ファミリー層に支持され好調な回転ずし業界

縮小する外食産業の中で、例外的に成長している業界がある。回転ずし業界だ。不況が続く中、「一皿100円」などのインパクトある安さがお客に支持され、ファミリー客を中心に人気を獲得している。大手専業チェーンが様々な独自サービスを打ち出し、しのぎを削る回転ずし業界で、1977年の創業以来「無添加」などの食の安全にこだわり続け、全国に直営251店舗(2010年7月末時点)を展開しているのがくらコーポレーションの「くら寿司」だ。今期の売上高予測は約712億円。売上高・経常利益ともに前年を上回る見込みである。

「くら寿司所沢店店内」

立地はロードサイドが大半

揚げたての天ぷらを100円で提供したり、ご馳走感の高い「あぶり寿司」をスタートさせたりと、趣向を凝らした取り組みを次々と展開。メニュー以外では、オリジナルキャラクターの「回転むてん丸」が子どもに大人気で、コミック誌に連載されるほどだ。そこでここでは、くらコーポレーション東日本広報宣伝部リーダーの中野浩さんへのインタビューから、好調の理由を探っていくことにする。

食の安全志向が高まり、追い風に

――まず、「くら寿司」の特徴を簡単に教えてください。

当店はファミリー客がメインの回転ずし店です。駐車場を完備しているロードサイド立地が大半で、客席数は200席前後と大型店舗が標準です。約70種類のすしメニューと約30種類のサイドメニューがあり、すしは1皿100円の価格を中心としており、客単価は約1,000円です。

すしは1皿100円の価格が中心。すしメニューは約70種類

――夕方になると、家族連れ中心のウェイティングができます。なぜこれほどファミリー層に人気なのでしょうか。

理由はいくつかあると思いますが、まず挙げられるのは、当社が創業当初から"安心・安全"にこだわってきた点でしょう。当社では「100円で本物」をキャッチフレーズに、すべての食材に化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料を使用しない方針を長年貫いてきました。また、30分以上(最長で55分)経過したおすしを自動で廃棄する「時間制限管理システム」も導入しました。"食の安心・安全"への関心が高まる中で、特に「我が子には安全なものを食べさせたい」という親が増えており、まずはそういった方々に当店を選んでいただいているのではないかと感じております。

すしは、30分以上、最長でも55分経過したものを自動廃棄する。またレーンを流れているすしは、すべてわさび抜きである

――子供が喜ぶ仕掛けもたくさんありますね。

テーブルごとに「ビッくらポン」という"ガチャガチャ"感覚のゲームを用意しています。当店では食べ終わった皿をテーブル脇の投入口に入れると、自動的に皿の枚数がカウントされるシステムを採用しており、5枚入れるとタッチパネルでゲームが始まります。そしてゲームで当たりが出ると、フィギュアなどのおもちゃ入りカプセルが出てくる、といった仕掛です。

――レーンを流れるすしにはすべてわさび抜きですね。子ども客への配慮ですか。

卓上には本わさび使用の「直前わさび」が

子どものお客様からはもちろんですが、大人のお客様からも"さびぬき"の注文が多かったので、約2年前より完全さびぬきにしています。その代わり、各テーブルに「直前わさび」を置き、自由に使えるようにしました。直前わさびは本わさびを多く使用しているため香りが良く、粗めにすりおろしているのでツブツブとした食感もあり、わさびの素材感まで楽しめます。本格的なわさびをご用意することで、ワンランク上のおいしさを提供します。