はじめまして。ITライター兼カメラマンのマルオマサトです。長年ITライターをしてきましたが、ここ数年はカメラ(特にソニー「α7」系)や写真の魅力にどっぷりとハマり、カメラマンも職業にしています。
まだ駆け出しでたいした実績もありませんが、ライター仕事のついでに撮影もしたり、人知れず広告記事で人物写真などを撮影させていただいたりしています。初回は「αとの出会い」。αを導入し、沼にハマった経緯などを書いていきたいと思います。
αにハマる前は「ニコン党」だった
αを使う前は、主にニコンのデジタル一眼レフを愛用してきました。「D90」を買ってから競走馬の撮影にハマり、「D300」、「D700」、「D3S」へと、短期間で一気に突っ走りました。その後はシグマのデジタルカメラ「DP2 Merrill」に衝撃を受けてFoveon派になったり、マイクロフォーサーズのコンパクトさに魅力を感じてパナソニックのミラーレスカメラ「GX7」、「GX8」などを使っていたりもしましたが、ニコンの「D810」を購入してからはフルサイズの「高画素ローパスフィルターレス信者」になったりもしました。
仕事ではニコンの「D3S」、「D810」を中心に使ってきましたが、2018年にソニーのミラーレスカメラ「α7 III」を購入してからメイン機として導入することを決め、1カ月後には2台目を購入。さらに「α9」、「α7R III」と買い足し、どっぷり“α沼”へと浸かっていきました。
決め手はやはり「フルサイズで軽い」
α7 IIIについては、もはや説明不要でしょうか。2018年の発売から3年以上が経過した今でもまったく価値が下がっていない名機です。画質、操作性、AF性能、バッテリー駆動時間、あらゆる面で前世代から大きく進化し、現代ミラーレス一眼の基準を示した製品だと思います。
α7 III購入の決め手は……今となってはあまりにも普通になってしまって実感することがないのですが、改めて考えてみると、月並みな表現ですが「フルサイズで軽い」のが一番でした。
仕事には基本的にカメラを2台持っていきますが、2台ともバックパックに入れて背負ってもさほど苦になりません(もちろん、重いとは感じます)。軽量なぶん、他の機材を持つ余裕もできますので、撮影の自由度が上がり、選択肢も格段に増えました。
「α」購入前の不安はすべて杞憂に
正直なことを言うと、α7 IIIを実際に使う前はミラーレス一眼やソニーのカメラに対しては、懐疑的でした。特に不安があったのは耐久性です。
ライターとしてもカメラマンとしても、やはり仕事の現場では、機材の保護に気を遣っている余裕はありません。それまでのミラーレス機はサブ機でしかなかったために、性能面(レスポンス)や操作感の面でも不安はありました。
「ラフに扱ったらすぐ壊れてしまうのではないか」、「ひんぱんなレンズ交換やSDメモリーカードの抜き差しに耐えられるのか」、「撮りたい時にサッと瞬時に使えるのか」……。こういうことは店頭などでちょっと使っただけではなかなかわからないものですが、実際に運用してみて、それはまったくの杞憂に終わりました。
一部メモリーカードとの相性によってフリーズする不具合が判明するなど、必ずしも最初から完璧だったわけではありませんが、ファームウェアのアップデートを重ねることで、性能も使い勝手もどんどん盤石になっていきました。
さらに、自分自身の問題として「ローパスフィルターありの有効約2,420万画素で満足できるのか」という疑問もありましたが、これも意外といってはなんですが、α7 IIIの画質は当時「高画素ローパスフィルターレス信者」と化していた自分でも満足できるものでした。それまでの同等の画素数のセンサーとはまったく別物と感じました。
当たり前の「F1.4で瞳に“ガチピン”」に感謝
F1.4で瞳に“ガチピン”……ソニーαを使っている方ならば、何でもないことのように思うでしょうが、通常の一眼レフでは難しいのです。一眼レフカメラにおいて、小さいF値でのピント合わせはとても神経を使う作業でした。
