こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

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さて、前回はボーカロイドの歴史をニコニコ動画以前から振り返ってお伝えしてきましたが、今回はその続き。2008年以降のボーカロイドシーンをご紹介していきたいと思います。

日本では初音ミクが大ブレイクし、鏡音リン・レンが登場するなど、ブーム最盛期へ突入しようとしていた2008年。LEONやLOLAの発売元であるイギリスのZero-G社から、新たなボーカロイドが登場しました。


英語圏のソプラノ歌手の歌声をベースに開発された「PRIMA」は、しかしニコニコ動画でのボカロブームに乗ることはありませんでした。かなり癖のある発声や、調律の難しさ、そしてミクやリン・レンのような明確なキャラクターが設定されていなかったことがその理由でしょう。とはいえ英語の歌に関しては、調律次第では群を抜いた力を発揮する実力派ボーカロイドですので、今後の盛り上がりに期待したいところです。

一方、ニコニコ動画で次に話題を呼んだのは、2008年7月末に発売されたボーカロイド「がくっぽいど」でした。


株式会社インターネットから発売となったがくっぽいどは、その名の通り歌手のGACKTの声を元にしたボーカロイド。当時は"GACKTが歌声を提供した"という事実にずいぶん驚いたものでした。なおキャラクター名は「神威がくぽ」で、公式のキャラクターイラストが用意されている他は特に何か設定があるわけではなく(手に持つ刀のみ詳細設定あり)、それゆえにミクやリン・レン同様、ユーザーが次々とがくっぽいどの設定を考案していくという流れが生まれました。

これまでニコ動で男性ボーカロイドといえばKAITOくらいしかメジャーな存在がいなかったこともあり、がくっぽいどはかなりの盛り上がりを見せ、現在でもクリエイターたちによる新作が投稿され続けています。

そんながくっぽいどの登場から約半年が経った2009年1月末。ミク・リン・レンを生み出したクリプトン・フューチャー・メディアが、再び女性ボーカロイドを送り出しました。


「巡音ルカ」と名付けられた本ソフトの特徴は、なんといっても日本語と英語の二つの音声ライブラリを持つ初のバイリンガルボーカロイドであること。さらにミク・リン・レンとは一味違ったムーディーな雰囲気漂う歌声と、大人っぽいルックスから人気に火が付き、発売からしばらくはニコ動のボーカロイドカテゴリがルカ一色になったことを覚えています。


そして2009年6月、株式会社インターネットから2人目となるボーカロイド「メグッポイド」が発売となりました。声優・歌手の中島愛(なかじまめぐみ)の声をもとにしていることからその名が付けられたわけですが、イメージキャラクターの名前は「GUMI」。これ、実は中島さんの子どもの頃のあだ名なのだそうです。滑舌がよく、聞きやすい声質のGUMIは、今後さらなるブレイクが期待されるボーカロイドであるといえます。

さて、海外勢も黙ってはいません。


2009年7月、Zero-G社から発売されたボーカロイド「SONIKA」。やはりというか、英語を歌わせると海外勢はすごく自然な発音を出してくれるようですね。残念なのは、SONIKAはそのポテンシャルのわりに投稿数が非常に少ないということ。もっと増えてくれるといいなぁと思います。

さて、再び国内へ。

2009年の年末に、AH-Softwareより「氷山キヨテル」「歌愛ユキ」「SF-A2 開発コード miki」の3人のボーカロイドが同時発売され、賑やかになってきたボーカロイドシーンをさらに盛り上げました。


スーツにネクタイにメガネというルックスから、動画コメントでは「先生」と呼ばれることが多い氷川キヨテルは、誰の歌声がもとになっているのか公開されていないというミステリアスな一面も持ちます。


子どもの声を忠実に再現するというコンセプトで製作されたボーカロイド「歌愛ユキ」。キャラクターイメージは完全に小学生の女の子で、担任は先ほど紹介した氷川キヨテルという設定があるようです。


正式名称は「SF-A2 開発コード miki」であるものの、ニコ動では省略されて「miki」と呼ばれているボーカロイド。名前の由来は"中の人"である元SUPERCARのフルカワミキから。同時発売された3人の中では、もっとも頻繁に名前を見るボーカロイドです。

さて、ここからは一気に見ていきましょう。


まず「SweetAnn」を生み出したスウェーデンのPOWER_FX社が発売した新たな海外組男性ボーカロイド「BIG-AL」。渋さと艶を兼ね備えた深みのある声はなかなかのものです。


Zero-G社から2010年7月に発売されたボーカロイド「Tonio」。なんとオペラ歌手の声をもとに製作されたそうで、それだけに何とも重厚な歌い方を得意としています。


2010年8月には株式会社インターネットから「Lily」が発売。"中の人"はm.o.v.eのボーカリストである「yuri」。伸びやかで力強い歌声はさすがといったところ。


ビープラッツが2010年9月に発売した女性ボーカロイドが「VY1」。ボーカロイドエンジンがヤマハ開発であることは前編で触れましたが、そのヤマハが企画し自ら開発した初のVOCALOID商品とのことで、イメージキャラクターが設定されていないというのが最近のボーカロイドとしては逆に特徴的。これは「純粋な楽器」としての面を打ち出しているためなのだといいます。


ガチャピンの声をもとにしたボーカロイドという、ウソのような本当の話。2010年10月に株式会社インターネットから発売となり、ガチャピンを擬人化したような小さな男の子がイメージキャラクターとなっています。ガチャピンというだけあって声は非常に特徴的。クリエイターの技量が問われそうなボーカロイドですね。


さらにここへきてサンリオもボーカロイド業界へ進出。AH-Softwareと組んで2010年10月に発売された「猫村いろは」はもともと「ハローキティといっしょ!」に登場するキティラーの女の子なのですが、イメージはそのままに声が与えられボーカロイド化。とにかく声がパワフルで、特に低音の厚みが魅力的です。

以上、駆け足でしたが、現在までのボーカロイドシーンの流れを簡単にまとめてみました。こうしてみると、やはり初音ミクのブレイクがきっかけとなって盛り上がり、リン・レンの登場でクリプトン・フューチャー・メディア以外の各社も一気に動き出した感がありますね。

最近ではほぼ1ヶ月に1本のペースで新しいボーカロイドが発売されているわけですが、さて今後のニコニコ動画におけるボーカロイドはどんな風に進化を遂げていくのか。2011年はボーカロイドクリエイターにとっても、ファンにとっても、楽しみな一年になりそうです。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。
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