ワコム主催のイベント「Wacom Live 2010」では、アニメ『超時空要塞マクロス』のキャラクターデザイン・作画監督であり、マンガ『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル』、『超時空要塞マクロス THE FIRST』でも知られる美樹本晴彦氏を迎えてのトークセッションが行われた。アニメ業界に入った経緯やデジタル環境での作品制作についてなど、様々な話が語られた。

『ヤマト』から入って『マクロス』で業界の道へ

「Wacom Live 2010」では、様々なセッションや製品展示が行われた

仕事として絵を描き始めてから今年で約30年になるという美樹本氏。もともと一人っ子で家に遊び相手がいなかったことや、人と話すのが苦手で「絵を描いているとそれがきっかけで話しかけてもらえた」(美樹本氏、以下同)ということから、子供の頃から自然に絵を描くようになったそうだ。

美樹本氏が高校に入ると、アニメを好きで見ている人はごく少数派で、そんな中で、似たり寄ったりの仲間が10人くらい集まって、一緒に行動するようになったとのこと。その中には、河森正治(メカニックデザイナー、アニメ監督)や細野不二彦(漫画家)などが含まれていた。河森氏や細野氏は、その前から『宇宙戦艦ヤマト』のデザインワークを手掛けた「スタジオぬえ」を訪れており、学生のうちからそこで仕事をするようになったそうだ。

新人がいきなり作画監督・キャラクターデザイナーに

美樹本氏がキャラクターを描かないかと誘われたのは、スタジオぬえが独自にアニメ企画を立ち上げる事業に進出した頃。まだ仕事にはならず「1~2年くらいの間、描いて行ってはダメだしをされる感じでした」というが、これをきっかけにマクロスのキャラクターデザインを任されることになった。新人がキャラクターデザイン・作画監督を担当するのは非常に特別なケースで、現場では苦労することも多かったと語った。

「マクロスを始めて苦労したのは、やはり自分の力の足りなさでしたね。作画監督は、長く経験を積んで他のアニメーターの面倒も見られる人がやる仕事ですが、僕は全くそんな状態ではありませんでした。当時スタジオの社長だった石黒(昇)さんがいろいろ気を使ってくださることもありました」

その後、美樹本氏はマクロス劇場版や『メガゾーン23』などを経て『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』のキャラクターデザインを手掛けることになる。ガンダムが好きでアニメ業界に入ったという氏は、「もとのライン(=ファーストガンダム)を継ぐ物ではなく、違った形のガンダムを作りたいという企画意図を伺って、やらせて頂くことにしたんですけど、それでも重かったです」と、当時を振り返った。

ちなみに美樹本氏は、ヤマトやガンダムの他『コンバトラーV』や『勇者ライディーン』などが好きだったという。『ザンボット3』については「ドラマ性の強い、それまでのロボット物とは一線を画す作品でしたね」と熱く語った。学生時代には仲間と共にガンダムの同人誌を作り、その頃まだ小規模だったコミケに4~5回参加したそうだ。当時、その本は『ガンダム』の制作スタッフにも読まれていたという。

「Wacom Live 2010」で、自身のプロ入りのきっかけを語ってくれた美樹本氏

後編では、美樹本氏がデジタル化で変化した制作環境について語る。