カーナビをエンターテイメントの機械として選んでも楽しいものです。まずは音楽について。ラジオや音楽CDがかけられるのは当たり前ですが、HDDカーナビのほとんどは、音楽サーバー機能を備えています。HDDにはナビゲーションに必要なデータが入っていますが、空いた部分に音楽データを貯めておくわけです。機種やHDDの容量によって変わりますが、だいたい2,400曲から4,000曲程度ストックできるようです。これは相当な量です。

Audio&Visualしたい

カーナビへの音楽データの取り込みは、CD(DVD)ドライブを使って音楽CDから直接データ化するものが多いようです。パイオニアのサイバーナビシリーズのように、リビングキットを使ってパソコンから移すことが可能なモデルもあります。ただし、著作権保護のためiPodのようなポータブルオーディオからコピーできるものはあまりありません。iPod接続機能では、カーナビ側からiPodを操作し、iPodに入っている楽曲をカーナビで再生します。

音楽好きなら、よりいい音で聞きたいと考えるのは当然でしょう。音を良くする方法は昔から同じで、音の入口と音の出口までを良いもので固めることです。カーオーディオの場合、もっとも手軽で効果的なのはスピーカーをグレードアップすることです。音楽データのクオリティを上げる(ビットレートを上げる)、アンプを良いものにするなど、いろいろ方法はありますが、スピーカーほど音の違いがてきめんにわかるものはありません。

さらに音を良くするならデッドニングをお勧めします。クルマは静かになったといっても、内張りなどがビビリ音を出したり、外から雑音が入ってくることもあります。デッドニングはドアやボディに開いている穴をふさぎ、制振材や吸音材を詰めることで不要な振動や反射音を抑えます。場合によってはスピーカーを取りつける部分を補強します。これらにより中高音の切れが良くなり、低音の迫力が増します。ある程度は外部の音を抑える効果もあります。材料を買ってきて、自分で作業することも不可能ではありませんが、非常に根気のいる作業ですし、専門の業者にやってもらったほうが効果も高いようです。オーダーする場合、クルマによって費用はずいぶん違いますが、10万円ぐらいからと考えればいいでしょう。ただし、運転中にむやみに音量を上げることは、外の音が聞こえないのでとても危険です。

次は映像です。簡単に言えばテレビやDVDを見るわけですが、まずカーナビにそれらの機能が搭載されている必要があります。付いていないなら、別売のTVチューナーなどを用意します。最近のカーナビは、上位機が地上波デジタル放送(地デジ)が受信でき、その下のモデルがワンセグ対応というラインナップです。もちろん家庭用テレビと同じ地デジのほうがキレイですが、ワンセグでもテレビの内容はちゃんとわかります。

ポイントは画素数です。地デジのSD(スタンダード放送)は実効720×480ドット程度の解像度ですから、それ以上の画素数が欲しいところです。上位モデルは800×480ドット(1,152,000画素)のモニターを採用しています。480×234ドットのモニター(336,960画素)で地デジ対応のカーナビもありますが、これは映像を省略して映しているわけです。それならワンセグ放送(320×240 もしくは 320×180)で十分です。

地デジの映りを良くしたいなら、アンテナやチューナーを重視しましょう。常に移動するクルマですから、電波を確実に受け取るのは大変です。「4チューナー内蔵」といったカーナビもありますが、これは4つの番組を同時に受信するわけでなく、ひとつの番組をできるだけ多く受信して、ひとつに合成しているのです。そのぶん安定した映像が見られるわけです。

いずれにしても、ドライバーが運転中にテレビや映像を見るのは禁止されています。後部座席にモニターを追加するなど、ビジュアルはほかの乗員のための装置と割りきって搭載してください。

各メーカーの上位モデルは、地デジ+高解像度モニターが標準(写真:クラリオン・MAX8750DT)

音を良くするなら、スピーカーやデッドニングなど、アナログ部分のグレードアップが効果的(写真:パイオニア・TS-F17)

渋滞キライ、最速ルートが知りたい

さて最後は、カーナビ本来の目的であるナビゲーション機能です。HDDカーナビはもちろん、DVDカーナビでも、地図情報や検索機能は必要にして十分。リアルタイムの渋滞などの情報はVICSで得るのが主流ですが、これもほとんどが対応しています。可能なら、VICSビーコンを追加するといいでしょう。VICSの情報提供はFM電波と光・電波ビーコンのふたつが使われていますが、標準ではFM電波のみ、オプションでビーコン受信ユニットが用意されている場合が多いようです。ビーコンも受信できるようにしておけば、より高精度な渋滞情報受信が可能になり、渋滞情報を考慮したルート検索も可能になります。

