LED電球は、3年ぐらい前から一般向けの製品が発売されてきています。しかし、当初の製品は、E26やE17のソケットに刺さるというだけで、白熱電球並みの明るさを備えた製品の実用化は、もう少し先になってからでした。また、一般向けの照明としてのLEDは、ポケットライトや、蛍光灯を使用した照明器具のアクセントとして使用されるというケースがほとんどでした。

LED電球ではなく、光源にLEDを使用した照明器具としても、実際にLEDのみで照明としての実用に耐える製品が市場に出てきたのは、2007年ごろからです。まずは、一般家庭向けよりも、点灯時間やランプの数が多くなる事による消費電力の差が出やすい、店舗用やオフィス用の照明器具の方で普及が進められていきましたが、2007年に発表された東芝ライテックの「E-CORE」シリーズは、40Wの白熱電球を利用したダウンライトに置き換えることが可能な製品で、一般家庭向けのモデルもシリーズにラインナップされていました(断熱材が入っている天井にも施工可能なモデル)。その年の10月に、60W型の白熱電球に相当するものも発表されています。ただし、器具自体の価格は、2万円前後とかなり高価で、さらに設置には工事が必要という問題もありました(ダウンライトなので、天井の穴に取り付ける必要がある)。新築や、あるいはリフォームなどの際に設置するというのが一般的な製品です。

さらに、2008年2月には、松下電工(現パナソニック電工)より、新型MFORCE搭載 LEDシーリングライトが発表されています。この製品は、100Wの白熱電球を1灯使用したダウンライトと同等の明るさを持つというものでした。

2007年の年末になると、東芝ライテックより「LEL-SL5L-F」(電球色相当)、「LEL-SL5N-F」(白色相当)が発売されるなど、そろそろLED電球も製品が出始めてきます。この製品は、5.3Wの消費電力で40Wの白熱電球に相当する明るさをもつものでしたが、1個あたりの価格は、7,000円前後とかなり高価した。なにしろ、40W型で8-9W、60W型で12Wといった消費電力の電球型蛍光灯が1,000円前後で購入できるわけで、電球と比べた場合のコストパフォーマンスの高さはあるにしても、電球型蛍光灯と比べた場合、まだそれほどのメリットは感じられないというのが、その当時の状況でした。

さて、今年の6月11日、シャープから、低価格なLED電球が9製品発表されています。普通のLED電球に加えて、調光器に対応したモデルやリモコンに対応したモデルなどもあり、同社の力の入れ方が伺えるラインナップとなっています。また、6月22日には同じく低価格なLED電球が東芝ライテックからも発表されました。両製品とも7月15日の発売で、40W型の消費電力は、ノーマルタイプだとどちらも4.1W。店頭価格は、4000円弱程度。電球型蛍光灯の約4倍の価格で寿命も約4倍ということで、初期コストはかかるのですが、十分にモトが取れる価格設定となっています。

で、これらのLED電球は、本当に、電球や電球型蛍光灯の代わりに使えるものなのでしょうか。形的には電球に近いというのはわかっていますが。配光パターンなど、気になる点もあります。できる範囲でチェックしてみたいと思います。まぁ、個人でできる範囲なので、あまり厳密な測定にはならないのですが、その辺りはご容赦ください。

さて、今回測定に使用しているのは、東芝ライテックのLED電球「一般電球型LEL-AW4L/2」という、白熱電球40W相当の明るさを持つ電球色の製品です。これと、同社の白熱電球「ワットブライター」、電球型蛍光灯の「ネオボールZ REAL」(電球色)の共に40W型です。これらを普通に点灯させているときの明るさを比較しています。LED電球や、LEDを使用した照明器具では、直下の明るさが白熱電球の何W相当というちょっと回りくどい言い方がされています。LED電球は、外観から見ても、全体が光るわけでは無いことがわかります。電球として光る部分と、放熱のためのフィンとがあるわけで、放熱側は光らないわけです。そのためにこういった言い方になっているのでしょうが、例えば、スタンドなどのように、反射版が利用されている器具では、想定された明るさにならないケースが考えられます。というわけですので、今回は素の状態で比較してみました。

撮影の都合もあり、今回は50cm程度の高さからつるして、その下にPC用のデータロガー「Dr.DAQ」(以前秋月で購入したもの)を設置しています。Dr.DAQの測定の精度はあまりたいしたことはありません。さらに、取扱説明書によると、明るさの測定に関しては「Not calibrated」となっています。そのうえ、明るさのレベルを1-100までで表示するだけというもので、その単位すら明らかではありません。ですが、3種類の光源の明るさを比較するだけならば、問題ないでしょう。

左から、測定に使用したPC用データロガー「Dr.DAQ」、東芝製白熱電球「ワットブライター」の40W型、同じく東芝製の電球型蛍光灯「ネオボールZ REAL」の電球色モデル

それぞれのランプを点灯させたときの明るさが、次のグラフです。1番目のものが未点灯の状態。完全な暗室で測定を行っているわけではないので、10程度の数値となっています。続いて本物の白熱電球を点灯した場合のグラフですが、50台の前半といったところです。それに対して、電球型蛍光灯を測定したグラフでは、40前後の数値となっており、40W型の電球と比較すると若干暗めです。これは、見た目にもはっきりとわかるぐらいの差なので、Dr.DAQがいいかげんだからというだけではないでしょう。最後にLED電球ですが、50代の後半という数値となっていて、Dr.DAQによると白熱電球以上となっています。しかし、実際に見た感じでは白熱電球のほうが明るく感じられます(というよりも、直視した場合に相当眩しく感じられるといった方がよいかもしれません。一方のLED電球では直視してもさほど眩しくは感じられません)。

点灯していない状態では明るさは10前後の数値を示している

白熱電球を点灯させた場合、数値は50台前半

電球型蛍光灯の場合、数値は少し下がって、40前後

LED電球では50台後半の数値

続いて同じ測定を今度はDr.DAQを60°離れた場所に設置して行ってみました。距離はほぼ同じにしてあります。その結果が次のグラフです。

白熱電球の場合は、35程度の数値

電球型蛍光灯の場合は20台後半

LED電球の場合、30台前半の数値

ランプからの角度がある場合、白熱電球に比べて他の光源は明るさの落ち込みが大きくなるようです。そのため、部屋の中心に多灯のシャンデリアタイプの器具を設置してあるようなケースだと、明るさが足りないと感じるケースも出てくるかもしれません。しかし、玄関などで使用する場合には、LED電球はなかなかよさそうな感じではあります。一方の電球型蛍光灯は、今回の測定結果だけから判断すると、初期コストの低さ以外にはLED電球と比べた際のメリットはあまり感じられません。

ちなみに、点灯時の消費電力をワットメーターで測定したところ、白熱電球では38W(定格は36W)、電球型蛍光灯では8W(こちらは定格通り)、LED電球では3Wとなっていました(定格は4.1Wなのですが)。いずれにせよ、LED電球は、以前は家電好きが趣味であるいは話の種に買ってみるといった製品でしたが、今回の結果を見る限り、相当に実用的な製品に仕上がっているといった感じです。