今年もいよいよ桜の季節がやって来た。東京では、3月28日にソメイヨシノが開花したと気象庁が発表。昨年より6日遅い。

だが、今年の桜は、誰にとっても、例年とは違って見えることだろう。これほど何かを感じさせ、考えさせる桜の季節は、後にも先にもないかもしれない。

広がる自粛ムード

各地で予定されていた桜祭りなどのイベントは、次々と中止が決まった。計画停電などのため、ライトアップの取りやめも相次いでいる。3月29日、石原慎太郎東京都知事は、「花を愛する日本人、桜が好きな日本人が、花見をしたいというのは分かるけれども、私は少なくとも夜間、明かりをつけての花見などというのは自粛すべきだと思っております」との談話を発表している。

上野公園や井の頭公園などでは、花見や宴会の規制も実施されている。桜の開花状況をはじめ、主な公園の対応については、東京都公園協会内の「さくら花だより」などで情報を得ることができる。

東北の酒造の酒を持ち寄った昼の花見も

自粛ムードは広がっているものの、Twitter上などでは、東北の酒造の酒を持ち寄って、昼間の花見を呼びかけるものも見られる。今回の被災地には、名酒の酒蔵が数多い。各地の酒を味わいながら、被災地に思いを馳せ、応援しようという主旨のようだ。

もちろん、酒蔵には大きな被害を受けたところも少なくないし、流通面などさまざまな問題から入手しにくい酒もあるだろう。そのあたりにも関心を持ちたい。主な酒造のホームページをまとめた「ザ・酒蔵」というサイトからは、いくつかの酒造の様子はわかる。地震以後、更新されていない酒蔵については状況が心配で、人々の無事を祈るばかりだ。その一方、無事を伝えるコメントなどがあると、ほっと胸をなでおろす。

蔵元に対する義援金も

被災地の蔵元の酒を味わうのは、応援のひとつの方法だが、日本酒造組合中央会「酒サムライ」(若手蔵元で組織された日本酒造青年協議会のサイト)は、蔵元に対する義援金受付も行っている。

被害を受けた酒蔵が、元の姿を取り戻し、昔と変わらない酒をつくっていくには、長い時間が必要だという。日本酒は、日本の大切な文化のひとつだ。米と水に恵まれた東北は、日本酒文化の宝庫。今回の震災による影響ははかり知れないが、これからも蔵元の様子を見守っていきたいものである。

桜を眺めて、心も開く

騒ぎ立てる夜桜見物は考えものだが、自粛をするだけというのも、日本全体が冷え込むだけだろう。何よりも、自粛をする、しないで、ギスギスとした雰囲気がつくられていくことだけは避けたい。

満開の桜を眺めれば、今までこわばっていた心も少しはほぐれるのではないだろうか。もしかしたら、前へ向かう力も与えてくれるかもしれない。

お酒好きは、東北の名酒を試してみるのもいいのではないだろうか? 酒屋で東北の酒について教えてもらうだけでも、被災地をさらによく知る機会となるに違いない。

まだまだ、震災で心配なことや腹が立つことなどがいろいろあり、ともすれば内向きになってしまいがちかもしれないが、ここはゆっくりと桜を眺め、心を開こう。そして、少しでも早く、被災地にこの桜前線が北上することを願いたい。