そしてVICSよりも細かく道路情報を提供してくれるのが、冒頭のページで取り上げたプローブ情報システムです。ホンダの「インターナビフローティングカーシステム」、トヨタの「G-BOOK mX」、日産自動車の「カーウイングス」、パイオニアの「スマートループ」などがあります。また、一部のマツダ車、スバル車にも「G-BOOK」が搭載されています。これらのサービスは、各機能を搭載しているクルマの数で情報量が決まりますが、先行して無料サービスを開始したホンダのインターナビが一歩先んじているようです。ちなみに各メーカーのサービスは、インターネット経由で地図を更新したり、楽曲などのコンテンツを提供するといった複合的な通信サービス(テレマティクスと呼ぶ)の総称で、プローブ情報システムだけを指すものではないので注意してください。

プローブ情報システムそのものは無料でサービスを受けられるものが増えていますが、実際の利用には携帯電話を使用しますので、通信費がかかります。また携帯電話にカーナビを接続した場合のパケット通信料は、一般的には定額通信サービスの対象にはならないので注意が必要です。パイオニアの資料によると、郊外では平均94パケット、都心では平均273パケットということですから、1回の情報収集で5~20円程度かかることになります。また、各サービスはそれぞれに対応したカーナビ(クルマ)でないと利用できません。たとえばトヨタは従来「G-BOOK ALPHA」というサービスを行なっており、それに「マップオンデマンド」や「Gルート探索(プローブ情報付)が追加されて「G-BOOK mX」になりました。「G-BOOK ALPHA」用のカーナビでは「G-BOOK mX」のサービスは受けられないのです。

ユニークなのはパイオニアの「スマートループ」です。携帯電話を使ったリアルタイムのプローブ情報のやり取りだけでなく、「蓄積型プローブ」と呼ばれる、より詳細なデータをインターネット(+パソコン)を使って蓄積します。それもあって、同社のサイバーナビシリーズ(ZH099系を除く)にはインターネットになどにつなぐ「リビングキット」が付属しています。同社の楽ナビシリーズ(HR系)やZH099系は携帯電話を使ったリアルタイムプローブのみ使用できます。

もうひとつ、渋滞情報の入手とともに重要なのは地図のアップデートです。いくら情報が新しくても、地図が古くては話になりません。どこも定期的に地図やシステムの更新用データを提供しており(もしくは更新サービス)、費用は2万円から2万5000円程度のようです。また、HDDカーナビのアップデート方法としては、アップデート用のDVDなどを購入して自分で作業するものと、カーナビ(もしくはクルマ)を預けて更新してもらう方法に大別できます。預ける場合は、その期間カーナビが使えませんので、自分で作業するほうが便利でしょう。ただ、ハードディスクやカーナビのシステムはとてもデリケートですから、もしアップデート中に異常が起きると修理が必要になってしまいます。そういった意味では一長一短というところでしょうか。

注目したいのは、インターネット経由で地図を更新するサービスです。たとえばパナソニックの「SDマップ工房」は、新しくできたコンビニなどを地図に追加します。うまく通信できない場合には、SDメモリーカードを送付し、追加データを送ってもらうこともできます。さらに進化しているのは、ホンダ「インターナビ」の地図データ更新や、トヨタ「G-BOOK」のマップオンデマンドです。これはインターネット経由で新しい地図(差分)を受け取るもので、従来のDVDなどによる地図更新が不要になります。また、これらは無料でサービスされている点も見逃せません。オンラインでの地図提供サービスはまだ新しく、対応したカーナビ(クルマ)はまだ多くありませんが、今後、この方式が増えていくでしょう。         ◆ カーナビは便利で楽しい機械です。安全に楽しんでください。

トヨタのオンライン地図更新システムの「マップオンデマンド」。これは更新前

左の状態から地図を更新した画面。ちゃんと道路が完成している

インターナビ機能をもつホンダのカーナビ(写真:Gathers VXH-083CVi)

トヨタのHDDカーナビ製品(写真:NHDA-W57G)

HDDを室内で更新できるパイオニアのリビングキット(写真:AVIC-VH099)

地図のアイコンなどをオンラインで更新できるパナソニック(写真:CN-HDS700TD)