ITライター兼カメラマンのマルオマサトです。実は撮影よりも現像やレタッチのほうが得意だったりします。さて、今回は、ソニー「α」シリーズをずっと使っていて気になったこと、これからのαに望むことを書いていきます。
αに望むこと その1:バリアングル液晶でなければ、もう生き残れない
「バリアングル液晶の搭載」。これからのαに最優先で望みたいことはこれですね。バリアングルというと、VlogやYouTube用の動画撮影向けというイメージがあるかもしれませんが、私がバリアングルが欲しい理由は自撮りのためではなく、縦位置での撮りやすさ、構図の自由度など、写真表現を追求するのに欠かせない仕様だと思っているからです。
先日、Twitterが画像の縦位置表示に対応し、InstagramだけでなくTwitterでも縦位置の写真を使う人が明らかに増えてきました。横位置の写真をわざわざ縦位置にして掲載したり、複数の写真を縦位置にレイアウトして掲載している人もいるくらいです。
多くの写真はスマートフォンで見られるので、縦位置が好まれるのは自然な流れと言えます。しかし残念ながら、私が持っているαは縦位置写真が撮りやすいとは言えません。縦位置グリップを使えばアイレベルでの操作性は上がりますが、足元から見上げるようなアングルで縦位置で撮りたいときなどは対応できません。
そんなときはAFに任せてノールックで連写したりもしますが、ひんぱんにやるとデータ量が膨大になり選別も大変です。どうしてもというときは、地べたに寝転がったり、這いつくばって撮影したりしますが、「バリアングル液晶があればこんなことしなくてすむのに……」と何度思ったか分かりません。
現状、フルサイズのαシリーズでバリアングル液晶を搭載しているのは「α7C」と「α7S III」の2台のみ。ミラーレスの構造上のメリットをフルに生かし、写真の常識を変え、写真表現の幅を大きく拡張したのは間違いなくαだと思いますが、そのメリットを最大限に享受するために必要なバリアングル液晶の搭載では出遅れています。
バリアングルについても「チルトするだけならチルト液晶よりひと手間かかる」「モニターが張り出すと三脚やケーブルなどと干渉しやすい」など、いろいろ課題はあると思いますが、これらはバリアングルにしない理由ではなく、バリアングルを採用したうえで解決すべき課題と思います。今後出るモデルでは、バリアングル液晶の積極搭載を切実にお願いしたいところです。
αに望むこと その2:Wi-Fi 6対応で、より安定した通信を
最近私がよく使っているのが、スマートフォン連携機能です。ソニーが提供している「Imaging Edge Mobile」アプリを利用すれば、QRコードの読み取りなどで簡単にスマートフォン/タブレットとカメラを接続でき、これらのモバイル機器からのプレビューや撮影操作、撮影画像の確認、撮影画像の転送(保存)などが行えます。
私は主にiPad Airでこのアプリを利用していますが、撮影画像をすぐにiPad Airの大画面で確認できることが気に入ってよく使っています。やっぱり撮影した写真を大きな画面で確認できるのは安心感がありますし、人物撮影ではモデルさんからも好評です。
撮影操作自体をiPad Airから行うこともできますし、カメラ単体で撮影した画像をiPad Airに転送してTwitterに投稿する、あるいはAirDropで被写体に渡す……なんてことも楽々とできます。
できればもっとひんぱんに使いたいのですが、カメラ側との通信が安定しないのがネックで、時間的な余裕がたっぷりあるときのみの運用にとどまっています。それもそのはず、私が使っているα9、α7R IIIはWi-Fi 4(IEEE 802.11n)までの対応となっているのです。
第4世代モデルではWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)まで対応しましたが、最新のフラッグシップのα1でもWi-Fi 5にとどまっているのは物足りません。
Wi-Fi 6では通信の仕組みが改良され、電波が混雑した環境や、複数のデバイスが同時に通信している環境での接続安定性、実効性能が大きく改善されており、Wi-Fi 5とWi-Fi 6の間には理論値以上の大きな差があります。スマートフォンやタブレット、そしてノートPCでも続々とWi-Fi 6が進んでいるので、次のαからはすぐにWi-Fi 6へ対応してもらいたいです。
実をいうと、α9やα7R IIIがWi-Fi 4までの対応だったということは、今回調べて分かったことです。発売時期からして、まさかWi-Fi 5にも対応していないなんて想像していませんでした。
スマートフォン/タブレットとのスマートな連携はαの大きな魅力の1つだと感じているだけに、それを生かすためにも、通信機能にはもっと力を入れてもらいたいですね。同時に、やはり第3世代で粘るのはそろそろ限界かな……とも感じています。
αに望むこと その3:操作系、もう少し統一できませんか?
現在、筆者はα9とα7R IIIを併用しています。ボディ形状がほとんど同じで、レンズやメモリーカードはもちろん、バッテリーや縦位置グリップなどのオプションが共用できるので効率的に運用できていますが、操作系が微妙に違います。たとえば、α9は左肩に物理的なダイヤルがあるのに対し、α7R IIIにはそれがありません。
すでに慣れてはいるのですが、戸惑うときもあります。私は連写やタイマー撮影をよく利用しますが、α9のダイヤル操作より、α7系の本体背面右にあるホイールボタン(コントロールホイール)での操作のほうがずっと使いやすいと感じます。
そもそも左肩の物理ダイヤルって必要でしょうか……? 右肩と違い、左肩だとレンズを抱えるスタイルではダイレクトに操作できないのでワンテンポ遅れてしまいます。
しかもα9でタイマー撮影をする場合、左肩のドライブモードダイヤルをタイマー撮影に合わせた後で、秒数設定をするには結局右のホイールボタンで操作する必要があります。
タイマー撮影モードにする前にホイールボタンを操作するとエラーメッセージが出て受け付けてくれません(これがイラつきます)。α7R IIIなら、カメラを構えながら右の親指でホイールボタンを操作することですべてがダイレクトに設定できるので、「ただ手順が増えているだけでは……?」と思ってしまうのです。
第4世代のα9 II、α7R IVでもこの違いは健在です。さらにいうと、2020年に新たにαシリーズのラインナップに加わったα7Cでは、右側グリップに前ダイヤルがなく、カスタムボタンも大幅に少なくなってしまっています。小型軽量化のためとはいえ、“ミラーレスの生命線”ともいえるカスタムボタンを減らしてしまったのは残念です。
また、フルサイズのαシリーズが第4世代になったとき、2つあるメモリーカードスロットの位置関係が変更されたのも衝撃でした。これ自体は改善として受け止めるべきだと思いますが、実際に導入、運用していくうえでは大きな障害です。
こればかりはミスしたときの影響が大きすぎて、一部だけ第4世代にして併用することは考えられません。移行するならば使っている機種全部を移行したいですし、その第4世代のαは「主力機の液晶が非バリアングル」「通信がWi-Fi 5」ということもあって、完全移行へ誘う魅力には欠けるというのが、正直な感想です。
※編注:α7 IIIやα7R IIIのデュアルスロットは、どちらも上段が「スロット2」、下段が「スロット1」だが、α7R IVでは上段が「スロット1」、下段が「スロット2」に変更された。ちなみにα7S IIIはα7R IV同様、上から順に「スロット1」、「スロット2」の並びとなっている。
などと言いながら……、実は新たにα7Cを購入してしまいました。シングルスロットで、メモリーカードの位置を混同してしまう心配はないのでセーフです(笑)
このタイミングまで買わなかったのは、前述のようにいろいろ気に入らないところがあったからなのですが、それも含めて次回以降でレビューしていきたいと思います。