深く眠れて快適な「寝ござ」を敷布団の上に

わりと年配の方でも、あまり利用していないというのが「寝ござ」。村尾氏によると、エアコンがなくても、寝ござがあれば快適に寝ることができる。布団には熱がこもってしまうが、寝ござには、それを感じさせない効果がある。また、イグサの匂いには精神を安定させる効果もあり、深く眠れる作用がある。

深く眠れて快適な「寝ござ」

また、窓を2箇所以上開けて、うまく風をとりこむのも効果的。風が出る窓のそばで扇風機を外に向けて風を吹かせると、他の窓から外の風が入ってくるのを呼び込む効果がある。

「打ち水」と「緑のカーテン」で涼しく

「打ち水」は、小池百合子環境相(当時)のパフォーマンスでも有名になったが、涼をとるには絶好の対策。太陽が高いときはすぐに水蒸気になってしまうため、午前中や夕暮れ時に行うのがコツ。マンションの場合はベランダや外壁に、戸建ての場合は庭に、水を撒くといい。気化熱の影響で、涼しくなるのだ。

また、「緑のカーテン」は、つるのある植物を窓辺に這わせ、日光をさえぎるもの。植物がカーテン代わりになって陰ができるだけでなく、植物が出す水蒸気で熱も奪われるので、とても涼しくなる。最近はゴーヤが人気で、すでに5月にはスーパーの店頭でゴーヤの苗が売られていた。ゴーヤは病気にもなりにくく、収穫して食べることもできるので、一石二鳥だ。もし「緑のカーテン」を育てる時間的余裕がない場合は、すだれをかけるといいだろう。

村尾家の「緑のカーテン」

「梅干し水」と「麺類」「ビール」「スイカの漬物」が熱中症予防に

ここからは、飲食物での"昭和の知恵"を紹介したい。まず挙げられるのが、「梅干し水」。作り方は、梅干しの種を取ってペースト状にし、ガラス瓶やペットボトルに入れた水に溶かす。この梅干し水は、スポーツドリンクと同じような成分で、クエン酸やミネラル、塩分、水分が手軽に補給できる。夏は塩分、水分、ミネラル分が出てしまって熱中症になる危険があるため、熱中症予防に、梅干し水は大変効果的だ。村尾家では、朝や昼に梅干し水を水代わりに飲んでいるといい、「グイグイ飲める」。

「麺類」も、夏場にはよく食べられるが、もともと小麦粉自体が、体の熱を取る働きをする。食欲のない時に「つるつるっ」と食べるだけで、体の中から涼しくなる。

「ビール」も、夏場に飲むと非常にいい。ビールは「液体のパン」と呼ばれ、ビタミンやミネラルがバランスよく含まれている。夏場の発汗で失われた栄養分を補給するのに持って来いだ。ビールを飲むときに枝豆を食べるのも効果的で、枝豆にはビタミンBやCが含まれているので、非常にいい取り合わせとなっている。ビールが飲めないという人も、最近品揃えも増えている「ノンアルコールビール」も、ビールと同じ効果が期待できるという。

九州などではよく食べられる、赤い身を食べた後のスイカの青い部分を漬物にしたものもオススメだ。これは、村尾氏の祖母も実際に作っていたそうで、カリウムが含まれているため、体を冷やす効果があるほか、利尿作用もあるという。

女性に人気の「ステテコ」、「浴衣」で気持ちよく

では、夏場の服装はどう工夫すればいいのか? 最近女性に人気なのが「ステテコ」だ。ステテコはズボンの下にはくことからかえって暑いと思われるかもしれないが、汗を吸うため、逆に涼しくなるアイテム。昔の人は、夏はステテコ、冬はモモヒキをはき、暑さ、寒さ対策に利用していた。

最近の女性はこれに目をつけて、ファッショナブルなステテコを部屋着ではくようになったばかりでなく、ステテコの生地を使ったファッションパンツ「ステテコパンツ」をはく人も増えている。プリント柄が入っているため、外でもはけるようになっているのが特徴だ。

夏に伝統のアイテム「浴衣」も涼しくなるにはいい衣類だ。腋の下の「身八つ口」から風が入ってくるため、涼しくすごすことができ、最近では、ガーゼでできた寝巻き用の浴衣もある。

また女性なら、ゆったりしたワンピースもオススメ。一枚のぺラッとしたワンピースは、体を締め付けず、衣服の中で空気の対流が起こって涼しくなる。ハワイのムームーなども、こうした考えから作られた、ゆったりとしたドレスになっている。

「電気依存」の生活を変えるきっかけに

最後に、村尾氏に、「節電」で昔の知恵が見直されている状況について、感想を聞いた。村尾氏は今回の状況について、「節電の問題というより、文明の利器に頼りすぎていたのが原因」と話す。本来自分が工夫してやらなければいけないことを、文明の利器にまかせっきりにしてきた、現代人の"怠け心"がクローズアップされているというのだ。

NPO法人「おばあちゃんの知恵袋の会」理事長の村尾宏氏

確かに、エアコンが使えなくて困るとか、エスカレーターが使えず階段を上り下りするのに疲れるとかは、普段文明の利器に頼っているからこそ感じることだ。

これに対し、"おばあちゃんの知恵"というのは、電気をあまり使わないところから生まれたもので、いざ電気がなくなっても困らない工夫が満載だ。頭を使って工夫して、「もっとこうすると簡単だよ」「こうすると節約できるよ」「こうすれば手軽にできる」といった知恵の凝縮だ。

私達は本気で、「原発依存」ならぬ、「電気依存」の生活を、変えなければいけない局面にきているのかもしれない。