米国ラスベガスで開幕した世界最大の家電見本市International CES 2011のソニーブースでは、会場で発表されたテレビやデジタルカメラ、ビデオカメラなど幅広い製品が展示されていた。3D対応製品が拡大しており、出力としてのテレビだけでなく、3Dを作成する方向にも注力されている。
拡大する3D対応テレビ
テレビでは、液晶テレビのBRAVIAが27機種発表された。最上位モデルの「XBR-HX929」シリーズでは、直下型LEDパネル、モノリシックデザインを採用。IEEE802.11n、新画像処理エンジンのX-Reality PRO、MotionFlow XR960といった最新の技術を投入。65インチ、55インチ、46インチが用意され、65インチのみ8月、他の2モデルは3月に発売する。
3D対応モデルは、HX929、HX820、NX720、HX729、EX720の5シリーズ16機種。上位モデルだけでなく中位モデルまで3D対応を図っており、3Dテレビのさらなる普及を狙っている。
新エンジンのX-Reality PROは、上位モデルとなるHX929、HX820、HX729という3つのシリーズに搭載。X-RealityはNX720、EX720、EX620、EX520の4シリーズに搭載。上位、中位、下位の各モデルで区別されている。無線LANもHX929、HX820、HX729、NX720で802.11nを搭載。EX720、EX620、EX520は別売のUSB無線LANアダプタを使って無線LAN接続に対応する。
無線接続対応モデルでは、インターネット上の映像配信サービスにも対応しており、ソニーのQriocity、Netflix、Pandrora、HuluPlus、YouTubeなどの映像が閲覧できる。X-Realityエンジンでは、YouTubeのような低解像度の映像でも、高画質化機能を利用できる。
そのほか、Skypeによる720pのビデオチャットにも対応しており、別売のカメラとマイクを接続すれば、テレビ視聴中も同時に通話を行うことができる。また、Gracenoteを利用し、放送中のテレビ番組やBlu-ray Discのビデオなどで流れていた曲を解析し、曲名やアーティスト名などを表示する機能も搭載した。
将来の3D
将来的な3Dの方向性を示したデモも出展。すでに東芝が今回のCESで商品化を発表した裸眼立体視可能な3Dテレビのプロトタイプを展示していた。24.5インチの有機ELパネルを採用したモデルに加え、56インチ、46インチの液晶パネル採用モデルを用意していた。
現時点ではあくまでプロトタイプであり、商品化に関しては未定とのこと。スペックも46インチに2Kパネル、56インチに4K2Kパネルを搭載して3Dでも高画質化を図っている程度の情報しかなく、今後も検討を続けていくそうだ。
裸眼立体視では、10.1インチの液晶を搭載したポータブルBDプレイヤーも出展。これを使うことで、3DのBDコンテンツを出先でも気軽に閲覧できるようになる。液晶の解像度は1,366×768。ただしこちらも参考出品という位置づけで、商品化のめどや詳細なスペックは明らかにされなかった。
メガネのように装着して映像を閲覧するヘッドマウントディスプレイでも3D対応モデルが出展されており、近未来的なスタイルの本体を装着すると、目の前に3D映像が表示されるようになっていた。有機ELパネルを搭載し、1,280×720の解像度だという。
今回は裸眼立体視対応の参考出品が行われていたが、将来的に裸眼立体視が主流になるかどうかはソニー自身も態度を明確にしておらず、当面はより高画質なアクティブシャッター型のメガネを使った3Dが主流になる見込みだ。
個人で簡単に3D撮影
家庭での3Dコンテンツは、現在のところBDでのビデオコンテンツが主流だが、米国ではテレビ放送や動画配信で3Dの普及が進んでいる。ただ、まだまだ3Dはコンテンツプロバイダーが配信するのがほとんどだが、ソニーでは今回、3Dコンテンツを個人でも簡単に作成できるような製品を複数投入している。
ハンディカムでは、2つのGレンズを搭載した「HDR-TD10」を4月にも発売。それぞれのレンズで得たわずかに視差のついた映像を、2つのCMOSセンサー「Exmor R」で受け取り、2つの画像処理エンジン「BIONZ」で処理して3D映像として記録する。3.5インチのエクストラファイン液晶は裸眼での立体視に対応しており、そのまま3D映像を確認できる。内蔵メモリは64GBで、米国での価格は1,500ドル。
Bloggieは、主に若者をターゲットにした低価格のビデオカメラで、今回の3D対応した「MHS-FS3」では、2つのレンズ・2つのExmorセンサーを備えて動画を撮影、3Dとして3DTVなどで表示できる。ステレオマイク、LEDライト、2.4インチ液晶も搭載する。米国では4月に250ドルで発売する。
デジカメでは、すでにミラーレスカメラのNEXシリーズで3Dスイングパノラマ機能を搭載しているが、新しいサイバーショットシリーズは3つの3D撮影機能を搭載。3Dスイングパノラマに加え、1回のシャッターで3Dが撮影できる3D写真、スイングパノラマのように撮影して動きのある3D映像が取れるSweep Multi Angleの3種類を装備する。
Sweep Multi Angleでは、ピント位置を変えて前後の奥行きを記録することで写真を3Dに見せる手法で、撮影する間に被写体が動くと、コマ送りアニメのように動きのある3D映像になる。
サイバーショットでは、DSC-TX100V、DSC-TX10、DSC-HX7V、DSC-WX10、DSC-WX9の5機種で3D撮影機能を搭載。TX100Vはコンパクトデジカメで世界初という1,920×1,080・60pのなめらかなフルHD動画の撮影に対応。全機種で動画撮影中の静止画撮影機能に対応した。
いずれも有効1,620万画素のExmor Rセンサーを搭載。TX100Vは3.5インチの有機ELディスプレイを搭載、WX10は新しいAFシステムを採用したことで、従来以上の高速AFを実現したという。実際に試してみると、一眼レフ並みと言ってもいいぐらいの高速AFだった。
コンシューマ向けカメラの3D対応自体は、パナソニックが外付けレンズを使っての対応を行っているが、ソニーではそのまま2つのレンズ・撮像素子・画像処理を組み合わせたり、独自の撮影機能で3D対応させてきた。出力のテレビやPC、入力のカメラ、それに加えてグループ内での3Dコンテンツの強化によってソニーでは家庭における3D化をさらに推進したい考えだ。