いよいよ試乗開始だ。実は私はオートマチックのビッグスクーターに乗るのはこれが初めての体験。左のブレーキレバーを握ってエンジンをかけるのだが、いざ出発をしようとき「このレバーを放したら、クラッチレバーを放したときのように前進するのだろうか? 車のオートマ車も、ブレーキを放すと前進するよな……」と考えてしまった。そう考えると、左手のレバーを放すのがちょっと怖い。恐る恐るスタッフに、「左手放すと、走り出しますか?」と聞いてみる。スタッフの方は、「走り出しませんよ」と苦笑いして、私の出発を心配そうに見送ってくれた。

初めはクラッチ付のバイクとは操作性が違うこともあり戸惑ったが、お台場を一周するうちに慣れてきた。エンジン性能は中低速域を重視して、ゆったりと安定感のある走りを目指したというだけあって、第一印象で怖いという感情はなかった。遅いスピードでもトルクがあるのにもかかわらず、急な発進や停止のショックが少ないからだと思う。これはマスの集中により、前後のピッチングが低下するかららしい。あまり詳しいことはわからなかったが、乗ってみて"ゆったり走る楽しみをくれるバイク"だと思った。ロー&ロングのボディは、カーブなど曲がりにくいかと思いきや、思った以上に曲がりやすい。低中速域が重視されているので、カーブの立ち上がりのトルクも充分感じられた。普段クラッチ付きのバイクを運転していると、ラフなシフトチェンジで急な加速や減速をしてしまい、内心ドキドキしていることが多い私にとっては、好感が持てる乗り心地だった。ただ、参加者のなかには余裕のある追い越しができるよう、高回転域がもっと欲しいという声もあったようだ。

女の子同士だから楽しいタンデム走行

1人で走って安定感があったので、パッセンジャー用のモデルを乗せてタンデム走行にも挑戦してみた。普段、人を乗せることも少ないので、他人(しかもバイクに乗り慣れていない女の子!)を乗せるのはかなり緊張した。もちろん内心ビビっている素振りは見せなかったが……。私の後ろに乗ったモデルさんは、横部実佳さん。彼女は乗り込むとき、片足に重心をかけてバイクの上に立つようにして車体を跨いだ。一瞬、2人一緒に倒れるか? とドキリとしたが、シートが低かったので彼女が勢いをつけずに乗れたことと、私の足も彼女の体重を支えられるくらいは地面に接地していたので大丈夫だった。ドキドキしながらタンデム走行、出発だ!

走り始めると、1人で走るより重心が低くなっているので、車体は安定しているように感じた。実佳さんは、バイクの後ろに乗るのは、高校生のとき以来らしいが、ジェンマの乗り心地を聞いてみると、振動が少ないので私の運転でもぜんぜん怖くないといってくれた。前にも書いたが、ジェンマは加減即時に前後方向への揺れが少ない。また、ライダーとパッセンジャーのシートは密着感がありつつも、窮屈な感じがない。私はこれまでタンデム走行をすると、いつも発進停止のたびにパッセンジャーとヘルメット同士がぶつかっていたが、今回の試乗ではぶつからなかった。また普段、私が乗っているオフロードバイクは、足がギリギリつま先立ちなので、後ろを向くとバランスをくずしてしまうから会話するときでも正面を向きっぱなし。それが、顔を見て会話できることに、ちょっと感動してしまった。さすが2人乗り用バイクというだけはある。

約20分くらい、2人でお台場周辺をグルグル回って試乗会場へ戻ることに。実佳さんに感想を聞いてみると、「普通バイクは、後ろに乗っていて怖いと思ったけど、ビッグスクーターならノンビリ座ってられるからいいですねぇ。私も免許取って運転したくなりました」と笑顔で話してくれた。怖かったと言われたらどうしようかと思っていたので、ヨカッタヨカッタ。

発表会と試乗会に参加して感じたのだが、スズキのジェンマに対する思い入れはハンパじゃない。スズキは、日本の駐車場問題など二輪車に対する厳しい状況や、ビッグスクーターは子供の乗り物というイメージなど、スクーター文化が根差していないという。目標としては、イタリアのようにスクーターが生活の一部になるようにジェンマ旋風を起こしたいと営業の方が笑いながら話していた。しかし、その目は本気だったように思う。ジェンマは、7月28日から発売が開始されたが、今月から全国5都市で約3ヶ月に渡り、体験試乗会を開催する。スズキが本気で作ったバイクを一度試乗してみてはどうだろうか?

乗り込むとき、バランスを崩しそうになり内心ドキドキ。ついつい乗り降りには縁石を利用してしまう

足着きが良いので、パッセンジャーと顔を見ながら話せることに感動。もちろん、話すことに気を取られたら危険だ

リヤシートの段差が低いので、通常のバイクよりライダーとパッセンジャーの身長差は少ない

バックレストにグラブバーが装備。握りやすい形状になっており、パッセンジャーの安心感を高めるという

ゆったりとした乗り心地で、笑顔の実佳さん。だけどライダーは緊張してます

パッセンジャー役を務めてくれたモデルの横部実佳さん。普段はレースクイーンとして活躍しているという

津島寿夫 ジェンマ、チーフデザイナー。こだわって作ったデザインについて、熱く語っていただいた

撮影:平 雅彦(WINDY Co.)
レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)