サイズとデザインが確定した段階で、ようやく構造デザイン担当の飯島崇氏の出番に。通常は製品コンセプトやスペックを考慮しつつもある程度自由にできるところを、今回はカッチリと筐体が決まった段階での設計だった。想像するに、研究棟の窓ガラスを壊して回ってこの縛りからの卒業を果たしたくなるくらいの負担だが、飯島氏はぐっとこらえて取り組んだ。「熱処理はファンを組み込むことで対応できそうでしたが、最初にバッテリーの問題に悩みました。このサイズの筐体に合うバッテリーがなかなか見つからなかったんですよ」

乾電池に似た円柱状のバッテリーセルなら複数のバッテリーメーカーが製造しているが、欲しかったのは底面に配置できる薄い板状のもの。ハードウェア担当の小林氏は「板状のものを作って欲しいと色々なメーカーに声をかけて、どうにか協力してもらえるところをみつけたんですよ。それからバッテリー屋さんと打ち合わせして、次にキーボード会社さん、それから液晶のタッチパネルも両方の会社さんと相談して、『この薄さで作れますか?』とたくさんやりとりしたんです」と話してくれた。

そうして、ようやく型が決まったのが2009年7月7日だったという。12月に開発をスタートした場合、通常は3~4月に済ませるべき工程だ。小中氏は「それぞれの段階で議論を繰り返していたので、本当に遅くなりましたね。そのときは『七夕に詳細の設計が完了したなんて滅多にないや』なんて笑っていましたが、その後は笑えませんでしたね」と笑う。いまだから笑う。

LOOX Uの底面に配置されたバッテリー。厚みを抑えるために、バッテリーにコネクタは設けず、電池から直接フレキシブルケーブルを走らせる特殊な設定としている

そんな苦労の末に新しいLOOX Uが完成した。後編はこだわり抜いた機能性と使い勝手、ユーザー視点で見た気になるポイントについて聞いていきたい。俺たちの取材はまだ始まったばかりだ!