前回は融資金利の相場について情報提供をいたしました。今回は第3回でも触れた融資と出資の違いについて、内容を補足します。

過去の記事では、出資と融資の違いについて4点列挙いたしました。(1)期間の違い(資金提供者との関係性は、出資が無期限で融資が有期)、(2)資金提供者への報い方の違い(出資は株価向上か配当で高リターン、融資は金利で低リターン)、(3)調達可能な金額の違い(1兆円規模の資金調達は、要求収益率の観点から出資では取り組みづらい)、(4)調達可能なタイミングの違い(出資はいつでも構わないが、融資はタイミングが限定されている)です。さらに追加で2点、紹介いたします。

法人格の要否

エンジェルやベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、株式会社の枠組を利用するため、必然的に法人格を取得しなければなりません。一方で、金融機関から融資を受ける場合、法人だけではなく個人事業主も契約することができます。法人格は必須条件ではないのです。都市銀行(いわゆるメガバンク)においても、個人事業主を支援する部署を設けているケースがあります。

融資を申し込む個人事業主の例として、士業の事務所や開業医、飲食店、商店が挙げられます。個人事業主向けの資金調達についてWebで検索すると事業用カードローンの記事を見かけることが多いですが、資金用途が明確であれば法人と同様に証書貸付を申し込むことが可能です。

参考までにリースに関しても触れますと、大手リース会社との契約については「決算を3期迎えた法人」もしくは「金融機関との融資契約が存在する個人事業主」が検討対象となるようです。2020年時点では個人事業主がリースで業務用パソコンを調達しようとしても、融資契約がなければリース契約も成立しない商慣習となっています。

事業規模の違い

ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、諸説ありますが18か月のランウェイ(会社が潰れるまでに残された期間/手元資金が尽きるまでの期間)を確保するように資金調達することが現在の相場です。金融機関から融資を受ける場合も様々な尺度はございますが、ひとつの目安として月商の2~3か月分の金額を調達できると言われます。2,000万円を調達すると仮定して、両者を比較してみましょう。

出資を受けるケースでは、2,000万円を18か月で割って、毎月のコストが約110万円の規模の事業だと言い換えることができます。融資を受けるケースでは、月商の3か月分が2,000万円だとしたら年商は8,000万円です。利益が10%と想定すると年間の費用は7,200万円ですから、毎月のコストは600万円の事業規模になります。簡単なシミュレーションですが、融資が出資よりも金額ベースで計った事業規模が5倍以上大きいことが分かります。

起業家の感覚では、出資を受けても融資を受けても同じ2,000万円に見えるかもしれません。しかし、資金提供者の視点からは出資のケースと融資のケースで事業規模に明確な差が存在します。双方の間に隔たりが存在することを、資金調達する企業の財務担当者は理解する必要があります。出資と同じイメージで融資の相談をすると、申込金額が過大だと評価される可能性が大きいです。

融資と出資の違いについての補足説明は以上です。次回は起業家が「あえて創業融資を利用しないケース」について考えます。