お笑いコンビ「ジョイマン」の高木晋哉が、ちょっぴりほろ苦く、そしてどこかほっこりする文章で綴るこの連載。読者のお悩みにジョイマン高木ならではの視点で答えてもらいます。

今回のお悩み

「取引先の担当者の女性に恋心を抱いてしまいました。秘めたる想いを打ち明けたいのですが、もしもデートに誘って気まずいことになったら取引を打ち切られてしまうかも…。主要取引先なので、そんな事態になったら会社に迷惑がかかりますし…。僕はどうしたらいいでしょうか」(30代男性)

はじめまして。ジョイマンの高木晋哉です。恋か仕事か。どちらを取るか。これは本当に人それぞれの価値観で取捨選択が変わってくると思うのですが、僕が思うには、一度きりの人生、やっぱり恋も仕事も勝ち取りたい。選べない。面目ない。「いったい誰が言っているんだよ」と叱られるかもしれませんが、それは百も承知で言わせていただきたい。

僕は恋も仕事も頑張って、幸せになりたい。笑顔で両腕を傘のように広げて軽やかにステップを踏み、恋に仕事に全力でヒゥイゴーして、幸福に「カモン」と手招きをし、目一杯に広げた両腕で根こそぎ抱きしめたい。そしてこの世界のすべてに「ありがとうオリゴ糖!」と伝えたい。

欲深いのかもしれません。しかし、誰もが「理想は」そうなのではないでしょうか。「どちらか選べ」と誰かに言われるなんて、おかしな話だと思います。世の中を見渡せば、恋も仕事も成功している人はいると思います。ただそれは一握りの人に許された奇跡で、それ以外のスタンダードな人はどちらかにするべきだなんて、誰が決めたのでしょうか。いつだって人類は進化をあきらめてはいけないのです。人類は恋も仕事も手に入れることがスタンダードになる世界を目指すべきです。

10年以上も昔の話で恐縮ですが、週刊誌に撮られたことがあります。短期間で2誌に撮られたことがあります。いずれも女性関係で撮られ、その頃はテレビにもよく出ていて、今考えれば、そのときを境に何となく仕事の潮目が変わったような気がしています。「キモ可愛い」くらいの存在だったのが、「キモきもい」になったような気がします。もちろんそれだけが原因というわけではなく、それ以外の沢山の原因も重なってのことなのですが、仕事の内容がそれを機に変わっていったように思います。

今は皆さんも知っているかもしれませんが、あんまり仕事がありません。あれから時は経ち、僕は妻や子どもには恵まれ、幸せではありますが、あんまり仕事はありません。だから30代男性さん、今あなたが恋と仕事の両立に悩み、それに打ち克って両方を手に入れることは、僕の願いでもあるのです。

それに、当たり前かもしれませんが、恋と仕事は別のものです。仕事がうまくいったときに得られる幸せと、恋が順調なときに得られる幸せは、自分の心の中でも少し違う部分で感じているように思います。もしくは一人の人間の中にはいくつかの心があるということなのかもしれません。

とにかく恋と仕事で得られる幸せは違う種類の幸せで、おそらく僕達を取り囲むこの世界には、もっともっときめ細やかに細分化された沢山の種類の幸せがあるのだと思います。一生では感じ尽くせないほどの膨大な幸せの中のたった2つの幸せを手に入れることは何も特別なことではないはずです。

その代わりに、2つとも前向きに、そして真摯に向き合わなければなりません。もしあなたが本気で礼を尽くすなら、恋の相手にも、仕事関係の人達にも伝わるでしょう。ただどちらかに気持ちが偏りすぎてしまえば、どちらかが崩壊してしまうかもしれません。すべてに本気で臨めるかが、鍵を握っているのだと思います。

30代男性さんの相談の文章を見ていると、「もし失敗してしまったら……」と心配しすぎているように思います。気持ちはとってもわかります。悪いことをしているのではないかと感じてしまうのもわかります。でも全くそんなことはないし、もし失敗しても30代男性さんが本気なのがしっかりと周りにも伝わっていれば、後悔するような結果にはならないと思います。

僕の答えはひとつ。かつてジョイマン高木が成しえなかった「恋と仕事の両立」という途方もない夢を、今、あなたが叶えてほしい。それは「恋と仕事の両立」がこの世界のスタンダードになってほしいという、人類としての願いでもあるのです。不安になったり心配したりする必要はありません。30代男性さんの恋心と取引の成就を、ジョイマン高木とすべての人類が応援しています。すべてはあなたの肩にかかっているのです。