テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送から30年が過ぎた今も人気は衰えることを知らない"ガンダム"を日本の伝統話芸・講談で語る試み「ガンダム講談」を、関西を拠点に精力的に行っている上方講談師・旭堂南半球。9月26日、東京・新宿V-1にて『旭堂南半球のガンダム講談会~V-1作戦』を開催した彼に「ガンダム講談」誕生のきっかけや講談会の魅力を聞いた。

旭堂南半球
1976年3月20日生まれ。兵庫県出身。2000年、旭堂小南陵(現在は南陵)に入門。大阪・ワッハ上方をはじめ、関西の劇場を中心に定期的に「ガンダム講談会」を行っている 拡大画像を見る

――ガンダムとの出会いは?

旭堂南半球(以下、南半球) : 「ファーストシリーズの『機動戦士ガンダム』の放送が始まったときは3歳やったんで、断片的な記憶しかないんです。初めてちゃんと見たのは小学2年のとき。近所で劇場版3部作が一挙上映されて、友だちに連れて行かれて見たんです。全部見ると10時間ぐらいあるんですけどね(笑)。僕はバカなガキで、映画の中で行われてる宇宙戦争を、本当に自分が体験したと思ってしまった。現実やないということに気づいてなかったんですね。その強烈な印象が、大人になってもガンダムにこだわる自分の原動力になってますね」

――それが講談と結びついたきっかけは?

南半球 : 「大学を卒業して講談師になったんですけど、なってみて、講談会になかなかお客さんが来ない理由がわかったんですよ。古典の講談はすごくおもしろいけど、今の人にこんなのやってますよと言ってすぐに聞きたいと思ってもらえる話ではない。で、聞きたい話って何だろう? と。自分の世代で考えるとゲームやアニメ。その中で最も昔の講談に近いのがガンダムだったんです」

――ガンダムは講談は近い?

南半球 : 「古典の講談は歴史を題材にしてるんですが、ジオン軍と連邦軍の戦いみたいな、二大勢力による戦争っていうのは過去の歴史の中にも山ほどある。だから、最初に作った講談は、もともとあったクオリティの高い古典にシャアとかアムロとかガンダムの登場人物をはめ込んだだけみたいな、創作の"外伝"みたいなものでした。それでも十分おもしろくなるんです」

――それを引っさげて、さっそく「ガンダム講談」を始めたと。

南半球 : 「いや、伝統芸能は若手が好き勝手にやりたいことをやれる世界じゃないので。僕、芸歴10年になるんですけど、最初の5年間はとにかく基礎。浮気せずに古典をやって、師匠からやっと『好きなことやってええで』って言ってもらえたときに初めて『やらせてください』と。でも、最初は師匠に一蹴されまして。だから、許してもらったというよりも自分で勝手に、破門される覚悟で2005年ぐらいから版権関係の許可を取るなどの準備を始めて、2006年に最初のガンダム講談会をやったんです」……続きを読む