秋といえば「芸術の秋」。美術館や博物館といえば、気になる特別展でもないと、普段はあまり行く機会がないのが普通。けれど、お気づきだろうか。多くの美術館や博物館に、関連グッズを販売するショップがあることを……。「そんなの知ってるよ!」ていう方も、ちょっと待って!

アナタの知ってるのは、特別展の図録やポストカードを販売している、特別展ショップコーナーのことじゃないだろうか? これから紹介したいのは、あくまで常設の、つまりいつもミュージアムオリジナルグッズを置いてあるショップの方。「ここでしか買えない」品がいろいろあるのだ。

ミュージアムオリジナルグッズと一口に言っても、想像通りのコジャレた物から、一癖も二癖もあるレアな物まで様々。ちなみに展示コーナーの外にあるのが普通なので、入場料を気にせずチェックできる(もちろん、展示を見た方がグッズを購入する際の楽しさも倍増だが)。これは行くしかない!

まずは、明治大学博物館へと向かった筆者。ここにはその筋から耳打ちされたすごいグッズ「アイアン・メイデンTシャツ」があると聞き、第一回目に選んだワケだ。

御茶ノ水駅から神保町方面に歩いて行くとある明大の敷地内にひっそりと……あ、あれ!?

最近来てなかったとはいえ、知らない間に明大そのものがキレイになってる! ちょっと名物だった学生運動看板がどこにもないし、博物館への案内もはっきりと記載されている。しかも学内施設とは感じさせない機能美。ミュージアムショップも「どこぞのお洒落なギャラリーですか」と言いたくなるくらいスタイリッシュだ。

ミュージアムショップ「M2 エムツー」。「明治大学」と「ミュージアム」の2つの「M」がかけられている。また「微笑む」の「笑む」が2つで「M2」とのこと

お目当てのアイアン・メイデンというのは、いわゆる「鉄の処女」とも呼ばれる、西洋の拷問道具。聖母マリアの顔をかたどり、当時の未婚女性の装束をまとった可憐な姿の立像にも関わらず、フタを開くと中には30本の長い針。ここに囚人を入れてフタを閉めれば、全身串刺しにされた死体の出来上がり、という、何とも禍々しく怨念のこもってそうなブツなのだ。そんなものをTシャツにあしらうって……ヲイ!

それはもう期待満々で訪れた博物館ショップだったが、アイアン・メイデンTシャツは2004年の校舎 & 博物館リニューアルと同時に発売されるやいなや、即完売してしまったという。しかも営利目的ではないということで、再販未定。なんてこった……。

どこの誰がデザインしたんだ、というくらい、可愛らしくスタイリッシュなアイアン・メイデン……ただ本体の色が血の赤だってあたり、シャレが効いてます。普通に着れるじゃないか、これ? ていうか、むしろ着たい! 再販を強く希望します

アイアン・メイデングッズ以外にイチオシらしいのは、ドグウと十手と土器モチーフだそう。

↑そこで発見したのがコレ

「これは、飲み口の厚みや柄を邪魔にならない位置に配置するなど配慮して、1年近くかけて開発製作した力作なんですよ」(博物館 伊能さん)という土偶マグカップ

白一色に浮き出しにされた土偶のモチーフに、持ちやすく使いやすそうな、プレーンな形。確かにここでしか買えない……けど、むしろ可愛くて普段使いしたい! ということで、思わずお買い上げ。

ちなみにショップのコンセプトは「明大博物館のアピール」であるのはもちろんのこと、「小中学生でも気軽にお土産にできる価格設定」だそう。「何か思い出に買って帰ろうと思ったら高くて買えない、だと寂しいですからね」(伊能さん)

心憎い気配り! 確かによく見るミュージアム系のグッズより全般的に安い。

学芸員さんおススメの品はこちら!

明治大学博物館グループリーダーで法学博士の伊能秀明さんにまずは、売り上げランキングについて伺った。1位から3位は納得の一品ばかり。それにしても、常設展の図録は値段の割りに充実の内容でお買い得だ。ちなみに4位以降は「アットランダム」らしい。また、伊能さんオススメの一品はネクタイとのこと。⇒【「裏」ミュージアムグッズ・ランキングはこちら

2007年7月~12月までの売り上げベスト(明治大学博物館調べ)

順位 商品 価格
1位 特別展『明治大学所蔵 村絵図の世界 故郷の原風景を歩く』図 録 1,500円
2位 『常設展示案内ガイドブック』 800円
3位 ポストカード『ニュルンベルクの鉄の処女』 90円

「オススメだったのは、土器のデザインのものですね。既に完売してしまったんですが」と伊能さん。

デザインに目を凝らすと、確かに十手だ。でも、ここの商品開発、デザイン上手過ぎじゃないですか……!? 驚いた表情を見せる筆者に、伊能さんが見せてくれたのは、明大博物館広報誌『MUSEUM EYES』。

『MUSEUM EYES』に掲載された土器デザインのネクタイ

「これが完売した土器デザインのネクタイです」(伊能さん)……確かに土器です。今まで見せて頂いたどれよりも、リアルに土器柄なモチーフが、ネクタイを所狭しと埋めている。さすが皆さんお目が高い、という感じです。

館内でアイアン・メイデン&土偶とご対面

そして、有料の特別展を横目に、無料の常設展を見学。「商品」「刑事」「考古」という3柱で構成され、「実物教育」という理念のもと、文化財クラスの貴重な考古学的展示物も含め、和洋の拷問・刑罰資料が展示されているこの博物館。

特に刑罰資料が生々しくなりすぎないように、との目的も兼ね、機能性と無機質感をコンセプトにデザインされたという館内。機能的かつ、スタイリッシュにまとめられた館内は、非常に見学しやすい。お年寄りでも安全に、という目的のバリアフリーの行き届いた設備にも注目だ。

コーナーに沿って、統一コンセプトの垂れ幕が下がっている。非常に落ち着いた空間だ。また、スペースの問題で展示しきれずに収蔵されている20万点もの品があるという。そうした豊富かつ専門的な資料をもとに作成された解説ボードが各所にあり、非常にわかりやすく資料性も高い内容でまとめられている。

刑事のコーナーでは、国内では十手、江戸時代の晒し首台のレプリカを始め、西洋からはギロチンやアイアン・メイデン、貞操帯などが展示されている。

アイアン・メイデン(写真左)と具体的なレプリカ

ちなみにアイアン・メイデンだが、床は落とし戸になっていて、死体は自動的にそこから下の排水溝に処理されたという、禍々しい合理性。あえて無機質に造られた空間の中でも、異様な迫力で迫って来るものを感じさせる。

通常は呪術的儀式に用いられたためか、割れた状態で出土することが多いそうだ

さきほどTシャツにあしらわれていたアイアン・メイデン

考古部門では、ショップグッズのモデルとなっている、非常に貴重な「破壊されていない」遮光器土偶が展示されている。

ひんやりと鎮まったこの空間でぼんやりとたゆたうのも楽しいが、ボードと展示物をじっくり見比べながら進むのは、非常に知的好奇心を満足させてくれる充実した時間になりそうだ。

コレクションはコーナー展示として時々入れ替えられているとのこと、何度でも通い詰めて楽しむのも良いかもしれない。

構えずに意見や感想を残せる。これらの声を反映しているそう

記念にはスタンプ台も

明治大学博物館

開館時間 : 10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日 : 8月10日~16日/12月26日~1月7日※8月の土・日曜に臨時休館あり
入館料 : 常設展は無料
アクセス : JR御茶ノ水駅徒歩5分 / 地下鉄新御茶ノ水駅徒歩8分

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