「パリといったら、ルーブル美術館、凱旋門、エッフェル塔……それは古い!」。そう語るのはパリの最新のアートを紹介する美術専門誌「コネサンス・デ・ザール」編集長のギィ・ボワイエ氏。パリ/イル・ド・フランス地方には建築物をはじめ、もっと新しい、魅力的なスポットがあるという。フランスの首都パリとイル・ド・フランス地方の最新スポットの魅力をPRするために、28日に行われた記者会見「UPDATE YOUR PARIS」では、同エリアの新名所やパリの最新ファッションについてアート、ファッションなどの各界の著名人が生の声を語った。

ギィ・ボワイエ氏

数々のアート系雑誌の編集長を手がけ、現在、パリの最新のアートを紹介する美術専門誌「コネサンス・デ・ザール」編集長のギィ・ボワイエ氏は、パリで注目されている斬新な建築物として、まず2006年6月にオープンした「ケ・ブランリ美術館」を挙げた。アフリカ、オセアニア、アジアなどから集めた美術作品が約3,500点展示されている同美術館は、ジャン・ヌーヴェル氏が手がけたピロティ様式の設計だ。また自然庭園は、建築家のジル・クレモンにより作られ、壁に面した庭園「垂直庭園」はパトリック・ブラン氏によるもので、自然庭園には世界各地からの樹木180本が、垂直庭園には1万5,000本の植物が植えられているという。同美術館ではイベントも随時開催。2009年3月10日~6月28日からは「ジャズの世紀」と題し、ジャズとグラフィックアートの関係を年代順に紹介するイベントも行われ、盛り上がりをみせることだろう。

そのほか2007年9月オープンで、フランスの国家遺産指定の建造物の側面を形取りし、実物大を展示している「建築文化財美術館」、フランスで初の、1950年代以降の現代美術作品のみの美術館「ヴァル・ド・マルヌ現代美術館」、2005年にリニューアルオープンした、高さ45mのガラス張りの屋根が迫力のある「グラン・パレ」などを列挙。スクリーンで写真を見せながら、最近建てられた建築物や現代アートという視点で美術館、博物館を次々と紹介した。

ケ・ブランリ美術館

ケ・ブランリ美術館の自然庭園

ケ・ブランリ美術館の垂直庭園

建築文化財博物館

「特にパリはデザイナーが集まっている国際的な場。2005年以降に建てられた"アート"な建築物、博物館、美術館がたくさんあります。フランスの文化遺産もいいですが、ぜひ現代アートの魅力を感じて欲しい」。

フレデリック・フィスバック氏

世界的にも珍しい美術創作の場で、2008年10月11日に開館したばかりの「ル・サンキャトル」については、共同ディレクターであるフレデリック・フィスバック氏が説明。特筆すべきは、あらゆる分野の芸術家たちがこのアトリエ兼住居に住み、定期的にアトリエを開放して観光客を迎え入れている点だ。同施設は、市営葬儀公社があった場所で、建物は現在、歴史的建造物として保護されている。ル・サンキャトルには2つの劇場があり、2009年には子どものためのスペースやカフェ、レストランがオープンする予定だ。「サンキャトルは美術館でも劇場でもアートギャラリーでもない新しいカテゴリ。私が強調したいのは日本で言う"お客様"のための施設です。パリのファッション、現代芸術のトレンドをここで見て、生きたパリや生活スタイルを体感していただきたい」。

芸術家たちの生活が垣間見れる美術創作の場「ル・サンキャトル」

オーステルリッツ駅近くのセーヌ岸にあるデザインとモードに関する商業施設「ドッグ・アン・セーヌ」

パリコレ、パリジェンヌ……とファッション界をリードするフランス。フランスの今の流行を伝えるのは、2006年に展開を始めたブランド「エイムストーン」を手がけるアリックス・プチ氏とデルフィーヌ・ドゥラフォン氏だ。

右から、アリックス・プチ氏とデルフィーヌ・ドゥラフォン氏

「パリは芸術に溢れる街。制作のインスピレーションもパリから得ています。また、ドレスをメインにデザインしているのですが、ドレスに新しい解釈を加えようというのが私たちの試み。クリエイターでは、バレンシアガの二コラ・ゲスキエール、ヘルムート・ニュートン、ティム・ウォーカーなど。私のブランドの最新トレンドは、音楽をベースにしたデザイン。例えばマイケルジャクションや80年代の音楽や映画の作品から制作しています。今シーズンはキラキラ光る皮を使ったデザインを試みています」(プチ氏)。

エイムストーンのデザインイメージ(右)とショップ写真(左)

これて受けて、ヨーロッパ最大級の百貨店「ギャラリー・ラファイエット」の海外部 アジアマーケットマネージャーのキャロライン・ドゥ・メゾンヌーヴ氏が別の視点で、パリの最新ファッションについて語った。「今はアートとモード(ファッション)が近い存在になっています。弊社のデザイン部門による2009年モードトレンド予測は、ボヘミアン/ネオ・ロマンチック/モダニスト/シックの4つのスタイルです」。また、同施設では、現代アートの展覧会なども定期的に開催していたり、買い物の際は日本語サービスも充実しているという。

ヨーロッパ最大級の百貨店「ギャラリー・ラファイエット」の外観

キャロライン・ドゥ・メゾンヌーヴ氏

導入されたロゴ「le nouveau Paris(新しいパリ)」

パリ/イル・ド・フランス地方観光局では10月より新しいロゴ「le nouveau Paris(新しいパリ)」のマークを導入し、ウェブサイトも新たに設けた。マークには、パリ/イル・ド・フランス地方が常に変化をし、数百万の旅行客を誇る旅行の目的地として、「ぜひ訪れたい都市」であり続けたいという願いを込めている。


アンリエット・ズゲビ氏

同局プレジデントのアンリエット・ズゲビ氏は「経済危機が問題となっている時期に、公的機関がこういったイベントをやるのはどうか、という意見もあるかと思います。しかし、今だからこそ公的機関が文化・観光を発信することが大事だと私は考えてます。古い文化遺産を大切にすると同時にぜひ非常に元気な、日々進化するパリ/イル・ド・フランス地方を皆さんに"UPDATE"して欲しい」と述べ、会見を締めくくった。進化するパリ/イル・ド・フランス地方―。2009年以降のイベントもまだたくさんある。どうやら"UPDATE"をするには、ある程度、時間がかかりそうだ。