アメリカンな人たちって、ときどき本っ当にくだらないことにエネルギー使うことがあるよね。「ダーウィン・アワード」は、それを実感する映画だ。

映画のタイトルでもある"ダーウィン賞"とは、その年起こった事件のうち最も愚かな方法で死んだ人に対し、バカな遺伝子を減らしたことへの「感謝の気持ち」を表して贈られる賞だそうな。「イグノーベル賞」みたいなものか。この賞自体が都市伝説かと思ったら、なんとホントにあった! ホームページもちゃんとある。とはいえ、ここで紹介している「愚かな死に方」というのが「ホントかよ?」と思うようなものばかり。たとえば彼女の気を引こうとしてロシアンルーレットやったら一発目で大当たりしちゃった人とか、ヘリウムを吸って声が変わるのを楽しむために、巨大アドバルーンの中に入ったまま酸欠死した人等々……オマエは風船太郎か!?

「うちのガラスは割れないんだぜ」と勢いよく窓ガラスに突進、次の瞬間には木っ端微塵になったガラスと共に空に投げ出される男も登場。阿呆だ

おっと、話がそれた。「ダーウィン・アワード」は、そんなダーウィン賞受賞者のドキュメントじゃなくて、"ダーウィン賞マニア"のお話。主人公のマイケルは、血を見ると失神してしまう気の弱いプロファイラー。そのせいで追っていた連続殺人犯を取り逃がし、警察をクビになってしまう。困ったマイケルは、「ダーウィン賞」の受賞者(の遺族?)が多額の生命保険金を受けとっていることを知り、保険会社に「ダーウィン賞受賞者共通の遺伝子を見つけ出し、損失を未然に防ぎますよ」と自分を売り込む。こうしてマイケルはダーウィン賞受賞者調査の旅に出ることになった。彼はダーウィン賞とおぼしき事件を調査し、人々の死因と背景を次々と暴いていく。

マイケル役は、ジョセフ・ファインズという俳優だが……、スマン、オイラよく知りません。オタ度が高くひ弱でドジだが、天才的なプロファイリング能力の持ち主という設定なんだけど、あまりに天才過ぎて、プロファイリングというより超能力みたいに見える。ほとんど手がかりもないのに、その人の性格やら生い立ち、果ては死んだときの心理までズバリ当てるんだもん。江原啓之もビックリだ。

そしてマイケルの調査を手伝うちょっとツンデレの入った保険調査員シリを演じるのは、おや懐かしいウィノナ・ライダー! 万引きして捕まってから初めて見たよ。やたら向上心だけあって空回りするキャラを、さすがにうまく演じている。最初は「何このキモオタ」みたいな態度でマイケルに接していたのが、一緒に旅するうちに意気投合して……という期待通りの展開だ。

マイケル(左)とシリ(右)

そして、マイケルには映画学校の卒業制作を撮っているドキュメンタリーカメラマンが同行していて、物語の半分以上はそのカメラを通して見せるという凝った作りになっている。同行カメラマンがときどきマイケルの行動にダメ出ししたり、逆にマイケルたちがカメラマンにブチ切れてぶん殴ってきたりというやりとりも描かれるが、これは余計だった。監督によると、同行カメラマンは映画の観客と同じ目線で、マイケルたちにツッコミを入れている役回りだそうだ。大きなお世話だよ。

このほかショーン・ペンの弟クリス・ペン(この映画が遺作になったそうで……合掌)やジュリエット・ルイスといったクセのある面々がダーウィン賞関係者を大袈裟に演じている。さらに大物ゲストとして、ヘビメタバンドのメタリカが本人(本グループ?)役で出演しているのも話題。ゲストではあるけど、物語にとっては結構重要な役です。メタリカかあ。オイラにとっては「タモリ倶楽部」の空耳アワーの常連というイメージしかないや(ファンの人スマン)。

なお、映画には風船太郎は登場しないのであしからず。

『ダーウィン・アワード』は12月1日、シネセゾン渋谷ほかにて全国ロードショー。PG-12指定。