2番目に注目されたのは20時13分で、注目度72.6%。松前廣年(ひょうろく)が誰袖(福原遥)にメロメロになるシーンだ。
今宵の大文字屋の客は大物だ。第八代松前藩主・松前道廣(えなりかずき)の弟であり松前家江戸家老の松前廣年。廣年の相手を務める女郎は、大文字屋の看板を背負う花魁・誰袖である。誰袖は初回の相手とは口を利いてはならないという吉原の掟を破り、廣年にしなだれかかってキセルをすすめた。「吉原へはよくいらっしゃりんして?」「それが俺が使える金はさしてなくてなぁ。今日も、出入りのあちらの年に一度のおごりでな」廣年を手早く籠絡したいと考えている誰袖は、「またまた。かように美しい石をおつけになっておられんすお方が」と、廣年の腕輪に目をやり、そのまま廣年の左手に自分の両手を絡ませる。
この男から松前藩の抜荷の証拠を得て、田沼意知に知らせなければならない。松前藩の重鎮とはいえ、本人の言葉どおり廣年は遊び慣れてはいない。吉原でも一、二を争う美しさを誇る誰袖にかかれば、落ちるのは時間の問題といえるだろう。すっかり舞い上がっている廣年を、「これは、何という石でありんす?」と、誰袖は上目遣いにのぞきこんだ。
「新たなカモの匂いが…」
このシーンは、誰袖に迫られタジタジの廣年に視聴者が注目したと考えられる。
松前藩の抜荷の証拠を探りたい誰袖は、折よく松前藩の家老が吉原に遊びに来ると知り、その懐に潜り込もうと画策する。廣年は「北辺の鬼」と呼ばれる兄・道廣とは似ても似つかない大人しい男で、下心マンマンの誰袖はここぞとばかりに誘惑を始める。SNSでは、「家臣の妻に火縄銃をぶっ放す兄とは違って、やさしそうだな」「廣年さま、冴えないけど育ちはいい感じで新たなカモの匂いが…」「鬼の弟にしては穏やかでおっとりしてるけど、だまされやすそう」と、誰袖に一瞬で陥落しそうな廣年にコメントが集まった。
今回、初登場を果たした松前廣年は、兄・松前道廣の10歳離れた異母弟になる。松前藩の江戸家老を務める一方で絵師としても活躍した。廣年が生まれた翌年に父・松前資広が亡くなり、道廣が藩主を継ぐ。その翌年に廣年は松前藩の家老・蠣崎広武の養子に出された。幼少の頃から絵の才能を示し、8歳の頃には馬術の練習を見て馬の駆ける様子を見事に描き、人々を驚かせた。
その絵師としての才能を見込んだ叔父・広長によって、1773(安永2)年に江戸に上がり、南蘋派の画家・建部凌岱に学ぶ。1774(安永3)年に凌岱が亡くなると、師の遺言に従い新たに宋紫石のもとへ通った。1783(天明3)年、20歳になると松前に戻り蠣崎波響と号した。
松前廣年を演じるひょうろくは、俳優としても活躍するフリーのお笑い芸人で鹿児島出身の30歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演になる。バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS)で高い演技力を見せ、ドラマやCMへの出演も増えている。今後の活躍に期待だ。