ホンダの新型「ヴェゼル」に試乗してきた。実車を見て、乗り込み、運転してみた結果、ヴェゼルは競合ひしめくコンパクトSUVの世界で全く見劣りしないどころか、いくつかの点ではライバルたちに差をつけていることがわかった。どこがどうよかったのか、レポートしていきたい。

  • ホンダ「ヴェゼル」

    ホンダの新型「ヴェゼル」に試乗!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

2013年にデビューしたホンダのクロスオーバーSUV「ヴェゼル」が2代目へとフルモデルチェンジを遂げ、2021年4月23日に発売となった。事前受注開始からの人気は上々で、累計受注はすでに2.95万台に到達。これから注文しても手に入るのは早くて今年10月、「PLaY」というグレードは来年になるそうだ。

そんな新型ヴェゼルに山梨県の山中湖畔で乗ることができた。ハイブリッド(e:HEV)車とガソリンエンジン搭載車の両方に試乗したのだが、今回は売れ筋の「e:HEV」搭載モデルについてレポートしていきたい。

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  • 新型「ヴェゼル」にはガソリンエンジン搭載の「G」とハイブリッドの「X」「Z」「PLaY」という計4種類のグレードがある。価格はガソリンが227.92万円~249.92万円、ハイブリッドが265.87万円~329.89万円。本稿の写真は全て「PLaY」だ

選びたくなる! 「PLaY」の上質感

「e:HEV」はホンダご自慢の2モーターハイブリッドシステム。小型車「フィット」で初めて採用し、今回のヴェゼルが2台目となる。試乗したのは2トーンのボディカラーに専用装備を満載するトップグレード「PLaY」だ。

ボディカラーは「プレミアムサンライトホワイト・パール & ブラック」。光の角度によっては少し青みがかったように見える白にブラックのルーフという組み合わせは高級感にあふれ、とても素敵だ。ちょっとボルボ車に似た北欧的でクリーンなスタイルにより、同じカテゴリーのライバルたちにかなり差をつけた格好である。

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  • ボディサイズは全長4,330mm、全幅1,790mm、全高1,590mm、ホイールベース2,610mm。数値的には先代モデルとほとんど変わらないのに、ずいぶんと大きく立派になったように見えるのは、ボディデザインを丸っこくて前傾した形状から四角い水平基調へとガラリと変更したからだろう

インテリアはボディカラーと同じく2トーン仕様。コンビ表皮のシートは中央がグレーのファブリック、サイドがクリームがかったホワイトのプライムスムース(合皮)という仕上げだ。ドアの内ばりやダッシュボードなども同じ2トーンで雰囲気は上々。オレンジ色のバーミリオン塗装を施したシフトノブ周りがいいアクセントになっている。

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  • 「PLaY」の内装。フロントやサイドの見切りのラインが一直線なので、どの席からも視界がいい

「Z」と「X」はブラック一色のシンプルな内装(上質ではある)なのだが、ちょっと高価なPLaYを選ぶ理由として、インテリアには十分な説得力があると感じた。さらにいうと、地味なブラウン系や派手なオレンジ系の2トーンを採用したライバル車と比べても、ヴェゼルは上品だと思う。

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    シフトノブ周りのオレンジがいいアクセントになっている

室内は、四角いボディ形状のおかげで左右の幅にゆとりがあり、後席の足元も先代より35mm増えて相当な余裕がある。さらに頭上には、PLaYに標準装備となる「パノラマルーフ」があるので、乗員全員が明るい室内を満喫できる。ルーフに採用した「Low-Eガラス」はIRカット(遮熱)/UVカット機能付きなので、真夏でも日差しの熱を50%カットできる。それでも暑かったら、エアコン吹き出し口のダイヤルを「そよ風アウトレット」にすれば、頭上に空気の幕ができて、室温を涼しいままに保てると開発担当者が教えてくれた。

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  • 左が「パノラマルーフ」、右がエアコンの吹き出し口。エアコンのダイヤルを上に合わせれば「そよ風アウトレット」になる

ホンダ独自の「センタータンク方式」により、リアシートはダイブダウンやチップアップといったレイアウトが可能となっているので、長いものや背の高いものも簡単に積み込むことができる。テールゲートはキックモーションで開閉できる電動のハンズフリータイプで、予約クローズ機能も付いている。こちらも、同じクラスでは採用が少ない機能だ。

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  • リアシートは「ダイブダウン機構」を採用しているので、広くてフラットな荷室を活用できる。「チップアップ機構」(右の写真、左側の座席)を使えば背の高い荷物も積み込めそうだ

「e:HEV」の走りは

PLaYが搭載する「e:HEV」は、最高出力106PS(78kW)/6,000~6,400rpm、最大トルク127Nm/4,500~5,000rpmという比較的高回転型の水冷直列4気筒DOHCエンジンに最高出力131PS(96kW)/4,000~8,000rpm、最大トルク253Nm/0~3,500rpmの走行用モーターを組み合わせ、これに発電用のモーターを搭載して前輪を駆動する(ほかのグレードではAWDが選べる)。システム的には同社のコンパクトハッチ「フィット」と同じだけれども、エンジンやモーターの出力は大きなSUVボディに合わせてパワーアップしている。

