの材料、道具の紹介や、基本のパン作りレシピをはじめ、パン屋さんでどのようにパンがつくられているかを写真で解説。さらに、パンを使ったおしゃれでおいしいアレンジレシピ、パンと飲み物のおいしい関係など、パンをもっと楽しみ味わい尽くすためのアイデアも提案している。