事故を起した際、頼りになるのは自動車保険です。以前、保険はどの会社でも同じ商品(保険の種類、保証内容を組み合わせたもの)ばかりで、どこの保険会社と契約してもほとんど変わりはありませんでした。しかし1998年7月の保険自由化以降、外国保険会社の参入を始め、保険の内容そのものが非常に複雑化しています。保険を確実に、安くかけるためには、ユーザーもそれなりに勉強する必要があります。

日本での自動車保険は、大きく「自賠責保険」と「任意保険」に分かれています。まずは自賠責保険から解説します。

加入が義務づけられた保険

自賠責は、正しくは「自動車損害賠償責任保険」という名で、公道を走行するすべての車両に義務づけられています。そのために「強制保険」とも呼ばれます。もしこの自賠責に加入せず走行すると50万円以下の罰金、もしくは1年以下の懲役が科せられます。違反点数は6点で、前歴なしでも一発で免停になります。保険はそのくらい重要なのです。

自賠責に加入してないと車検を受けることができません。そのためクルマや251cc以上のバイクの保険切れはほとんど起りません。可能性としては車検そのものを忘れていた場合ですが、これは保険以前の問題です。また、任意保険に入っていれば、通常なら2~3ヶ月前に保険が満了する旨のハガキが届きますので、これで車検時期を改めて確認することもできます。

保険切れが多いのは、車検の不要な250cc以下のバイクでしょう。悪気がなくても忘れていれば「無保険運行」という違反になります。ガソリンスタンドやバイクショップで保険切れを指摘されることも多いようです。忘れずに自賠責に入るようにしましょう。

自賠責の満了年月を示すシール。○の中が年、その下の大きな数字が月を表す

自賠責は保険会社や代理店はもちろん、どこのバイクショップでも入れます。250cc以下なら一部のコンビニでも大丈夫です。自賠責には継続という考え方がありませんので(毎回新規に加入する)、保険料も変わりません。もし切れていたら最寄りの取扱店で加入してください。

保険が切れているかどうかは、保険証書に記されている有効期間を確認します。車検のあるクル・マバイクは車検のシール、250cc以下のバイクの場合は、ナンバープレート脇に貼られた自賠責のシールで月までは判断できますが、これらは貼り換えられていない場合も可能性としてはあります。車種を問わず購入時、車検取得時、保険加入・更新時に保険証、車検・保険シールを確認してください。

自賠責保険の概要

自賠責は法で定められた保険のため、保険会社による違いはありません。どこと契約しても同じです。新たにクルマやバイクを購入する場合、そのショップが契約している保険会社と自動的に契約することが多いようです。しかし別の保険会社にしても問題ありません。

お薦めなのは任意保険と同じ会社で自賠責に入ることです。補償が必要になった場合、まずは自賠責が使われ、それで足らない分が任意で支払われるのですが、保険会社が同じなら窓口はひとつで済むからです。

車検のあるクルマやバイクは、車検に合わせて2年分の自賠責に加入しますが、自賠責には24ヶ月と25ヶ月があります。これは車検が切れた後での車両の移動を考えたものです。車検切れでも仮ナンバーを取れば公道を走行できますが、その場合でも自賠責は必須です。その余裕をみて25ヶ月の自賠責が用意されています。もちろん24ヶ月の自賠責でも問題はありません。また25ヶ月の自賠責に入っている場合、次回はその満了日の翌日から24ヶ月分の自賠責に加入すれば、1ヶ月長いという余裕はそのまま引き継げます。

また、3年(36ヶ月・37ヶ月)の自賠責は、新車購入時に利用します。新車は最初の車検まで3年あるため、それに合わせて用意されています。1年(13ヶ月・12ヶ月)の自賠責は1・4ナンバーの1年(毎年)車検に合わせたものです。二輪車の250cc以下で4年(48ヶ月)、5年(60ヶ月)という長い自賠責が用意されているのは、車検に合わせる必要がないためです。期間が長いものは保険料が割安になっていますので、そのバイクを手放すつもりがないのなら、長い自賠責の加入を検討してもよいでしょう。

保険料は以下の表のとおりです。保険会社や地域による違いはありません(沖縄・離島を除く)。ただし自賠責保険は数年後に国からの補助がなくなるため、現在段階的に値上げされているところです。来年も少し上がるはずです。

自賠責保険の有効期間中に車両を廃車にした場合は、保険料の差額が返還されます。これは各保険会社で手続きが必要です。買い替えなどで売却した際は、自賠責は解約せず、そのまま車両に付けておくのが通例です。自賠責は名義人が替わっても使用できるためです。売却の際は自賠責(車検)の残っているぶん買い取り価格が上乗せされ、ショップは次の購入者からその分をもらうことが多いようです。ちなみに中古ショップで「車検2年付き」などと書かれたものは新たに車検を取得するという意味なので、自賠責も改めて加入しなければなりません。

自賠責保険が補償するのは対人のみで、相手が死亡の場合最高3000万円、傷害で最高120万円です。死亡時には数億円が請求される現在の状況から見ると少なすぎ、とても間に合いません。もちろん対物や車両(自車)は対象外です。そこで以下で述べる任意保険が重要になります。

表1:自賠責保険料
※単位:円
契約期間
車種 60ヵ月 48ヵ月 37ヵ月 36ヵ月 25ヵ月 24ヵ月 13ヵ月 12ヵ月
自家用乗用自動車 44410 43390 31880 30830 19090 18020
軽自動車(検査対象) 35510 34720 25800 25000 15900 15070
自家用小型貨物自動車 26790 25940 16420 15550
自家用普通
貨物自動車
積載量2t以上 96800 93240 53170 49530
積載量2t以下 62310 60070 35060 32790
二輪車 250cc以上 28260 27650 20860 20240 13300 12670
126~250cc 28000 23590 19070 14460 9760
125cc以下 17510 15100 12650 10140 7580
※2007年4月1日以降始期契約(沖縄・離島を除く)

※文字が青い部分は新車登録時用です。更新(継続)の場合は黒い文字の部分になります。

※自賠責保険料は現在のところ、毎年少しずつ値上がりしています。

この表は2007年4月1日からの保険料金です。

表2:自賠責保険の補償限度額
損害の範囲 支払い限度額
死亡 逸失利益、葬儀費、慰謝料(本人・遺族)など 3000万円
傷害 治療費、休業損害、慰謝料など 120万円
後遺傷害 逸失利益、慰謝料など 4000万円(1等級)~75万円(14等級)

※自賠責保険は加入者の年齢や車両などに関らず、同じ条件で補償されます。

※この表は、損保ジャパン社の等級表です。他の保険会社では異なる場合があります。

※1年間無事故であれば翌年は等級がひとつ上がり、事故を1回起せば3等級下がります。事故を2回起せば6等級下がります。

※「6F等級」「7F等級」は、2年目以降に当てはまります。

※初めての契約時には「6S等級」となり、担保年齢によって割引率が異なります。

※たとえば「21歳以上担保」で加入した場合、初年度は10%割増ですが、1年間無事故であれば翌年は「7F等級」となるので20%割引きになります。

※すでに契約している保険が「11等級」以上で、2台目を契約する際は、「7S等級」から始まります。