試乗日は嵐のような強い雨風で、道路はヘビーウェットの状態。山中湖には大きな白波が立っていたほどだ。そんな中でも、走り出してすぐ「おおっ」と声が出た。ヴェゼルは予想していたよりも遥かに静かで滑らかな加速を見せてくれたのだ。

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    どしゃ降りの雨の中、静かで滑らかな加速を見せる新型「ヴェゼル」

ロードノイズはしっかりと遮断され、最低地上高が高いので水跳ねの音もあまり気にならない。路肩にたまった10センチほどの深い水溜りにも、気にせず入っていける。それでも、水溜りによってタイヤの抵抗が増えた場面や、わずかな上り坂などでアクセルを踏み込んだ時には、ちょいちょいとエンジンが始動していたようで、メーター左側のエネルギーフローに表示される電気の流れはブルーになったりグリーンになったり、さらに方向も頻繁に変わっていた。

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    メーターパネルの左側にエネルギーフローを表示させておけば、エンジンの動きや電気の流れなどが把握できる。制御はかなり細かいようで、走っていると表示がころころ変わっていた

ただ、エンジンが始動してもホンダ製のその音は静かで心地よく、走り自体はモーターで走っているので滑らかなままだ。ホンダのいう、「EVドライブ」と「ハイブリッドドライブ」をシームレスで切り替える“電動感”の高まった走り、というのはしっかりと伝わってきた。

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    「ヴェゼル」の「e:HEV」は、状況に応じて3つの異なる走り方を使い分ける。具体的には、エンジンを停止させたままバッテリーの電力でモーターを回して走る「EVドライブ」(発進時や街中など)、エンジンを発電に使う「ハイブリッドドライブ」(力強い加速時など)、エンジンとタイヤを直結させる「エンジンドライブ」(高速クルーズなど)の3つを切り替えながら走ってくれる

シフトレバー手前にあるドライブモードスイッチで選べる走りは「ECON」「ノーマル」「スポーツ」の3つ。シフトレバーを下端まで下げれば、ほとんどシングルペダルでクルマを操作できる「Bレンジ」に入るが、減速量はパドルシフトを使って4段階で調節可能だ。最も減速量の強い状態でアクセルオフを試してみると、それなりにスピードは落ちたものの、日産自動車「キックス」ほど減速Gは高くなかった。

サスペンションは少し硬めで、路面の悪いところではコツコツと軽いショックが伝わってくる。ただし、角が取れているので嫌な感触ではないし、そのおかげでコーナーではほとんどロールせずに車体が向きを変えてくれるので、走り屋さんには好ましい特性なのではないだろうか。試乗後にそのあたりを担当者に聞くと、先代のサスが結構硬めのセッティングだったので、乗り換えのユーザーに違和感が出ないような足回りのチューニングを新型にも施したとのこと。このあたり、状況によっていずれは変更があるかもしれない。

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    足回りは少し硬め。先代「ヴェゼル」から乗り換えても違和感が少ないはずだ。「PLaY」の標準タイヤは225/50R18のミシュラン「プライマシー4」

山中湖ICから乗った自動車専用道路の東富士五湖道路では、アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持システム(LKAS)を組み合わせた追従走行を試してみた。新型ヴェゼルが搭載する運転支援システムの「ホンダセンシング」は、イスラエルのモービルアイから調達する最新の単眼フロントワイドビュー(約100度)カメラと画像処理能力がアップしたチップによって性能が進化。雨天でもヒーターがカメラの曇りを防止してくれるので、試乗当日のような悪天候でも、認識能力が間違いなく上がっているのがわかった。

制限速度の70km/hでは前走車をしっかりと捉え続け、路面が上下にうねりつつS時を描くようなシチュエーションでも走行ラインをきちんと車線内にキープするので、安心して使うことができる。一般道では車線だけでなく、砂利や草などの道路境界を認識できるとのことなのだが、さすがにこの悪天候。見極めが難しかったようだ。

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    ACC関連はステアリング右側のボタンで操作する

ちなみに、高速クルージングの状態では、エンジンとホイールがクラッチによって直結し、エンジンの力だけで効率のいい走りができる「エンジンドライブ」に切り替わるのもe:HEVの優れた点だ。

2時間ほどの試乗を終えると、燃費のメーター表示は15.6km/Lとなっていた。WLTCモードのカタログ値24.8km/Lとはかなりの差がついたが、テストで加減速を繰り返したり、撮影のためにあちこち移動したり、路上では深い水溜りを頻繁に通過したりしたことを考えると、まずまずという数字かも。ガソリンモデルの走りや、ヴェゼルが新たに採用した車内での“お楽しみ”装備については、また別稿でお伝えしたい。

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