東日本大震災から100日余りが経過した。強度のストレスが被災者らに重く押しかかる中、鳥居内科クリニック院長の鳥居明先生は震災後のストレスで、IBS(過敏性腸症候群)の症状が悪化していると警鐘を鳴らす。

突然便意に襲われ、下痢や腹痛に繰り返し悩まされる症状が特長のIBS(過敏性腸症候群)。その原因は、ストレスや生活環境、遺伝的要因などとされる。下痢タイプ、便秘タイプ、両者の混合タイプなど便通の異常があり腹痛をともない、それが慢性的に繰り返されるが、検査をしても大腸炎などの疾患は見られない。

震災後は「予期不安」と言い、再び大きな地震が起きるのではないかという不安感が精神的ストレスとなる。また、避難生活、節電生活など環境の変化が、精神的にも肉体的にもストレスとなって、IBS症状の悪化をもたらす。ストレスに敏感な人は、できるだけストレスを貯めないといった工夫が大切だ。

鳥居明先生は、震災後におけるIBSの症状について「特に便秘型の症状悪化が目立ちます。震災後、便秘症状が悪くなり、腹部膨満感、腹痛を伴うことが多いようです。血圧が高くなる患者さんも多くみられました」と指摘。避難、余震、寒冷などのストレスが生じ、交感神経の働きが副交感神経の働きより優位となり、腸の動きが抑制されたため、便秘症状が悪化したという。さらに、「状況が安定すると下痢型IBSの患者さんも、不安感、生活環境の変化からストレスが増強し、症状が悪くなることが予想されます」と懸念する。

対策として、鳥居先生は「困ったことやつらいことがあるときには、できるだけ一人で考え込まず、周りの人に相談してみましょう。人に話をするだけでも、ストレスが緩和されると言われています。また、音楽を聴いたりして気分転換をはかり、日常の中から生活を楽しむことも必要です」と述べた。また、夜眠れないときは、昼間太陽に当たり、歩くことを勧めた。「夜遅い時間にコーヒーやお茶を飲むとカフェインの作用で眠れなくなるので避けましょう。また、アルコールに頼るのは不眠の解決にはならず、お腹の調子も崩してしまうので控えましょう」(鳥居先生)。