KOUZIROといえば、国内でも屈指のパソコン製造・販売メーカーであり、BTOパソコンの草分け的存在としても知られる老舗メーカーである。「フロンティア・オーダーメイド・システム」によるカスタムパソコンは多くのファンを獲得しており、特に、低価格でありながら性能や品質に妥協しない姿勢が高い評価を得ているようだ。そんなKOUZIROが、同社のパソコン生産拠点である「新山口工場」を報道関係者向けに公開した。

KOUZIROの「新山口工場」。BTOパソコンの生産拠点だ

KOUZIRO代表取締役社長の松本大輔氏。工場内を案内してくれた

場所は山口県山口市、自然に囲まれたのどかな風景の中に、KOUZIROの新山口工場はある。稼働は2005年6月で、現在はひと月あたりで4~5,000台のBTOパソコンを生産しているという。カスタムパソコン特有の細かなニーズに対応するため、生産にはセル生産方式を採用し、工場内では熟練した専門スタッフがそれぞれ、1台づつ全てを手作りで組み立てている。

組立前のパーツが山積みに

在庫のパーツはそれぞれが管理番号で管理されている

パーツのジャンルごとにわかりやすく区分け

Core 2やAthlon X2など、最新CPUも大量に。目の保養(?)です…

リアルタイムの情報管理システムにより、受注のあったパソコン1台分を生産するために必要なパーツリストがプリントアウトされる。チェックシートを確認しながら必要な部材をピックアップしたら組み立て工程へ

実は工場としては分業して生産するライン生産方式にも対応しているとのことだが、「普通のメーカーでは受けてくれないような要望にも対応する」という同社にとっては、やはりセル生産方式の方が効率が良いのだという。

工場はセル生産方式を採用。熟練スタッフが手作りで月産5,000台のパソコンを生産しているのだ

なれた手つきでテキパキとパソコンを組み立てていく

工場内を案内してくれた同社代表取締役社長の松本大輔氏は、「カスタムメイドでの月産5,000台は稀有な存在で、これがKOUZIROの強み」と話す。納期の短縮やコストの削減にも貢献するという、その高い生産性を支えるのは、ひとつは一貫した生産管理と技術経験の積み重ねだとされる。フロンティア・オーダーメイド・システムでは、ユーザーの注文をリアルタイムにオンライン情報として管理する情報管理システムを用いており、また、蓄積された豊富な経験に基づく技術情報の共有で、高い生産性を実現しているのだとか。

もうひとつ、月産5,000台を実現させる重要な仕組みが、「オートネットワークインストール」システムだ。ネットワークを介して専用サーバからそれぞれのパソコンにOSやソフトウェアをインストールする「ネットワークインストール」を応用したシステムで、同社では通称「ANIS(アニス)」システムと呼んでいる。

組み立てが終了したらセットアップの工程へ移る。天井から伸びるネットワークケーブルが確認できるだろうか? ANISシステムによりセットアップ中のパソコンがずらり

通常、パソコン生産の現場では、OSなどのインストール工程に、製品モデルごと個別のハードウェア/ソフトウェア構成に応じた「マスターハードディスク」を作成し、これを個別製品にコピーする手法を用いるが、ハードウェア/ソフトウェア構成が多岐にわたるカスタムメイドパソコンでは、モデルごとに作成するマスターハードディスクの種類が膨大な量になってしまい、非常に効率が悪いのだという。

この4台のサーバがANISシステムの心臓部。同社の全製品に対応するOSやソフトウェアデータが蓄積されている

専用コンソールで製品ごとのコードを設定してやれば、あとは自動でインストールが進むという寸法だ

ANISシステムでは、独自の工夫により、個別の様々なハードウェア/ソフトウェア構成を意識せず、サーバに蓄積されたOSやソフトウェア、ドライバなどを自動でインストールすることを可能としている。技術的にハードルの高い仕組みだそうで、同様の仕組みは国内ではKOUZIROのみ、世界でも導入できたのは2社だけだとか。ちなみに、同システムが実現する時間効率は「ナショナルブランドのパソコンメーカーと同じかそれ以上」(同社)と評価されているそうだ。

最後にクリーニングや梱包を行なえば完成で、後は出荷を待つのみ。ここまですべての作業が滞りなくスムーズに進む