扇風機は、初夏だけでなく真夏の間も、エアコンと併用することで効果的に涼を得られる空調機器だ。さて、前回書いたように、2014年の扇風機の中心モデルはDCモーターを採用した機種になってきている。

DCモーター扇風機が2014年の主流。写真は東芝の「F-DLS75」

では、DCモーター扇風機のメリットは何なのか。よく言われるのが、細かな風速調整が可能で、微風時の消費電力が少ないという点や、微風時の動作音が小さいという点だ。そして、一部の製品に限られるが、バッテリー駆動が可能というのもDCモーター扇風機のメリットだろう。

DCモーター扇風機への買い替えコストを電気代の差でカバーするのは困難

DC扇風機とAC扇風機の電気料金の差で、DC扇風機の導入コストはカバーできるのだろうか。DCモーター扇風機は、製品にもよるが、微風時には2W前後の消費電力に抑えられるモデルが多いようだ。これに対して、ACモーター扇風機はどうかというと、以前、筆者の使用している扇風機で測定したところ、弱で30W前後となっていた。筆者の使用している扇風機には微風モードは存在していないのだが、「1/fリズム」機能は装備されている。これを使用すると間欠動作となり、停止しているときには、0Wとなっていた。平均すると半分ぐらいの時間停止しているので、15W前後の消費電力というところだろうか。

以前測定したところ、弱運転の場合は30W程度の消費電力だった

微風で使用する場合、DC扇風機とAC扇風機の消費電力の差は最大で13W前後ということになる。AC扇風機とDC扇風機、それぞれを1時間動作させたときの消費電力量の差は、0.013kWhだ。

2014年8月現在の東京電力の電力量料金は、第1段階が19.4円、第2段階が25.91円、第3段階が29.9円(いずれも1kWhあたり)。DCモーター扇風機とACモーター扇風機を1時間、最も風量が少ないモードで動作させた場合、電気料金の差は、第1段階で0.25円程度、第2段階で0.34円程度、第3段階で0.39円程度だ。最も差が大きくなる第3段階で24時間動作させ続けても、1日あたり10円以下の差でしかない。

量販店では、DCモーター扇風機の低価格なモデルは、10,000円台前半ぐらいの価格で販売されていることが多いようだ。仮に10,000円としても、1,000日、つまり2.7年以上連続で動作させ続けて初めて、導入コストを回収できることになる。夏の間しか使わないのであれば、5年以上はかかるだろうし、1日に8時間程度しか動作させない場合、15年以上かかることになる。

コスト以外の付加価値に必要性を感じるかどうか

ACモーター扇風機では、風量調節は「強」「中」「弱」の3段階というのが一般的だ。それに対してDCモーター扇風機では、4段階から、多いものでは8段階といったものもある(もっと多いものもあるかもしれない)。

パナソニックの「F-CK339」。風量調節は8段階

ACモーター扇風機を使用していて、「弱」だと暑いが「中」だと強すぎると感じる人にはありがたい機能だろう。

DCモーター扇風機のコスト以外のメリットとして、静音性があげられることが多い。ただし、それは微風のときのみの話だ。風量を上げていくと、風切り音が増えてくるのであまり関係がなくなってくる。

コードレス運転に関しては、ACモーター扇風機では実現が難しい。AC100Vを出力可能なポータブル電源を組み合わせれば不可能ではないが、そのためだけにポータブル電源を用意するのは、コスト面で割が合わないうえ、はじめからコードレス運転を考慮したDCモーター扇風機に比べて使い勝手も悪い。現実的ではないだろう。

ポータブル電源と組み合わせれば、コンセントのない場所でもAC扇風機を利用できるが……

AC扇風機は、いわゆる"ジェネリック家電"のカテゴリーに入っている製品だ。DCモーター扇風機の持つ付加価値が魅力的だと思える人はDCモーター扇風機を選んだほうがよいだろうが、そうでない人は、低価格なAC扇風機で十分という場合が多いのではないだろうか。