インテルは27日、2011年の1月から4月までを振り返り、主な活動や成果を報告する記者向け定例会見「IAプレス・ミーティング」を開催した。同社代表取締役社長の吉田和正氏が、Sandy Bridge世代の製品の進捗や、先日閉幕したIDF北京にて発表があった新型Atomプロセッサを紹介したほか、東日本大震災に関連した同社の取り組みについて語った。

インテル代表取締役社長の吉田和正氏が登壇

2011年の1月から4月までの主要な話題をまとめたスライド

まずはSandy Bridgeこと第2世代Intel Coreについて、市場における普及状況をもとに、旧製品からの移行が順調に進んでいることが発表された。同氏の示した調査データによると、日本のノートブックPCの販売台数に占めるSandy Bridgeのシェアは、4月の時点で早くも24%にまで上昇している。その要因は、性能の向上や、さらに、当初よりメインストリーム向けの製品が投入されたことが功を奏したのだという。

Sandy Bridgeのシェア拡大は順調に推移していると報告された

ただ、Sandy Bridgeではご存知のとおり、チップセットのリコールによって製品供給に混乱が生じた時期が存在した。この点について吉田氏は、「既に問題は改善しており、改善版の製品を素早く投入することができたため、被害は最小限にとどめることができた」と説明した。しかしながら、この問題がもたらした影響は小さくないのも事実だ。吉田氏は、「あってはならないことであり、今後はこういった問題が二度と起こらないようにする」と述べた。

性能向上だけでなく、"新しいことが出来る"新機能を提案していくことも大切だとして、その具体的な製品例として、「WiDi」のデモが行われた。現在最新のアップデートによって、HDCP 2.0サポートの著作権保護されたBD映像のワイヤレス出力にも対応

続いては、先日発表されたばかりの新型Atomプロセッサについての解説があった。製品名は「Intel Atom Z670」で、これは、「Oak Trail」の開発コードネームで知られていたタブレット向けプラットフォームを構成する新型プロセッサだ。詳細は会見に同席したインテル技術本部 IA技術部長の秋庭正之氏によって解説が行われた。

Atom Z670の概要。2チップ構成の小型プラットフォームで、プラットフォーム単位での省電力化や、Androidへの対応などがトピック

Atom Z670の主な仕様

製造プロセスは従来世代と同じ45nmプロセスがベースとなるが、チップセットも含めたプラットフォーム・レベルでの省電力化がなされ、チップサイズも前世代比で60%小型化されたといった特徴を備えている。具体的には省電力化では、前世代のAtom N455と比較した場合、最大70%の省電力化を実現しながら、同等の処理性能を発揮できるという検証データが提示された。

Atom N455と比較した検証データ。性能は維持しつつトータル電力を大幅削減できている

また吉田氏は、Atomの新製品投入のスピードは、ムーアの法則を上回るペースで進めることになると説明した。「インテルはこの分野では後発であり、追いつくためには全力でやる必要がある」(同氏)との理由からだ。

その今後のAtomプロセッサの計画として、Oak Trailに続いて登場予定のネットブック向け「Ceder Trail」プラットフォームでは、32nmへのプロセス微細化にあわせて、プラットフォーム・レベルでの省電力化からさらに進んだ、トランジスタ・レベルでの省電力化が目標となっていることが紹介された。そのCeder Trailの次の世代にも言及があり、そこでは、プロセスを22nmへと一気に微細化し、アクティブ時消費電力は1/2で、集積度は2倍という製品が登場する計画であることが紹介された。

今後のAtomプロセッサのロードマップ。微細化を前倒し、22nmまで一気に進める

先端プロセスの話題では、製造技術への投資継続が再度確認された。同社では既に次世代の22nmプロセスに対応したFabを各地で立ち上げており、以前から予告されていた2011年Q4という22nm世代プロセッサの投入スケジュールに変更がないことが、吉田氏によって改めて説明された。また、微細化の次の段階である14nmプロセスについても、米アリゾナに新設するFab42が、今年夏に建設着工し、2013年に完成予定であることが紹介された。

先端製造技術への投資は引き続き旺盛だ。14nm対応ファブの建設も間もなくはじまる

吉田氏は最後に、東日本大震災に関連した同社の取り組みについて説明した。まず同氏は、今回の震災の際に、インテル社内においても社員の安全確保や業務環境の復旧など、自らが様々な災害対応を主導したことから、IT/ICTが人々の生活を支える基盤インフラとして重要なものであると再認識をしたのだという。

そして同氏は、IT/ICTの活用によって新しいワークライフが創り出せると思ったのだといい、震災の復興の取り組みに際しては、元通りに戻す、ということから一歩進んで、元通り以上の進んだワークライフ環境を提案できるのではないかと考えているのだという。例えば同社の筑波オフィスでは、震災によるダメージで社員の出勤が困難な状況となっていたが、IT/ICTの活用で自宅からリモートで業務をこなせる環境を整備したことで、これを乗り越えたのだとされた。

現状の取り組みとして同社は、JEITAらが設立した「東日本大震災 ICT応援隊」を通した支援活動を実施している。吉田氏は、「技術は、それを使う人との"両思い"でなくては意味がなく、使われてこそ意味がある。今後のインテルは、技術革新を通して安心・便利・快適な暮らしを日本に提案し続けていきたい」と話して会見を締めくくった。

インテルでは、JEITAらが設立した「東日本大震災 ICT応援隊」を通した支援活動を実施していくという

当日は、主に社内向けで利用するために作成されたという、日本のインテルとしての意思表示だとされる「with Japan」ロゴも披露された