ルネッサンス屈指の女神「ウルビーノのヴィーナス」が500年の時を越えて日本に初上陸、3月4日から東京・上野の国立西洋美術館で公開されている。それに先立ち3日、同美術館では高円宮妃久子さまご臨席の下、「ウルビーノのヴィーナス」展開会式と内覧会が盛大に催された。美神ヴィーナスを主題にした絵画・彫刻・陶器・装身具・家具・書物など約80点を一堂に集め、ヴィーナスの系譜を辿るという一大文化イベント。美の女神たちが大集結した会場に、一足早くご案内しよう。
高円宮妃殿下はじめ世界のVIPが列席した開会式
春らしい穏かな陽気に恵まれた3月3日。東京・上野の国立西洋美術館では、高円宮妃久子さまご臨席の下、「ウルビーノのヴィーナス─古代からルネサンス、美の女神の系譜」展の開会式が行なわれた。式典には駐日イタリア大使夫妻はもちろんのこと、各国大使級のVIPが多数顔を揃え、イタリア美術の至宝への関心の高さをうかがわせた。
主催者の一人として挨拶に立った読売新聞社の内山斉社長は、現在ではイタリア政府が「ウルビーノのヴィーナス」の国外持出しを禁止したことを紹介。この作品が海外で展示されるのは、これが最初にして最後になるだろうとし、今回の展覧会がこの名画を日本で鑑賞できる二度とない貴重な機会であることを強調した。
また、マリオ・ボーヴァ駐日イタリア大使は、今回の展覧会は2007年に開かれた「日本におけるイタリアの春・2007」に連なるものであり、来年には「イタリアの秋・2009」を開催すると明言。「ウルビーノのヴィーナス」展を含む一連の文化イベントは、日本とイタリア両国の文化交流の頂点となると挨拶した。
最後に高円宮妃久子さまがテープカットを執り行い、5月18日まで約2カ月半に及ぶ「ウルビーノのヴィーナス」展の幕が切って落とされた。その後、妃殿下は国立西洋美術館の青柳正規館長の案内で会場内を鑑賞。フィレンツェのウフィツィ美術館が誇る至宝「ウルビーノのヴィーナス」の美しさを堪能された。
美の女神が大集結! 日本初の本格的ヴィーナス展
ヴィーナスといえば、まず「ミロのヴィーナス」やボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」が思い浮かぶ。だが、古代から愛と美の女神として神話に登場するヴィーナスは、いつの時代も数多くの芸術家たちの霊感を刺激し、様々な姿のヴィーナスを生み出してきた。本展では、ヴィーナスはいかにして誕生し、さらに復活、発展してきたか、その系譜を5つのテーマに分けて辿る。
会場入口を入って第一の展示室は「ヴィーナスの誕生─古代ギリシアとローマ」。前2千年紀中頃、オリエントで信仰された女神イシュタルがギリシア世界に広がりアフロディテ=ヴィーナスとなる。初め着衣姿で表された女神は、前4世紀に初めて裸体となり、古代ローマでは泉や浴場の彫刻として流行した。本展でもっとも古いヴィーナスが描かれた水瓶(前420-400年)から彫刻、カメオ、銀杯、鏡など古代ギリシア・ローマのヴィーナスが並ぶ。中でも石膏像「メディチ家のアフロディテ」と、ポンペイから出土した大理石像「角柱にもたれるヴィーナス」の圧倒的な存在感が目をひく。
さらに進むと第二の展示室「ヴィーナス像の復興─15世紀イタリア」だ。中世に入りキリスト教によって美術から姿を消したヴィーナスは、ルネッサンスの到来とともに復活する。美や愛を理想とする当時の考え方から、ヴィーナスは時代を象徴する存在となった。この時代、人体の美しさへの再認識から、ヴィーナスの裸体表現が増えた。展示室の一角を占めるロレンツォ・ディ・クレーディの絵画「ヴィーナス」の持つ肉感的でしなやかな姿は、まさにヴィーナスの姿そのもの。