――テレビ作品『忍者部隊月光』は、新東宝からの流れで?

「ええ。その前に、『スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人』(劇場作品)ってのがありますけど、系統としては、普通の音楽でしたね」

――その後、映画が斜陽になるわけですね。

「昭和30年代のあるころから、まず日本テレビの仕事をやるようになりましたね。それからしばらくすると、新東宝はつぶれましたし、そのときの助監督だった人がテレビ朝日のディレクターになって、かなり私のほうに声がかかりました。それでね、東映のスタッフともそこで馴染みになって。で、当時手がけた作品はすべて大人ものです。芸術祭参加作品などもやったし、文芸作品が多かったですね」

――その後、子ども向け作品の最初が『人造人間キカイダー』ですね。

「そうそう、仕事が減ってきたので東映に仕事を回してくれませんかと頼みに行ったんですよね。しばらくして決まったという電話。僕は大人のものだと思ったんだ。台本を受け取り題名を見て、正直、えーっと思った。ある意味ではがっかりしたんですよね。正直いうと。ところが、『何をいうか、子どものもんがいいんだよと』。そのとおりになりましたもんね。大人のものいくらやっても反響ってのは全然ないんです。ところが、子ども番組をやるとね、反響があるんですよ。特に『宇宙戦艦ヤマト』が当たったあたりからねぇ、ファンレターが来たり、ファンという人たちが家に遊びに来るようになった。いや、その反響はすごかったですね」

――東映テレビ部の渡邊亮徳さんやプロデューサの平山亨さんとは、そのころからのお付き合いなんですか。

「そうそう。平山さんは、あんまり口うるさい注文つけない方ですけど、亮徳さんは厳しいんですよ」

――初めておやりになる子供番組ということで、既にあった音楽を参考になさいましたか?

「最初はある意味じゃ不安ですよ。どんなふうにやったらいいかなあっと思ってね。レコード屋に参考になりそうなレコードを探しに行ったんですね。で、『ウルトラマン』とか『仮面ライダー』ですね。それ、聴いたんだけどねぇ、いや、こんなふうな音楽は、私はやりたくないという。で、自分流にやっちゃったんですね」

――『キカイダー』は、海外でも支持されていますね。

「ハワイではね、すごい人気があって、州知事が"キカイダーの日"ってのを設けたという話がある(笑)」

――それに続く子ども番組『マジンガーZ』は、どのような経緯で受けられたんでしょう?

「結局、『キカイダー』をやってよかったからということで。あれは東映動画ですからね、権限が違うんだけど、亮徳さんが強引に押して『渡辺宙明で行け!』ということになりました。まあ、これはありがたかったですね。思い出深い話があるんですけど、『Zのテーマ』という挿入歌あるんですが、実は、あの曲は主題歌として作ったんですよ。水木一郎さんが歌って録音して、大勢のスタッフが『ああ、いいのができたなぁ』って満足して、テープを持って帰った。で、東映の渡邊部長に聴かせたらね、『いや、これはちょっと甘いじゃないか。作り直せ』という。もう録音、トラックダウンは全部済んでしまっていたのです。そこへ『作り直せ』ですよ。社員の方から電話がありまして、『部長はもっとパンチのある曲を望んでいる。そのような曲を書いてほしい』ということでしたが、もう時間がないわけですよ。ある週の火曜日に録音して水曜日に電話かかってきて、『1日で作曲できますか』と。そりゃ、やらざるをえないでしょと答え、火曜日の夜。歌詞の1番だけできあがってきた、それで水曜日に作曲して木曜日に聴かせて、金曜日にかけて編曲して、土曜日録音という(笑)」

――主題歌もよかったし、『Zのテーマ』も、毎回、出撃シーンで挿入されて、非常に印象深いですね。

「NHKがアニメソング特集をやるときでも『マジンガーZ』を出さないわけにいかないというか、要するにロボットものの代表的な曲になっています。懐かしのメロディーにもなっているようです。そういう意味では、アニメソングってのは、普遍的というかね、広がってますね。世界的に広がってるとも言えるようです」

――ちなみに、当時のコロムビアのディレクターは、水木一郎さんや堀江美都子さんのご担当だった木村英俊さんですよね。

「あの方はねぇ、当時、非常に熱心だったですよ。例えば、『秘密戦隊ゴレンジャー』のときに、一応メロディーを聴いてもらって、皆さんのOKをとったんですがね、翌日、木村さんから電話かかってきて『メロディーはいいんだけど、頭になにかスキャットみたいなものが付かないか』と言われて、その後しばらく考えて、『バンバラバンバンバン』というフレーズを思いつきました。さっそく電話して『どうですか』と言うと、『あ、それそれそれ』」

――『笑っていいとも』で、ウッチャンナンチャンの南原清隆さんがレギュラー出演してらしたときに、それをもじって登場テーマ曲に……。

「『ナンバラバンバンバン』(笑)」

――自分のお作りになったものがそういう形で使われるというのは、どんなお気持ちですか?

「逆に面白いんじゃないかと思いましたね。そこまで浸透してくれているのが逆にうれしいと」