ひまわり証券は、売買システム『戦国武将信長Day』『戦国武将秀吉Day』『戦国武将家康Over Night』の販売を開始した。対象は日経225mini、価格はいずれも9万8000円で、有効期限は購入から2年間。特に、「家康」は、ひまわり証券システムトレードの先物年次ランキング(2010年)で第1位、損益275.5万円という好成績をあげ大きな話題となっている。この"戦国武将"シリーズを開発したシックス・インベストメント代表取締役の岩﨑淳氏に、話を伺った。

シックス・インベストメント代表取締役の岩﨑淳氏

"文系型"の分析に基づくトレードシステム

トレードシステムを開発するには、さまざまなアプローチがある。一つは、過去の相場データを統計的に分析をして、勝てる法則を発見するというもの。いわゆるテクニカル分析で、「移動平均線のゴールデンクロスが起こったら買い、デッドクロスが起こったら売り」という手法を、より精密にしていったものだ。数学や工学的なアプローチで、"理系型"のトレードシステムといってもいいだろう。

もう一つが、いわゆる相場観に長けたトレーダーが、自分のトレード手法をアルゴリズムに置き換えていったものだ。このようなものは、市場の歪みに着目したものが多い。例えば、米国株式市場が下落すると、その後に開く日本市場は下落しすぎて始まるので、買いを入れておき、合理的な値に戻していくところを取っていくなどという手法がある。いわば、社会科学的な分析に基づく"文系型"のトレードシステムだといってもいいかもしれない。今回、紹介する「戦国武将シリーズ」も、後者の"文系型"トレードシステムといえるだろう。

「戦国武将シリーズ」を開発したシックス・インベストメントの本業は、投資助言業だ。「私は、もともと1990年に証券会社に入社したのですが、当時の日経平均は3万5,000円ほどでした。それが、今や7,000円台にまで下がってしまった時期もある。以前は、株というのは長期に保有して利益を出すものという感覚がありましたが、私が証券会社に入社して以来、そういう神話は完全になくなり、短期で利益を狙うか、あるいは年に数回あるチャンスを生かすかのいずれかになったのです」(岩﨑氏)。

「投資助言業はどうあるべきか」という問いから出発

そうした状況の中で、投資助言業はどうあるべきかを考えた結果が、トレードシステムの開発だった。

「これまでの経験を踏まえると、開発のコンセプトは、高すぎるリスクを背負うことなく、20%、30%の利益を着実に得られるものということでした。ですから、当初はオーバーナイトしないデイトレードのシステムを開発しようと思いました」(岩﨑氏)。そこで開発されたのが、デイトレードシステム「信長Day」「秀吉Day」である。「お客様に心理的な負担を背負っていただきたくない。特に週末にポジションをもっているのは、気持ちが落ち着かないものです」(同)。

一方、「家康Over Night」も当初はデイトレードシステムとして開発されたが、後にオーバーナイトの方が利益があがることが発見され、オーバーナイトシステムに変更された。

「これまでの経験を踏まえると、開発のコンセプトは、高すぎるリスクを背負うことなく、20%、30%の利益を着実に得られるものということでした」と語った岩﨑氏

つまり、「戦国武将シリーズ」は、その誕生の経緯が極めてユニークであり、「儲かるシステムを開発しよう」という意識よりも、投資助言業として、「顧客の心理的な負担を減らしたい」という意識から開発が進められたものであることが、大きな特徴となっている。

シックス・インベストメントでは、本業の投資助言業も続けていて、『トレードプラス』という投資情報配信サービスを行っている。こちらでは、トレードシステムが出したシグナルの配信も行われているし、「戦国武将シリーズ」を使う上でのポイント情報なども配信される。たとえば、「信長Day」「秀吉Day」は、買いシグナル、売りシグナルをオンオフすることができるが、トレードプラスでは「今はオフにした方がいい」などの情報も配信される。「戦国武将シリーズ」は、トレードプラスと組み合わせて使うことで、より高い収益を狙いに行けるシステムになっているのだ。

『トレードプラス』トップページ画面

さらに、まったく別に、個別株式銘柄の「ペアトレード」のシステムも開発していく方針だ。「ペアトレード」のシステムとは、例えば、同じ業種のA社とB社という二つの銘柄の値動きをウォッチする。同じ業種であれば、ほぼ似たような値動きをするはずだ。ところが、時として、その動きが乖離することがある。さまざまな要因があるのだろうが、将来、再び同じような値動きに戻るという前提に立てば、値下がった方を買って、値上がった方を売れば、ダブルで利益を狙いにいけるのではないかというアイディアだ。

「このような狙いが可能になるのは、日本の経済が成熟したからだと思います。同じアイディアをたとえば、中国のような発展中の市場にもっていったら、うまく機能するかどうかはわかりません」(岩﨑氏)。

今の市場状況では、オーバーナイトのリスクも低下

日本の経済は成熟している。それはある意味いいことなのかもしれないが、システムトレードにとっては、「ボラティリティが小さい=利益を狙いづらい」というデメリットもある。その中で、利益をとっていくには、当然ながら、より多くのリスクを取る必要がある。「その一つの答えが、オーバーナイトだと思います。オーバーナイトは確かにリスクが高くなる手法ですが、ボラティリティが小さい今の市場状況では、オーバーナイトすることのリスクは以前より小さくなっています」(岩﨑氏)。

「戦国武将」シリーズ誕生の経緯は、「顧客の心理的な負担を減らしたい」という思いからデイトレードシステムの開発が主眼だったことは前述したが、ボラティリティが小さい今の市場状況に対応し、よりリスクを取ってオーバーナイトにもチャレンジをしていきたいという人は、オーバーナイトシステムである「家康Over Night」を選ぶこともできるのである。

また、今後、シックス・インベストメントでは、現在はデイトレードシステムである「信長Day」「秀吉Day」のオーバーナイト版も発売したいと考えており、すでにほとんど完成していて、テスト運用中だという。さらに、それぞれの日経225ラージへの対応もしていく予定であるという。

次回は、「戦国武将シリーズ」の「信長Day」「秀吉Day」「家康Over Night」のそれぞれの詳細なロジックについてご紹介する。