――NHKを退職されたのは、どのような考えからだったのでしょうか。
政治部記者が置かれた環境の変化を、ここ数年、まざまざと感じることが多かったんです。以前は取材対象である政治家に深く食い込めば、それに比例して一報や真相などの深い情報が入手できる。いわば政治記者同士の競争の上に成り立っていて、そのエリアでの競争でした。良し悪しは別として、政治記者の外側だと深い情報に接する機会も限定的だったと思います。だけど今は、政治家がSNSなどを活用して、個別の取材に応じるよりも先にSNSで発信する形が増えており、政治部記者の役割や存在意義に変化が生じていると言えます。ここは、各社の政治部も危機感を持っているかもしれませんが、新しい形を模索しているのではないか、とも思います。
それと、ニュースでは一方情報を、また番組で、深堀した内容を放送していましたが、尺の制約などもあり、どうしても入手した情報のうち上澄みのエッセンスだけになってしまう。情報をもう少し視聴者に還元したい。どこかで退職してフリーな形で、政治に限らず見聞きしたことをアウトプットしたいという思いがぼんやりとですがずっとあって、そのタイミングを探っていたら、会社が早期退職制度を導入したんです。
労働市場改革は、業界として避けては通れない道だと思ったので、この制度をより良いものにするために、自分が率先して活用することにしました。そうすることが会社に対する恩返しだと思い、いろんなことが合致して辞めるという形をとらせていただきました。
――22年に早期退職されて、翌年にホリプロさんに所属されてフリーとしての活動がスタートしたわけですが、ここまでを振り返っていかがですか?
もう本当に目をつぶって突っ走ってましたね(笑)。フリーは次のオファーがなければそれで終わりですから、その結果責任を覚悟をしながら、一日一日を精一杯出し切っていくという感じです。その中でも、これまで出会ったことのないジャンルの人たちにお会いするので、その人たちがどういうエネルギーやスキルを持って仕事に臨んでるのかというのを目の当たりにすると、非常に勉強になることが多いです。
特にバラエティ番組は初めてだったので、新たな発見が多かったです。皆さん本当に命を削って、「その言葉を出すために、この隙を狙って発言してるのか」ということを見せていただきました。私も使ったことのない筋肉を酷使されて、すごく新鮮です。
――特に印象的だったバラエティ番組は何ですか?
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ)は、何も知らされずに出ちゃったんで、スタジオに入って座った瞬間に「この殺気立った空気は何!?」と思いましたね。皆さんが爪痕をつけようとしていて、テレビで見ていた想像とあまりにも雰囲気が違ったんです。
――MCのさんまさんが「トークの戦場」と言う番組ですから。
あれはびっくり。知らぬが仏とはまさにこのことで、瞬時にあのちゃんが私にツッコんでくれたから何とかなったみたいな感じでした。フジテレビさんでは『ネプリーグ』ですよね。これも長時間の収録ですし、イジりが入ったときにすぐリアクションしなきゃいけないというところで大いに鍛えられた気がします。
バラエティの現場を何回か経験して、視聴者に面白いと思ってもらうためのエネルギーの強さを、演者さんにもスタッフさんたちにもすごく感じて、深い世界だなと思いました。死闘とも言えるような姿を見て、私も人生終盤ですけれども、この世界にチャレンジしてどこまで自分を変化させることができるのか。この未知数の部分を見てみたいという思いがありますね。
――インスタでは衣装に反響が集まっていますね。
『呼び出し先生タナカ』(フジテレビ)の衣装が(母校の)県立千葉高校によく似た制服で、インスタでぷちバズりさせていただいて。スポーツ紙のネットニュースに載ったら「意外と似合ってますね」とか言われて、驚きましたがうれしかったですね。政治記者の時は殺害予告が来たり、罵詈雑言のお葉書が届いたりすることもあり、長い間「ヒールみたいな人」として刷り込まれちゃっていたので。
首相公邸の“霊”をめぐる歴代宰相秘話
――事務所さんのプロフィールでは、「ざっくばらんな等身大の50代女性の一面もお見せし、 バラエティ番組、旅番組、音楽番組にも挑戦していきたいです」とコメントされています。旅番組はいかがでしたか?
『バカ正直におジャマします。ピュアにニッポン社会科見学』(テレビ東京)という番組で横浜中華街をロケしたのですが、これもなかなか体力が必要ですし、演者さんたちとの間で即興のやり取りをしながら、肉まん一つ食べるにしても皆が映る角度や肉まんが生きるようなやりとりを考えさせられるので学びは多かったです。ニュースの中継レポートの時は、自分が画角のどの辺にいるかは考える必要がなかったですから。
パンサーの尾形(貴弘)さんたちと一緒だったのですが、今まで何度も訪問している横浜が、皆さんでロケしたら全然違う街に見えたんです。街の人が声をかけてくださるのも新鮮で、ロケの面白さってこういうところにあるんだなと思いましたね。
――この中華街ロケでは占いもされていましたが、岩田さんはかなり詳しいそうですね。
西洋占星術、算命学、四柱推命、手相、タロットカード…といろいろやってました。大学祭の時が一番ハマっていたと思います。スピリチュアルな話で言うと、霊感は全くないんですけど、首相公邸には幽霊が出ると言われていて。
――二・二六事件の犠牲者の霊が出るという話、よく聞きます。
森元総理は「見た!」とよく話しているのを耳にしましたね。二・二六事件で亡くなった警察官の足を見たとか、2月26日の夜に寝室のドアノブがガチャガチャするとか。安倍総理の時は電話がかかってきて「ちょっと竹を割るラップ音が聴こえるんだけど、聴いてみて」と言われて、「聴こえません」って返したら、めちゃめちゃ怖そうに「どうしよう…これから自宅に帰りたい」と言うんで、「それなら警護があるので警視庁を通さないといけませんね」と答えたのを覚えていますね。結局帰宅はあきらめたようでしたが。私が「総理、霊の姿を見たら終わりですね」と冗談交じりに言うと本気で嫌がっていました(笑)
――歴代首相が何人も感じているというのは、失礼ながら面白いですね。
岸田さんはたぶん見てないと思います。いよいよ公邸に入る時に「安倍さんはラップ音を聴いてましたよ」と言ったら、「みんなそうやって脅すんだけどね、もう決めましたので」と淡々と。石破さんは「私はオバQ世代だから、おばけは怖くない」と発言していましたね(笑)