α7 IIIでは前世代から大きくAF性能が向上し、このピント合わせの作業が非常に楽になっています。その大きな要因が、像面位相差AFです。693点もの像面位相差検出AFセンサーが撮像センサーに直接埋め込まれているので、構図のどこでも正確なピント検出ができます。AI技術を用いて瞳を検出し、自動でフォーカスしてくれる「瞳AF」も格段に進化しました。このレスポンスや精度には、実際に運用してみて本当に驚きました。
一眼レフのAFセンサーは撮像センサーとは別の場所にあるため、レンズごとにAFの微調整が必須です。また、その関係でフルサイズセンサーのAFポイントは中央部に偏っていますので、瞳にAFポイントを持っていくことができないことも多いです(現在では、背面液晶を使った撮影時には像面位相差AF/瞳AFができる一眼レフもあります)。
α7 IIIを購入する前は「瞳AFは別にアテにしていない。そんなものなくてもうまく撮れる」なんてことを言っていたような気もしますが、今では恥ずかしい限りです。
実際のところ、仕事ではミスが許されませんので、F1.4のレンズを持って行っても結局F2.8で撮ったり、F1.4で撮ったあと、F値を上げて押さえておく……みたいなことをしていました。
正確かつ高速なAFを可能にする像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッド、そして瞳AF……購入前はそれほどアテにはしていなかったのですが、「開放で撮るリスク、プレッシャーから解放された」のはとてつもなく大きいことでした。AFポイントの自由度が広がったことと合わせて、写真表現の幅が一気に広がりました。
それにしても、サイズといい、AF性能といい、今となっては本当に「当たり前」のことになってしまっています。記事を書くにあたって振り返ってみるまでは、特にありがたいとも感じていませんでした。これらを「当たり前」にしてしまったことこそが、αのすごいところではないでしょうか。これからは全力で感謝しつつ、使っていこうと思います。
これさえあれば“戦場”でも戦える「α9」
発表会やイベントなどでも、人気のある芸能人などが来場する現場は主催者も報道陣もピリピリしていて、ちょっとした戦場のような雰囲気を感じることも少なくありません。
テレビ局や大手新聞さんなど、そうそうたるメディア関係者がチームで来ていて、ごっつい機材を構えていることが多いです。その中でしっかりと自分の場所を確保しなければいけませんし、シャッターチャンスは限られていて、絶対に逃すことができません。
私の場合はそういう現場で撮ることはあまりないので、たまに行くと不安やプレッシャーで胃が痛くなるのですが、頼れる機材があれば少し心が落ち着きます。
そんな頼れる存在が「α9」。現在、私がもっとも信頼を置いているカメラです。高速な操作レスポンス、ソニー純正のGレンズ/G Masterレンズと組み合わせたときの高性能AF、そしてブラックアウトフリーの高速連写がとても頼もしく、それまでシビアな現場で利用していたニコンのフラッグシップ機と同様の安心感を与えてくれています。
私が思うに、α9の良さは「CPUの速さ」ではないでしょうか。「CPU」と表現するのが適切かどうかはわかりませんが、現代のデジタルカメラは、デジタル処理部分が多くなっており、ちょっとした小型の高性能コンピューターのようでもあります。プロユースという位置づけのα9は、α7 IIIやα7R IIIと比べてもワンランク上のCPUを搭載しているのでしょう。AF性能や瞳AFの検出精度は明らかに違います。
現在ではα9の後継として「α9 II」が発売されています。プロ向けの仕様にさらに磨きをかけた正統進化モデルですが、残念ながらコロナ禍がまだ続いている現状では、こうしたシビアな現場で撮影する機会がまったくありません。α9に不満も感じていませんので、しばらく使い続けるつもりです。
次回は、もう1台の主力機材であるα7R IIIと主力レンズについて語りたいと思います。