もはやiPhoneでは常識となった「テザリング」。接続経路はWi-FiとBluetooth、USBケーブルの3とおりから選べるので、機動力重視のMacBook Airユーザにはピッタリです。けれど、"素"の状態で使っていませんか? 今回は、テザリングにひと工夫くわえて使いやすくするコツをお教えします。

テザリングの「弱点」とは

外出時の空き時間にメールの読み書きや書類作成をしたいときには、喫茶店やファミレスに駆け込みますよね? 最近ではWi-fiアクセスポイントを設置しているお店が多いので、アカウントさえあれば気軽に利用できます。携帯キャリアや公衆無線LAN会社が提供するサービスであれば、セキュリティがしっかりしているので安心です。

しかし、移動中となるとそうはいきません。アクセスポイントから離れれば接続が切れますし、再接続には手間がかかります。うっかりパスワード保護されていない"野良AP"に接続すると、パスワードなどの個人情報を盗まれる可能性もあります(ハニーポット)。

その点、テザリングは安心です。公衆無線LANのアカウントを取得する必要はありませんし、モバイル回線を利用するので移動中でも通信が途切れません。自分のiPhoneに接続するわけですから、ハニーポットのような危険はありません。iPhoneが接続した基地局にもよりますが、通信速度が公衆無線LANを上回ることもあります。

ただし、弱みが2つ。ひとつは、ソフトバンク/au/ドコモともに、月中のモバイル回線(3G/LTE)通信量が7GBを超えると月末までの通信速度が最大128kbpsになるという制約があること。そしてもうひとつが、パソコン側のスリープと連動してくれないこと。MacBook Airの場合、ひんぱんに液晶を開け閉めしますから、そのつど接続をやり直すのは避けたいところです。

前者の7GB制限については、動画などサイズが大きいコンテンツに注意する、iCloudのフォトストリームのようにバックグラウンドで大量のファイル転送を行う機能を無効化しておく、といった心がけである程度予防できますが、後者に挙げた液晶パネルの開け閉めとの連動についてはOS Xの機能ではどうにもなりません。しかし、ひとつの解決策が……その方法を次項で紹介します。

テザリング中のiPhoneは、このように「インターネット共有:○台接続中」と表示されます

テザリングの接続経路はWi-FiとBluetooth、USBケーブルの3とおりから選択できます。通信速度では他に劣りますが、扱いやすさではBluetoothがベストです

Wi-Fi経由でテザリングする場合、たびたび接続し直す必要があるためiPhoneを近くに置くものですが、Bluetooth経由の場合はバッグに入れたままでも支障ありません

液晶の開け閉めとテザリングを連動させる

前述のとおり、液晶パネルの開け閉めとテザリングのON/OFFを連動させることができませんが、それはOS X標準の機能で解決しようとしたときの話。あるソフトウェアを導入すれば、液晶パネルを開ければテザリングをONに、閉じればOFFにすることが可能です。そうすれば、気付かないまま大量のデータが転送され7GB制限を受けてしまう、ということがありません。

そのソフトウェアが「LidSyncPAN」です。液晶を開くとiPhoneに接続開始、閉じると切断という処理が自動的に行われるため、直接インターネットに接続している感覚でMacBook Airを利用できます。

なお、iPhoneとはBluetoothで接続するので、スリープ中であってもすんなりインターネットに接続できます。Wi-Fi接続の場合は、iPhoneがスリープしてしまうとアクセスポイントとして検出されないため、バッグの中に入れているときには取り出してスリープ解除するしかありませんが、Bluetoothならば手間いらずです。Bluetoothは待機時の消費電力がとても少ないのでバッテリーにやさしい、というメリットもあります。

LidSyncPANは「SIMBL」というアプリケーションの機能を拡張するプラグインで、一般的なアプリケーションとは導入方法が異なります。少々難易度は高いもののメリットは大きいので、ひるまずに取り組んでみてください! ただし、LidSyncPANは「人柱版」ですから、自己責任のもとに利用しましょう。

  1. こちらからEasySIMBLをダウンロードし(2013年12月時点の最新版はv1.6)、ダブルクリックして生成された「EasySIMBL」はアプリケーションフォルダへ移動しておきます。
  2. LidSyncPAN(ZIPファイル、2013年12月時点で最新版はv0.7)をダウンロードし、ダブルクリックして展開します。
  3. EasySIMBLを起動し、解凍したLidSyncPANの書庫内にある「LidSyncPAN.bundle」をEasySIMBLのウインドウ上へドラッグ&ドロップします。
  4. ウインドウ上にある「Use SIMBL」をチェックし、EasySIMBLを終了します。
  5. LidSyncPANの書庫内にある「LidSyncPANPref.prefpane」をcontrolキーを押しながらクリックし、現れたメニューで「開く」を選択します。
  6. 開発元が未確認なことをたずねるダイアログが表示されるので、「開く」をクリックします。
  7. システム環境設定が起動し、LidSyncPANPrefパネルのインストール方法をたずねられるので、「このユーザ専用にインストールする」を選び「インストール」ボタンをクリックします。
  8. iPhoneとBluetoothでテザリングを開始します。
  9. LidSyncPANPrefパネルを開き、「LidSyncPANを有効にする」をチェックします。「Bluetooth PAN 接続対象メニュー名」欄には、iPhoneの名前(Bluetoothメニューに表示されるもの)を入力しておきます。

EasySIMBLを起動し、LidSyncPANのプラグインをドラッグ&ドロップして登録します

LidSyncPANのシステム環境設定パネルをインストールするには、コンテキストメニューで「開く」を選択し、開発元が未確認であることを確認したうえで作業を進めます

テザリングを提供するiPhoneとBluetoothでペアリングします。このときのデバイス名を、LidSyncPANの設定画面に入力します

LidSyncPANのシステム環境設定パネルを有効にすると、液晶の開け閉めに連動してiPhoneと接続するようになります