「Acronis True Image Home 2010」で作るバックアップ環境
常日頃からバックアップを作成しなければ、不意の事故によってコンピュータが起動しなくなるトラブルや、重要なデータの破損に対処できないのは、改めて述べるまでもない。コンピュータが軍事・研究用から個人用に転化して早40年。ハードウェアやソフトウェア障害、人為的ミスなどによる理由から、重要なデータが失われる可能性は常に付きまとい、バックアップ作業とコンピュータ運用は切っても切れない関係が続いてきた。
OSのバージョンアップに伴い、バックアップツールがOSに付属するのが一般的だが、一昔前は様子が異なる。コンシューマ向けOSとして最初にバックアップツールを標準搭載したのは、1991年にリリースされたMS-DOS 5.0。筆者も手元に残っていないため曖昧な部分も残っているが、当時は簡易的なバックアップコマンドを使って、FDなどにHDDの内容をコピーしていた。また、より優れたバックアップ機能を誇るサードパーティ製ソフトウェアがリリースされ、シェア争いをしていた時期でもある。
そこから20数年経った現在、バックアップは日常的な作業となり、前述のようなトラブルを未然に防ぐために欠かせない“転ばぬ先の杖”となった。Windows 95以降、常にバックアップツールが備わってきたが、日常的な作業でありながらも、ユーザーの負担や作業コスト(作業時間やマシン占有時間)はさほど変わっていない。そのため、ユーザーはより高機能なバックアップツールを必要としてきたのだろう(図01~02)。
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図02 Windows 95のバックアップ機能。VERITAS Software社(2004年、Symantec社に買収合併された)のバックアップ製品をサブセット化したバージョンを搭載していた |
サードパーティ製バックアップツールは、列挙するのが難しいほど数多く存在し、ユーザーも様々な媒体のレビューや評価記事を読み、取捨選択してきたはずだ。メインOSがWindows 7となった現在。選択肢は片手程度に絞られてきたが、今回取り上げるバックアップツールは、同種製品のなかでもパフォーマンスや機能面で定評のあるAcronis True Image Homeシリーズの最新版、「Acronis True Image Home 2010」。Windows 7への対応を筆頭に仮想HDDのサポート、新しいユーザーインターフェースやスケジューラの搭載、継続的データ保護機能など、OS標準のバックアップツールにはない、魅力的な機能を備えている。
Acronis True Image Home 2010の新機能
そもそも、Acronis True Image Homeシリーズは、高速なバックアップおよび復元機能を核とし、フルバックアップや増分・差分バックアップなど、柔軟なバックアップスタイルを実現している。これらの機能を支える技術を用いて、異なるコンピュータ間のシステム移行やHDD(ハードディスクドライブ)のクローン化や、HDDデータの完全消去も可能。ファイルや電子メールデータのバックアップ・復元機能も兼ね備えている。
また、バックアップメディアの柔軟性も魅力の一つ。Windows OS標準のバックアップツールは、使用するエディションによってバックアップ先の制限が設けられている(Windows 7 Home Premiumでは、ネットワーク上の共有フォルダにバックアップを作成することができない)。だが、Acronis True Image Homeシリーズは、早い時期からネットワーク上の共有フォルダや、FTPサーバーにバックアップデータを作成する機能を搭載し、従来の光学式メディアやUSBストレージデバイスサポートと相まって、様々なメディア・デバイスに対するバックアップが可能だ(図03)。
そして最新版となるAcronis True Image Home 2010では、Windows 7に正式対応。Acronisバックアップイメージ(拡張子「.tib」)と、Windows Virtual PCやシステムイメージのバックアップなどで使用される仮想ハードディスクファイル(拡張子「.vhd」)の相互変換をサポートし、これまでWindows 7のバックアップアップ機能を使っていた方も、簡単にAcronis True Image Home 2010に移行できる。また、Acronisバックアップイメージファイルを仮想ハードディスクファイルへ変換し、Windows Virtual PC上で動作検証を行なうことも可能だ(図04)。
お使いのエディションがWindows 7 Ultimateの場合、システムパーティションを含んだAcronisバックアップイメージファイルから、直接コンピュータを起動することもできる。バックアップしたシステム環境を、実際に復元せずにテストできるため、動作が不安定なアプリケーションの検証や、システムに悪影響を及ぼす可能性があるツールの実験など、様々な用途に用いることができるだろう。
Acronis True Image Homeシリーズは、スケジューリング機能よる定期的なバックアップ機能を備えていたが、新バージョンでは、スケジューリングオプションを見直し、新しいカレンダービューを用いた直感的なスケジュール設定を実現。作成したタスクの有効/無効化や、タスク実行日のコピーや再設定も容易になり、ユーザーインターフェースの一新と相まって、ユーザビリティ面も向上している。
特徴的な機能として述べておきたいのが、「Acronisノンストップバックアップ」の存在。5分ごとに増分バックアップを実行することで、いつでも任意の状態に戻すことができる優れものだ。特に難しい設定を必要とせず、復元操作もエクスプローラ風のデザインを用いた「Time Explorer」を用いるだけなので、コンピュータ初心者でも継続的なデータ保護を実現できる。
また、アドオンパッケージとして様々な追加機能を用意した「Acronis True Image Home Plus Pack」も注目株。同パッケージでは、復元先コンピュータに適したドライバをインストールし、異なるコンピュータへの復元操作をサポートする「Acronis Universal Restore」や、ダイナミックディスクのサポート、Windows PE(プレインストール環境)のサポートを可能にしている。
