前編で、Intel Core 2 Extreme QX9770とIntel X48チップセットについて簡単にご紹介したが、根本的な問題として、「本当にDDR3に移行する必要はあるのか?」という疑問が生じる事は否めない。1600MHz FSBにしても、「では既存のX38では動かないの?」というと、公式はともかく、実際には1600MHz FSBをサポートしたX38マザーボードが存在する以上、微妙なところだ。そこで、実際に1600MHz FSBに対応したDDR2のX38マザーボードを使って、このあたりを少し検証してみたいと思う。

あらためてASUSTeK「Maximus Formula Special Edition」

さて、今回レビューに使ったのは以前Core2 Extreme QX9650のレビューにも借用したASUSTeKの「Maximus Formula Special Edition」である。前回は軽く流してしまったので、今回はこの製品の特徴をもう少しご紹介したい(Photo01)。電源周りは同社のハイエンド製品の流れを汲む構成(Photo02)だが、CPUソケットとDIMMスロットの間にEPU(Energy Processing Unit)と呼ばれるチップ(Photo03)が搭載されているのも特徴だ。ASUSTeKの説明によれば、このEPUはVR(Voltage Regulator)の動作状況をデジタルでモニターして最適化を図ることにより、全自動の場合でも平均7%程度、同社のAI Gear 3を併用すると最大で58.6%もの省電力化が図れるとしている。実際に搭載されているのはAnalog DevicesのADP3228であった(Photo04)。PLLにはICS(現IDT)の9LPRS918HKL(Photo05)が搭載されていた。

Photo01:水冷用のバンジーが特徴的なMaximus Formula。ただ今回は常に空冷で使ったが、特に問題はなかった

Photo02:前回紹介したDX48BT2ですら5phaseなのに、こちらは8phase。もっともASUSTeKは以前からハイエンド製品に8phaseを採用していたから、今更珍しい訳では無いが、オーバークロック動作時などには供給する電源の変動がシビアに効くから、やはり安心できる。まぁその分コストは上がるのだが

Photo03:わざわざシールを貼るのは、シリアルを隠したいというよりはEPUを搭載していることを示したいのであろう

Photo04:このADP3228はAnalog DevicesのWebサイトに載ってないあたり、標準品ではないようだ。内部的には8bitマイコンにA/DコンバータとSMBus I/Fあたりを組み合わせたものと思われる

Photo05:製品カテゴリとしてはここに属するが、この型番の製品は存在しない。ただこのICS9LPRS918HKLはASUSTeKのみならずIntelやGIGABYTEなども利用しており、X38の標準的なPLLだと想像される

オンボードデバイスは比較的控えめで、GbEにはMarvell 88E8056×2が、IEEE1394にはVIA VT6308Pがそれぞれ搭載されている程度(Photo06)。ATAPIに関してはJMicron JMB368が搭載されている(Photo07)。

Photo06:88E8056はそれぞれPCIe x1レーンで、VT6308PはPCIで接続されている

Photo07:これがちょっとだけ意外。他の製品だと、例えばJMB366を使って、PATAのほかにeSATAを搭載するといった事をやっているだけに、PATAのみのJMB368を選ぶのはややコンサバな気が

またサウンドに関しては、オンボードのバックパネルには用意されず(Photo08)、拡張カードの形で提供されるのはちょっと独特だ(Photo09)。Audio Codecはこの拡張カードの中に搭載され(Photo10)、PCI Express x1レーンで接続される形態となっている。

Photo08:厳密に言えば、S/PDIF端子のみバックパネル(PS/2キーボードコネクタの右)に常設されている。S/PDIF端子を使うなら、アナログサウンド端子は要らないという事なのだろう

Photo09:HDA Codecとアナログ部品がシールドの中に納まる。電源を繋ぐと、シールドの上に"SUPREMEFX II"という文字が青く光るという凝った作りである

Photo10:搭載されるCodecはAnalog DevicesのAD1988Bだった

ハイエンドというかオーバークロック向け機能として用意されたと考えられるのは、マザーボード下端にある電源/リセットスイッチ(Photo11)とか、ICH脇に用意されたCMOS Clearのリモート切り替えスイッチ(Photo12)である。これをEnableにしておくと、バックパネルにあるCMOS Clearスイッチ(Photo13)を押すだけでCMOSクリアが可能という、オーバークロックテスト中には非常にありがたい事になっている。他にも別体式で用意される、POSTの状態をLCDで表示するLCD POSTER(Photo14)なんてものまで付属するなど、その機能の充実振りはある種異常ですらある。

Photo11:ケースに収めずに、そこらへんに平置きして使うときには大変便利な電源/リセットスイッチ。メーカーの開発用ボードなどではしばしば見かけるが、一般的な製品ではちょっと珍しい。こちらも電源を入れると、赤(電源)と緑(リセット)に光る

Photo12:ちょっと判りづらいが、この状態だとバックパネルのCMOS ClearスイッチがEnableとなる

Photo13:S/PDIFの光コネクタの右脇に配されるCMOS Clearスイッチ。これもまた、電源を入れると緑に光る

Photo14:たしかに便利ではあるのだが……ちょっとやりすぎという気もしなくはない

余談ながら、ヒートシンクは何れもそれほど背が高くない。このこと自体は便利だが、逆にこれはフル稼働時には水冷を念頭に置いている気もする。空冷で使う場合は、満遍なく空気が廻るようなケース内の配置を考える必要があるだろう。

Photo15:バックパネルのぎりぎりまで電源部のヒートシンクが突き出しているのもちょっと特徴的。同梱されるパネルも、このヒートシンク突き出し部がパンチングされており、かなりの熱量を考慮した設計になっているようだ。とりあえずバックパネルの上には大口径排気ファンを置くのが無難に思える