『猟奇的な彼女』、『僕の彼女を紹介します』などの作品で、日本でもよく知られたクァク・ジェヨン監督の最新作は、キャスト、スタッフ、ロケ地ぜーんぶ日本の「日本映画」だった。

『僕の彼女はサイボーグ』というタイトル、そしてこの監督と聞くと、前2作を見た人なら「ああ、どうせどこかで見たようなファンタジー風味のぬるいラブコメだろ」と思うかも知れない。オイラもそう思った。だが実際見てみたら、結構凝った時空SFモノだったんでちょっとびっくり。まあ「どこかで見たような」ではあったけどね。

主役の「サイボーグ」を演じるのは綾瀬はるか。これがうまくハマっている。前から綾瀬の妙にハキハキした演技が気になってたんだけど、なるほどこういう非生物の役やらせるとそれっぽく見えるんだ。それにしてもタイトルの用語間違いはどうかと思う。基本的には人工生命体なんだから、サイボーグじゃなくてアンドロイドだろ? ちなみに、劇中で綾瀬演じる"サイボーグ"は、自分のことをロボットと呼ばれるのはイヤだそうで「ガイノイド」と名乗っている。

どこを見ているのかわからないサイボーグがぴったりハマった綾瀬はるか

ストーリーは、冴えない大学生のジローを中心に進む。毎年一人寂しい誕生日を迎える彼の前に、突然謎の少女が現れる。彼女は1日かけてジローを引っ張り回したあげく、これまた急にいなくなってしまう。そしてきっかり1年後の誕生日に、再び同じ容姿の少女が現れるが、彼女は未来のジローが差し向けた人造人間だった…。この登場シーンが「ターミネーター」そっくりなんだけど、唯一最大の違いが、綾瀬は服を着てるってところ。わかってねーなあ(笑)。

さて、もう一人の主人公 ジロー役は小出恵介。この配役もウマイ。もともとイマイチ頼りない役が多い人だが、ドラマの演技でもどこか浮いている印象があって、何だろうと思っていたら、この映画を見て納得。韓流ドラマの優男と同じ空気だったんだ! 「猟奇的な彼女」の主役の人ともカブるイメージあるね。

『恋空』の優しい大学生役でもおなじみ、小出恵介

そう思って見はじめると、この映画、監督以外は日本製なのに、見事に韓流に仕上がっていることがわかる。舞台は一応近未来の東京という設定らしいけど、東京ではロケしていないこともあって、日本であって日本でないような無国籍感たっぷり。カメラワークも日本映画ではあまり見られないタイプだ。クァク監督お得意の二人の周りをグルグル回すショットも健在だし、向き合った二人の一方の背中をなめつつ、もう一人をどアップにするカメラアングルを多用しているのも独特だ(オイラはこの撮り方を「冬ソナアングル」と呼んでます)。それから、その手のマニアの方にはリアルな「ゲロ描写」も必見です(笑)。

デートもなんだかぎこちなく……

ストーリーをもう少し紹介しておこう。「なんでサイボーグを差し向けたのか」というのが年老いた未来のジローのホログラム(目から映写光線、古典的ですな)によって語られるのだが、要するにこのジロー、ロボットとタイムマシン作れるくらい金持ってる以外は大変悲惨な人生を過ごしたので、それを何とかするために、過去の自分にサイボーグ送ったとのこと。その「悲惨」の中にはもちろん「彼女ナシ」というのも入ってて、サイボーグはボディガード兼恋人として使えるように、思い出の彼女に似せて作ったという。

部屋の雰囲気もどこか無国籍風だ

いくら好きな人に似せて作っても、感情のないロボットを恋人代わりにするのはちょっとキツイ。なので、綾瀬サイボーグには、徐々に人間的感情を学習する仕掛けが入ってるという設定なんだけど、これが表面的にはわかりにくい。一方、一緒に暮らしているうちに情が移ったジローは、反応の乏しいサイボーグに次第にいらだちはじめて……という展開。この2人だけの「恋愛」ドラマに、巷で起こるさまざまな出来事をからめていくのだが、主人公と関係ない事件にサイボーグを無理矢理出撃させるエピソードが多い。このあたり、もうひとヒネリほしかった。

クライマックスは東京を襲う大地震のシーン。さすがにスケール感はハリウッド映画の3割引きくらいだけど、かなり頑張ってる。見たところミニチュアを使った引きの特撮を使わず、ほとんどセットで表現しているのがおもしろい。これも日本っぽくない撮り方だね。あと、チョイ役でいろんな人が出演しているのも見どころかな。それにしても竹中直人は友情出演多すぎ。どんだけ友情に厚いんだよ!

最後にちょっとだけネタバレすると、最初の誕生日に現れた彼女は一体だれ? というのが物語の鍵。タイムループが3回くらい起こるので、記憶力に自信ない人は注意して見ていないと、訳わからなくなるよ。もちろん細かいアラを探すといろいろ矛盾があったりするけど、それをひっくるめて楽しむのもアリな一本です。

『僕の彼女はサイボーグ

彼女は、僕を"運命"から救うために未来からやってきた、サイボーグだった。

「君を、未来の僕が作って送ったって言うのか? じゃあ、君はロボットなのか!?」
「ロボットっていう言葉は使わないで。」

20歳の誕生日、突然目の前に現れた理想の"彼女"。
しかし、"彼女"は普通の女の子ではなかった……。

出演:綾瀬はるか / 小出恵介
監督:クァク・ジョヨン

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

5月31日(土) サロンパス ルーブル丸の内他 全国松竹・東急系にてロードショー

(C) 2008 「僕の彼女はサイボーグ」フィルムパートナーズ