金沢でのテストフライトを終えたメディア・アーティスト八谷和彦氏の「OpenSky(オープンスカイ)」プロジェクトだが、いよいよ完成機であるジェットエンジンを積んだ機体「M-02J」がロールアウトした。同機体はスパイラルガーデン(東京都港区)において、12月5日に公開された。

完成したばかりのM-02Jが青山スパイラルガーデンで公開された

俯瞰で見ると、翼のみで構成されている機体のように見える

2003年にスタートした同プロジェクトだが、ここまでの機体に使われた動力は、すべてゴム索発航。いわば"人力飛行機"だったのだが、M-02は最終形態であるジェットエンジンを搭載している。ジェットエンジンの静止推力は33kg、燃料タンクの容量は20L。なお、詳しい仕様は非公開としている。

正面からみたジェットエンジンユニット

後方から見るとこんな感じ

これまでの機体には搭載されていなかった、燃料タンク、電気系統、エンジンコントロールユニットなどのさまざまな機器が搭載されている。これらの搭載で機体重量が増した関係で、サスペンションの追加など足回りが変更された。

また、燃料タンクがついたことにより、若干上方に膨らんだ印象の形状となった。メインギアにはブレーキ、左側には緊急時用のレスキューパラシュートがつけられた。新たに取り付けられた計器パネルには、小さい方のパネルが燃料残量計、大きい方がエンジン・インフォメーション・ユニット(液晶パネル)になっており、エンジン温度、エンジン回転数、エンジンの状態(問題があるときはその情報)などが表示される。

ここが操縦席? ハーネスに上半身を固定し、下半身は機体につま先立ちになるような形で搭乗する

緊急時用のレスキューパラシュート

新たに取り付けられた計器パネル。写っていないが右にスイッチがある

オレンジの計器は高度計。センターに取り付けられたミラーは真下にあるジェットエンジンの状態を確認するため

ジェットエンジンを搭載したM-02Jでのテストフライトだが、その実施時期にはいつになるのだろう? 八谷氏によれば「来年以降ということになりますが、まだ決まっておりません。というのは、試験飛行までの間には、国土交通省の許可が必要なので、許可が下りるタイミングと関係してくるからです」と語っており、「時期は明言できません」とのこと。実際の試験は以下のステップが予定されている。

  1. 「エンジンポッド単体でのエンジン燃焼試験」(エンジンの取り付けや燃料パイプからの漏れなどがないか検証する試験)
  2. 「滑走試験」(翼をつけての滑走試験。速度を変えて何度か行われる)
  3. 「ジャンプ飛行試験」(地上から3m以下の高度をジャンプ飛行する試験。何度か行われる)
  4. 「場周飛行試験」(飛行場周辺を何周か回る試験。飛行場から遠くに行くことはない)

このような試験を行い、許可を取りながら、段階を踏んで行うことになる。もちろん当面は非公開の試験となる点を考えれば、M-02Jの雄姿はしばらくお預けとなりそうだ。八谷氏によれば試験によって機体にキズがついたり、場合によっては破損する可能性もあるので、その前に見て欲しかったと話しており、今回の公開に至ったという。

5日に行われたトークイベントでは、OpenSkyの映像に音楽をつけている作編曲家でシンガーソングライターの宮崎貴士氏によるオープニングアクトの後、『装甲騎兵ボトムズ』の1/1モデルを作ってしまった鉄鋼アーティスト、倉田光吾郎氏とトークショー「1/1って素晴らしい(そして大変!)」が行われた。また、6日のオープニングアクトではM-02Jを囲んで杉並児童合唱団が美声を披露。その後のトークショーでは作家の瀬名秀明氏をゲストに迎え、「空を飛んで、変わったこと」をテーマに対談が行われた。イベント会場には東京ピクニッククラブが制作した『ベイビープレーン』が敷き詰められ、屋内なのに草原にピクニックにやってきたかのような気分で楽しむ来場者の姿が印象的だった。

5日のスペシャルゲストの倉田光吾郎氏(左)と八谷氏

アーティストというよりは工作マニアの対談のようになってしまった

なかなかの座り心地だったベイビープレーン

撮影 : 八谷 和彦