iDJ2ではジョグホイールやPLAYボタンが2組用意されている。これはそれぞれが個別のターンテーブルやCDプレイヤーに相当する「デッキ」といい、iPodからiDJ2のメモリに曲をコピーすることで、各デッキで曲のコントロールが可能となる。ではその「デッキ」の使い勝手はどうだろうか?実際に試してみた。

幅広いレンジのピッチコントロール

iPodからiDJ2の各デッキに読み込んだ曲は、iDJ2のデッキ・コントロールとミキサー・コントロールを使い、一般的な手順で曲を繋げていく。この一般的というのが少々わかりづらいかもしれないが、各デッキに曲さえ読み込んでしまえば、後は通常のDJミキサー+DJ用CDプレイヤーとほぼ同じ操作という意味。iPodをソースに使っているからといって特別な操作や、また違和感などはなく、DJ機材としてなかなかよく出来ている。

テンポの異なる曲をミックスするために欠かせない、テンポを変化させるためのピッチコントロール機能もiDJ2には搭載されている。これにより、ちゃんとしたDJプレイが可能である。ピッチコントロールはPITCH SLIDERで操作するが、その変化レンジは±6%、±12%、±25%、そして-100~+25%と設定を変更できる。またテンポを変えてもキーは変わらずに再生できるキーロック機能も用意されているため、かなりテンポが違う曲であっても違和感なく繋げることが可能だ。

テンポの変更は一番右のPITCH SLIDERで行う、オリジナルのテンポは再生中に自動的に検出されるが、TAPボタンでリズムを刻み手動で算出することもできる

PITCH SLIDERでの変化レンジやキーロック機能のオン/オフは各デッキに用意されたMODEボタンで設定画面を開いて設定する

この設定は各デッキ毎に独立して行え、またMODEボタンからすぐに設定画面が開けるため、普段は±6%に設定してスライダーを操作しやすく使い、極端にテンポの違う曲を繋げる場合はその場で設定を変更する、といった使い分けもできる。

ジョグダイアルは曲の再生中はピッチベンド、つまり微妙なビート合わせに使い、一時停止中はキューポイント探しに使う。これもDJ用CDプレイヤーと同じ動作。またSCRATCHボタンを押した状態で回せば、スクラッチ効果となる。またサンプラー的に特定のフレーズを流し続けることが可能となるループ再生機能も用意されている。

ジョグダイアルは多少サイズが小さめだが、操作感は良好。SCRATCHボタンを点灯させればスクラッチモードに、SEARCHボタンを点灯させれば曲中を高速に移動できるサーチモードとなる

再生中のディスプレイ表示は曲名や残り時間、オリジナルのBPMや現在のピッチコントロール量といった情報が表示されるほか、音の強弱、つまり盛り上がっている部分を視覚的に確認できる「トラックプロファイル」という機能も利用できる。

再生中は各デッキに読み込んでいるトラック名やアーティスト名、残り時間、そしてピッチコントロール量や現在のBPM(テンポ)などをディスプレイで確認することができる

音の強弱を視覚的に見せるプロファイルビュー機能。PUSH ENTERノブの操作でブレイクに素早く移動することもできる。なお各トラックのプロファイルはiDJ2では作成できず、前回紹介したパソコンソフト「Numark LIBRALIAN」でのライブラリ作成時にオプションで作成する

2つの動作モードに注意

iDJ2のDJミキサー部分であるミキサー・コントロールはDJミキサーとしてごく一般的な仕様で、2本のチャンネルフェーダと1本のクロスフェーダ、そして各チャンネル(デッキ)に3バンドEQが搭載されている。エフェクトは搭載されず、その意味ではシンプルなDJミキサー機能だ。

EQはBASS/MID/TRIBLEの3バンド、左に目いっぱい回せば各帯域の音を完全にカットオフできるアイソレータ仕様となっている

パソコン用のDJソフトのように、ボタンひとつで2曲のビートとテンポを完全に合わせるといった機能は用意されないものの、デッキA/BのビートをLEDで視覚的に表示するBEATKEEPERを搭載。DJプレイに慣れない人には手助けになるはず。他にはクロスフェーダの操作に合わせて各デッキの曲をスタートする、フェーダスタート機能も用意されている。

クロスフェーダの上には1小節内のビートをLEDで示すBEATKEEPERを装備。左はデッキA、右はデッキBのビート位置を示し、完全にシンクロしていれば中央の青いLEDが点灯する

iDJ2ではiPodを「USBモード」と「DIRECTモード」という2つの動作モードで利用できる。USBモードとはiPodをUSBマスストレージデバイスとしてコントロールするモードで、つまりUSBメモリやハードディスクを接続したときと同じ動作をする。このモードではこれまで紹介したように、2つのデッキに別の曲を読み込み、テンポをコントロールすることができる。

DIRECTモードは、USBマスストレージではなく、iPodをiPodとして認識しアクセスするモードだ。この場合はiDJ2のデッキAからしかiPodのコントロールはできず、またピッチコントロールでテンポを変えることもできない。

つまりiPodをソースとしてDJプレイを楽しむならば、DIRECTモードよりもUSBモードのほうが自由度が高い。ただしiPodの種類によってはDIRECTモードでしか接続できないものもあり、具体的にはiPod touchがそれにあたる。これはiPod touchがもともとUSBマスストレージとして動作しないためだろう。製品ごとの対応状況はNumarkのWebサイトに掲載されているので、購入を考えている人は手持ちのiPodがUSBモードで使えるか確認しておこう。

iDJ2に読み込み、再生できるファイル形式はMP3とAAC、そしてWAVとなっている。ただしiTunes Storeで購入したAACファイルは、iPodをDIRECTモードで接続した場合のみしか再生できない。

iDJ2はiPodをソースとしてDJプレイを行うために必要な機能が揃った、ほぼ完全なiPod用DJコンソールだ。屋外で使う場合でもDJプレイに必要な機材がオールインワンとなっているため、あとはスピーカー&アンプだけがあればよい。本格的なクラブプレイはもちろんだが、ちょっとしたスペースを借りてイベントをするときなど、そこにあるPA機材にiDJ2を接続、皆がiPodをセットしてDJプレイを楽しむ、といった遊び方が面白そうだ。