生命保険の契約は20年、30年という長期にわたるものも珍しくなく、その間にどんなことが起こるかわかりません。場合によっては、生命保険会社が破たんすることも考えられます。もし保険会社が破たんしたら、加入していた保険はどうなるのでしょうか。

契約者を保護するセーフティーネット「生命保険契約者保護機構」

生命保険には、契約者を保護するセーフティーネットとして「生命保険契約者保護機構」が設けられていて、日本国内で保険事業を行う生命保険会社はすべて、この機構に加入しています。ある生命保険会社が破たんして、その会社を別の生命保険会社が吸収して救済した場合は、保険契約は救済保険会社に移ります。救済保険会社が現れたなかった場合は、保護機構が保険契約を引き継ぐことになっています。

いずれにしても、破たんによって保険契約が消滅してしまうということはありません。ただし、破たんした保険会社が保険金支払いのために積み立ててきた責任準備金のうち、保護されるのは90%までで、残りの10%については、破たんした保険会社の財務の状況によってはカットされることがあります。

また、保険契約を別会社や機構が引き継ぐときに、保険料の計算の基になる予定利率が引き下げられることがあります。この2つによって、契約時に決まっていた保険金や解約返戻金の額は減ってしまいます。

1997年から2000年にかけて生命保険会社の破たんが続いたとき、保険の種類や契約してからの年数によっては、保険金額が半分程度にまで引き下げられた例もありました。また、その保険を解約して別の保険会社の保険に入ろうとしても、早く解約すればするほど、解約返戻金が削減されるという仕組みもありました。

生命保険会社が破たんしても保険契約が消滅することはないとはいえ、保険金額などが削減されるなど、契約者にとっての不利益はあるわけです。

影響が大きいのは"貯蓄型"の保険、掛け捨て型の保険への影響は小さい

とはいえ、不利益の度合いは保険の種類によって違いがあります。影響が大きいのは、貯蓄型の保険、例えば、終身保険、個人年金保険、養老保険、学資(子ども)保険など。一方、定期保険や医療保険など、掛け捨て型の保険への影響は小さいといえます。また、保険期間の短いもののほうが、長いものより破たんの影響が少なくなります。

終身保険などは、貯蓄性の高いうえに保険期間が長いので、破たんによる不利益が大きいわけです。生命保険会社の破たんに備えるという意味でも、掛け捨て型の保険のほうがリーズナブルといえるでしょう。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。

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