SIGGRAPH 2007の一般展示セクションのレポートの後編では、Cellプロセッサ関連の話題を中心にお届けする。

SONYブース~PS3のようでPS3じゃないCellプロセッサ+RSXの1Uラックマウント型ワークステーション/サーバー

ソニーは、ソニー/東芝/IBMの三社で開発したマルチコアCPU「Cellプロセッサ(Cell Broadband Engine)」と、NVIDIA設計のグラフィックスプロセッサ「RSX」を搭載した1Uタイプのワークステーション/サーバーの試作品を公開した(本稿では便宜上Cell+RSX-1Uと呼称する)。

Cellプロセッサ(Cell Broadband Engine)

Cellプロセッサ搭載のワークステーションやコンピューティングボードについては、後述のMERCURY COMPUTER SYSTEMSや東芝などから発表されたことがあったが、CellプロセッサとRSXのコンビネーションが搭載されたシステムは今回が初めてになる。Cellプロセッサ+RSXといえばプレイステーション3(PS3)を連想してしまうが、今回発表されたCell+RSX-1UシステムはPS3とは異なる新設計のもの。

Cellプロセッサのブロックダイアグラム

RSXのブロックダイアグラム

搭載されているCellプロセッサとRSXはPS3のものと同一だ。CellプロセッサはPowerPC 970互換の汎用メインプロセッサ「PPE:Power Processor Element」(L1:32kB,L2:512kB)を1基と、8基の128ビットベクトル型SIMD-RISCプロセッサの「SPE:Synergistc Processor Element」を1CPUに搭載した非対称型マルチコアCPUだ。RSXはNVIDIAのプログラマブルシェーダ3.0仕様アーキテクチャベースのグラフィックスプロセッサ「GeForce 7800 GTX」をベースに、組み込み向け(PS3向け)にカスタマイズしたもの。なお、RSXは設計はNVIDIAだが、製造はソニーが行っている。

このCell+RSXというキーフィーチャーはPS3と同じだが、それ以外のハードウェア仕様は細かく異なっている。

Cell+RSX-1Uシステムのブロックダイアグラム。RSXにメモリが接続されていない点に注目したい。消費電力は400W以下に抑えたとのこと

まず、Cellプロセッサに接続されるメインメモリとなるXDR DRAMはPS3の256MBに対して4倍の1GBを搭載する。

PS3では、RSXにビデオメモリとして256MBのGDDR3 SDRAMが搭載されていたが、Cell+RSX-1UシステムではRSXにビデオメモリは搭載されない。つまり、CellとRSXは1GBのメインメモリを共有して活用する設計となっている。

その代わりといってはなんだが、サウスブリッジ(SCC:Super Companion Chip)経由で1GBのDDR2 SDRAMが実装されている。このサウスブリッジは、USB2.0,ギガビットイーサネットワーク、SATAハードディスク(160GB)などの各種周辺I/Oデバイスの統括も担当する。サウスブリッジとCellプロセッサのバス帯域はたかだか5GB/secで1GBのDDR2-SDRAMはXDR-DRAMの1/5の帯域しかないため、サブストレージ的な活用になると思われる。

サウスブリッジはPCI Express x4バスも提供し、このPCI Express x4経由での増設メモリスロットを提供している。資料によれば、ここには8GBまでのDDR2 SDRAMが搭載できるようだ(合計で10GB)。

OSはLinuxを採用。ただし、PPEだけでなく、LINUXアプリケーションから8基のSPEを活用できる仕組みを実装したとのこと。

グラフィックスAPIはOpenGL 1.5を採用。1.5ではRSXのフルスペックを引き出すことはできないので、高度なことを実現するためには拡張ファンクションを活用する必要があると思われる。シェーダ言語はGLSLではなく、NVIDIA Cgをサポートする。