例えばWindows PE機能は従来のAcronis True Image Homeシリーズにも備わっていたが、同機能によるメリットを享受できるのは、一部のコンピュータ中上級者のみ。このような背景を踏まえて別パッケージ化に踏み切ったのは、ユーザー視点から見ても有益だろう。
Acronis True Image Home 2010のインストール
それでは、Acronis True Image Home 2010のインストールに取りかかろう。Acronis True Image Home 2010の製品ラインナップは、通常版(税込み10,290円)やアップグレード版(7,140円)、ダウンロード版(5,985円)、アップグレードダウンロード版(4,830円)などがある。パッケージ形式の前者二種類の場合は、セットアップCD-ROMをCD/DVDドライブにセットし、自動再生からセットアッププログラムを実行しよう。ダウンロード版の場合は、Webサーバーからダウンロードしたファイルをダブルクリックして実行して欲しい(図05~06)。
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図05 「Acronis True Image 2010 Home」のセットアップCD-ROMをドライブにセットし、自動起動が起動したら「Setup.exeの実行」をクリックする |
これで最初にインストールメニューが起動する。通常は「Acronis True Image Home 2010のインストール」をクリックするだけだが、初めて同製品を使う方には「Media Add-ons Acronis True Image Home 2010」の存在に興味を持たれることだろう。同ツールはAcronis True Image Home 2010のセーフメディアとBart PEプラグインなどをセットにしたセットアッププログラムを呼び出すので、必要に応じて後から導入すればよい。Acronis True Image Home 2010のメニューが表示されたら「Acronis True Image Homeのインストール」をクリックしてセットアッププログラムを起動しよう(図07~08)。
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図07 インストールメニューが起動したら「Acronis True Image Home 2010のインストール」をクリックする |
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図08 「Acronis True Image Home 2010」のメニューが表示されるので、「Acronis True Image Homeのインストール」をクリック。これでセットアッププログラムが実行される |
Acronis True Image Home 2010のセットアッププログラムは、ウィザード形式で進むため、基本的に画面の指示に従って進めればよい。最初にエンドユーザーライセンス契約の内容が表示されるので、内容をよく確認し、同意できるようであれば先に進もう。続けて確認をうながされるACEP(Acronisカスタマエクスペリエンスプログラム)だが、参加することで製品品質の向上に役立ち、早期のバックフィックスへとつながるので、特に問題がなければ参加した方がよい。
プロダクトキーは従来と同じように、入力せずに進むと期間限定の試用版としてAcronis True Image Home 2010を使用できる。今回は購入者を前提にしているが、公式サイトからダウンロードできる無償試用版を使う場合は本手順をスキップして先に進むとよい(図09~12)。
セットアップの種類だが、その内容は「完全」と大差ないので特に問題がなければ「標準」を選択する。導入先を別ドライブに変更したい場合は、Acronis True Image Home 2010本体と一緒にインストールされるブータブルメディアビルダが不要といった場合のみ「カスタム」を選び、各設定を変更して先に進んで欲しい(図13~18)
Acronis True Image Home 2010のインストールを終えると、一度コンピュータの再起動が必要となる。画面の指示に従ってコンピュータを再起動すると、デスクトップには各ショートカットファイルが用意されるので、同ファイルをダブルクリックしてAcronis True Image Home 2010を用いたバックアップ・復元を行なおう(図19~20)。
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図19 コンピュータの再起動をうながされるので、<再起動>ボタンをクリックしてコンピュータの再起動を実行する |
図20 コンピュータ再起動後には、デスクトップにAcronis True Image Home 2010の各ショートカットファイルが用意される。実行時は同ショートカットファイルをダブルクリックすればよい |
さて、1回目となるAcronis True Image Home 2010を用いたバックアップ・復元環境の構築はここまでとしよう。今後数回にわたり、Acronis True Image Home 2010を用いたバックアップや復元、独自機能の活用などを詳しく解説していくので、是非続けてご覧頂きたい。
コラム 「Media Add-ons Acronis True Image Home 2010」のインストール
「Media Add-ons Acronis True Image Home 2010」は、前述のとおりBart PE(Bart Preinstalled Environment)用プラグインと、ブータブルレスキューメディアに各デバイスドライバを含まないセーフ版を追加するアドオンだ。
Bart PEはユーザーがWindows OSコンポーネントを用いて、独自のPE環境を構築するというもので、Windows XPが主流の頃、多くのユーザーが緊急用起動CDとして人気を博したオンラインツールである(詳しくは本誌に寄稿された以前の記事をご覧頂きたい)。そのため、Bart PEを使わないユーザーや、ブータブルレスキューメディア(セーフ版)を必要としない方は不要だが、デバイスドライバの組み込みを必要とせず、軽快なブータブルレスキューメディアを作成したい場合は、Media Add-ons Acronis True Image Home 2010を導入しておこう。