お次は、質問コーナー。ファンの皆さんから矢島正明さんへ、次々と質問が浴びせられる。

細江さん「当時としてはですね、1966年の作品なんですが、実際声をあてられてて、その作品を初めて見たときはどうだったんですか?」
矢島さん「そうですね、申し訳ないんですけど、初めて見たときはなんと荒唐無稽な話だなぁと感じたんですよ。なんといってもセットはちゃちい感じがしますし、言い慣れない技術用語がたくさん出てくるわけでしょ。それをとにかく、ヨレらないで、とちらないで、言うということだけで精一杯でしたからね。僕らもうただただ、『スター・トレック』には苦しめられた(笑)。これが僕の第一印象ですよね。まずとにかく苦しかったですよね」

ここで、この頃の日本語吹き替え音声の収録現場の環境について補足しておこう。当時は、「録音はできるが編集は困難」という技術水準であったため、例えば、1本15分のロールがあった場合、それを最初から最後まで、すべての出演者がノーミスで演じられなければ、OKは出ない。一言でもトチれば、そのロールを頭まで巻き戻し、再度録音をやり直さなくてはならない。この環境が、出演する役者さんに及ぼすプレッシャーは非常に大きく、矢島さんも毎回冷や汗をかきながらの収録だったという。ちなみに、現在では、デジタル編集技術が導入され、録り直しも1フレーズ単位で即座に対応することができるようになり、また、録音当日に先だって、原音の音声入りのビデオテープと吹き替え台本が渡されることにより、あらかじめ稽古する時間的余裕も与えられる、といった形に改善されている。

石山さん「いろんな生物、エイリアンなんかも出てきますけど」
長井さん「リアルなものもあったり、ちょっと『えっ!』って言うものもあったり、非常に興味深かったですね」
矢島さん「恐いものもあれば、とっても可愛いものも出てきたりもするんですね。そんなときは、うれしくなってしまうというのはありましたね」
石山さん「やっぱり、ほっとしますか?」
矢島さん「ほっとしますね。恐いものは苦手ですから」
きん歌さん「船長なのに!」
石山さん「カーク船長!」
矢島さん「実は実は!」
山下さん「えーっと、矢島さんが役を選べるとしたら、誰を」
矢島さん「この3人の中でですか? 役者的な欲望からいえばスポックをやりたいですが、僕にとって親しみがあるのはマッコイですね。なんとなく、江戸っこかたぎみたいなところがありますからね」

矢島さんに質問するファンのお三方

ファンの質問に答える矢島さん

司会者のお二人と矢島さん

この後は、この現場に来たファンだけが体験できる驚きのコーナーが……。ぜひ、番組をご覧ください。

これが、その場面。さて、一体、何をしているところでしょう

そして、締めはもちろん、矢島さんのナレーション。

矢島さん「BS2 毎週土曜日深夜1時15分からは、『スター・トレック 宇宙大作戦』。私、カークと勇敢な乗組員たちが、壮大な宇宙で繰り広げる冒険ドラマである! さぁみんなも私と共に、人類未踏の宇宙をめざして、発進」

こうして、無事、番組の収録は終了。この後、記念写真を撮ったり、矢島さんがサインするなど、現場はなごやかな雰囲気に包まれた。

みんなで記念撮影。お疲れさまでした

サインをする矢島さん。『STAR TREK』の文字を見てとることができる