元国税職員さんきゅう倉田です。好きなた作業は「棚卸し」です。

「毎日大学行ってるの?」「大学どう?」とよく聞かれます。

1年生なので、もちろん毎日大学に行っていて、平均すると1日三コマの授業を受けています。上記の質問をくれた人も1年生の時はそれくらい忙しかったはずですが、卒業すると忘れてしまうようです。仕事の依頼も午前中に集中していて断らざるをえません。

大学生活は楽しい。授業も興味深いし、クラスの仲間は賢く、学びを与えてくれます。昼休みも空きコマもずっと勉強していて、その環境もまさしくぼくの求めていたものです。

20年前に日本大学に通っていたときは、空きコマどころか授業をサボってまでパチスロに興じるクラスメイトがいました。

さて、東大の授業では金融リテラシーを学ぶことができます。ぼくにとっては既知のことが多いけれど、稀に心を揺さぶる情報と出会えます。今回は、インサイダー取引について。

金融商品取引法を知ろう

主なもの

不正行為の禁止 157条
風説の流布、偽計、暴行、脅迫の禁止 158条
相場操縦行為等の禁止 159条

相場を変動させ、それが自然であるように他人を誤解させるなどして自己の利益を図ってはいけません。

インサイダー取引の禁止 166条、167条
未公表の重要事実の伝達等の禁止 167条の2

上場会社の関係者が内部情報を公表前に外部の者に伝達することで利益を得させることは禁止されています。それだけでなく、内部情報は伝えずに取引をするように薦めることも禁止されています。

インサイダー取引規制の「重要事実等」とは株価に大きな影響を与えると予想される情報、例えば、会社分割、合併、新商品の開発、公開買付け(TOB)、巨額の架空売上などです。

多くの投資家が公平な取引をしているのに、一部の人間だけが不正な方法で情報をつかんで取引するのは、不公平です。しかし、なくならない。個人だけでなく、証券会社の不正が明らかになることもあります。

公募増資インサイダー事件

公募増資とは、新しい株式を発行するに当たり、不特定かつ多数の投資家に対して取得の申し込みを勧誘すること。SMBC日興証券より引用※2023年5月5日閲覧

公募増資が行われると株価は下落することが多い。だから、その株を持っている人は、株価が下落する前に売りたい。しかし、事前に公募増資の情報は入ってこない。公募増資が発表されてから株価が動きます。

そのはずなんだけれど、実際には発表の数日前から株価は下がる。おかしい。主幹事証券会社から、機関投資家に情報が漏れているのではないかとみんな思っていました。

主幹事証券会社とは、有価証券の募集や売り出しで、中心的役割を果たす証券会社。機関投資家とは、顧客のお金を運用・管理する法人投資家。

初めてこの話を聞いた時は、そんな卑怯な取引があるのかと思ったんですが、実際にたくさんあったんですね。法人名はここに書きませんが、調べると出てきます。

やはり情報は漏れていました。証券監視委員会が摘発・行政処分を行って、金融商品取引法が改正されました。

インサイダー取引と金商法の改正はいたちごっこです。

先回りして金商法を改正することはできない。誰かが悪いことをして、「それって禁止しなければダメだよね」と意見が一致して、法改正が行われる。税法と同じですね。

誰かが節税スキームを考えて、そのような申告や処理は不合理だと行政側と立法側が判断して、法で規制する。先んじて規制することはできない。規制されると、また新たなスキームが開発されて、また規制される。

後手に回らざるを得ない人たちの苦労は計り知れません。

ドンキ株不正推奨事件

インサイダー取引として、重要事実を伝えることや重要事実は伝えないけれど株取引を推奨することが禁じられています。

「うちの会社、画期的な新薬を開発したんだよ」と言ってもダメだし、「うちの会社の株買った方がいいよ。絶対買った方がいいよ」と勧めてもダメ。

重要事実を聞いて株を購入すれば、購入した人も罪に問われます。ただ、重要事実を聞かずに勧められて株を購入した場合は、罪にならない。

2021年の「ドンキホーテホールディングス株券の不正推奨事件」では、前社長は摘発されたけれど、ドンキ株の取引を推奨されて売買をした知人は処分を受けませんでした。

公務員の皆さんの忸怩たる思いを察します。

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