キャンペーンのロゴ

元サッカー日本代表の中田英寿が代表をつとめる「TAKE ACTION! 2008」実行委員会は15日、記者団を前に個々人が環境問題や貧困・紛争が存在する地球の現実を知り、問題意識を持ってアクションを起こすきっかけづくりを目指した「+1(プラス・ワン)」キャンペーンの実施を発表した。記者発表会には、日焼けした顔に、試合中には見られなかった穏やかな表情をたたえた中田氏が登場した。

スーツに身を包み、真摯に記者団の質問に答える中田氏

NAKATAを動かす旅の記憶

同キャンペーンのテーマは、「なにかできること、ひとつ。」。このテーマの意味するところについて中田氏は、「現役を引退後、約2年にわたり世界中を旅した。ひとつの国を旅する時に、なるべくその国の光と影の両方を見るようにこころがけたことで、自分が持っていた(既成概念)に固執することなく、見たものをそのまま受け入れることができるようになった。自分の目で、日本には伝わっていないさまざまな現実を見て、現地で出会った友達に笑顔でいて欲しいという気持ちが芽生えた結果、地球の未来のために自分ができることをしたいと思うようになった」と自身のブログ上で語っている。

旅行中の中田氏

記者発表会ではさらに、「地球規模のさまざまな問題は複雑に絡まりあっていて、何をすれば解決するという『正解』はない。それなら逆に、どんな小さなことでも解決につながるんじゃないかと思った。」と述懐。そして、「一個人として放浪の旅に出発したけれど、思った以上にサッカー選手NAKATAとして知ってくれている人が多かった。僕にとってサッカーは生涯を一緒に生きていく兄弟のようなもの。だから、サッカーを通して、『まずは現実を知り、考えることから始めよう』というメッセージを発信し、一緒にアクションする仲間を増やしたい」と思い至ったとしている。中田氏自身の「なにかできること、ひとつ。」として、同キャンペーンを立ち上げたと説明した。

サッカーの試合で"きっかけ"をつくりたい

発表された同キャンペーンの「アクション」は2つ。1つめは、G8洞爺湖サミットの開幕日が7月7日の七夕であることにちなみ、地球の未来のためにできることを宣言した短冊を集める「+1 TANZAKU」(プラス・ワン・タンザク)だ。15日より、専用サイトにて募集をしている。現在、六本木ヒルズや横浜、北海道で関連イベントが予定されているとのこと。発表会では、キャンペーンに関わる団体の主要人物たちから集まった短冊が披露された。

中田氏の短冊

横浜市長 中田宏氏

独立行政法人 国際協力機構(JICA)

そしてもう1つが「+1 FOOTBALL MATCH(プラス・ワン・フットボール・マッチ)」。久々に"代表選手"として中田氏も出場する。対戦カードはJAPAN STARS vs. WORLD STARSで、それぞれ釜本邦茂氏(元日本代表)とジョゼ・モウリーニョ氏(前チェルシーFC監督)が監督に迎えられた。出場選手は現在中田氏がよびかけ人となって集めており、発表は直前となるが両監督によれば、「ワクワクするような選手ばかり(釜本氏)」「素晴らしいスタープレーヤーたち(モウリーニョ氏)」とのこと。6月7日14時、横浜の日産スタジアムにてキックオフとなる。チケット販売の詳細は「TAKE ACTION! 2008」公式サイトに記載。

なお、同試合はあくまでも集まった個々人に地球で起きている現実について"気付き"を与えることを目的としており、入場料を寄付するというような"チャリティーマッチ"ではないとのことだ。運営事務局長の上窪政久氏はまた、「環境に配慮した運営やカーボンオフセットを予定しているが、環境だけを問題にする"エコマッチ"でもない」と念を押し、一時期世間をにぎわせた「ホワイトバンド」が、本来の主旨が情報として行き渡らずメディアバッシングを受けたという反省をにじませた。

最後に、読者へのメッセージを求められた中田氏は、「(イベントに)来て楽しんでくれるだけで、僕らは『集まってくれた! 』と(励みに)思える。その中から、自発的に何かやりたいと思ってくれる仲間が1人でも増えれば」と希望を語り、記者発表会を締めくくった。今なおカリスマ的人気を誇る中田氏が、様々な体験を経てマインドチェンジした結果、地球規模の問題に取り組む旗振り役としての姿勢を見せたことに、未来への希望を感じる記者発表会だったと言えるだろう。