ハーレーダビッドソンが2024年3月に発表した「ストリートグライド」の2024年モデルに試乗した。ハーレーダビッドソンジャパン社長の野田一夫さんが「今年の目玉」と評するバイクの実力は? アメリカの長距離ツーリングに適したバイクは日本で乗っても楽しい?

  • ハーレーダビッドソン「ストリートグライド」

    横浜で「ストリートグライド」に試乗!

2023年モデルと何が変わった?

ストリートグライドは兄弟車の「ロードグライド」とともにハーレーダビッドソンの主要モデルと称されるバイクだ。セグメントとしては長距離ツアラーの「グランドアメリカンツーリング」に属する。快適な長旅をサポートするフロントカウルやパニアケースといった装備類が大きな特徴だ。

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    いろいろな部分が進化した「ストリートグライド」の2024年モデルだが、価格は369.38万円で前モデルから据え置きだ

日本のグランドアメリカンツーリング市場で全体の約15%を占めるのがストリートグライド/ロードグライドだ。2024年モデルの発表会で野田さんは「できれば、この新型モデルでオーナー数を倍増させたい」と語っていた。

新型モデルのスペックを旧モデルと比較

ストリートグライドの2023年モデル(ストリートグライドスペシャル)と2024年モデルはどう違うのか。まずは基本スペックを比較してみたい。

2024年モデルの車両サイズは全長2,410mm、ホイールベース1,625mm、シート高715mm。2023年モデルより全長が10mm短くなった一方で、シート高は25mmアップしている。車両重量は前年比8.2kg軽量の368kgとなった。

市街地走行ではストップ&ゴーをする機会も多いため、足つき性と軽量化による操作性は試乗で確認しておきたいポイントだ。

エンジンは1,868ccの「Milwaukee-Eight 114」から1,923ccの「Milwaukee-Eight 117」にグレードアップ。最高出力は108ps(80kW)/5,020rpm、最大トルクは175Nm(17.8kgf・m)/3,500rpmとなった。

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    エンジン自体も2023年の「Milwaukee-Eight 117」との比較で馬力が3%、トルクが4%向上している

パワーアップした性能もさることながら、注目したいのが冷却性だ。新型ではフレーム下部にファン付きラジエターを配したり、排気バルブ周りを液冷する空水冷を採用するなど、走行風がライダーに直接当たらないよう快適性にも配慮したそうだ。その効果も体感しておきたいポイントといえる。

ストリートグライドで市街地走行を体験!

試乗の舞台は6月にハーレーダビッドソンの祭典「ブルースカイヘブン」が開催される横浜だ。もともとはアメリカの広大な大地を走る長距離ツアラーとして誕生したバイクだけに、ストップ&ゴーが続く市街地走行での性能も気になる。

バイクにまたがり車体を起こしてみるが、368kgあるとは思えないくらいに軽く感じた。サイドスタンドを払って足つき性をチェックしてみると、身長174cmの筆者で無理せずに両足のかかとがつくかつかないかといった感じ。これなら、街乗りの信号待ち時も不安はなさそうだ。

続いてエンジンを始動。アクセルを回すと心地よいエンジンサウンドが響くが、鼓動感は水冷エンジンの他のニューハーレーモデルと同様に控えめだ。かつてのイメージからすれば物足りなさを感じるかもしれないが、長距離走行を前提に考えれば振動が少ないことのメリットは大きいだろう。

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    「ストリートグライド」のライディングポジション。ロードグライドと比べてハンドル位置がローポジションとなるが、無理に前傾することなく椅子に座っているような感覚だった

試乗をスタートさせると、走り出しから重苦しさを感じることが一切ない。実にスムーズだ。低速域からいかんなくパワーを発揮してくれる最新型の「Milwaukee-Eight 117」の実力を実感する。気になっていた走行風の影響だが、これがすごかった。信号待ち時にエンジンを触ってみると間違いなく熱いのだが、走行風からは熱を全く感じない。排熱の影響をここまで抑えこんでいることは驚きといえる。

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    大きな車体だが操作性が高いため、市街地においてもスイスイ走行できる

うねうねとした道が続く公道も、ビッグバイクに似つかわしくない(?)軽快なハンドリングで快適そのもの。3速、4速とギアを上げるにつれスピードも上がっていくが、風の影響は少なく、走りには非常に安定感があることから、エアロダイナミクスについてもかなり作りこまれていることがわかる。

途中でハーレーご自慢のオーディオを試してみると、フェアリングスピーカーから非常にクリアに音が聞こえてくる。オーディオ性能が向上していることはもちろんだが、風切り音が少ないことも影響しているのだろう。これならリラックスした長旅が楽しめそうだ。

今回は約90分の試乗だったが、あまり疲れを感じなかった。その要因のひとつと考えられるのが、シートの性能だ。今回の新型モデルではシートのデザインと素材が変更されているが、クッション性が非常に高い。長距離走行においてシート性能は重要な要素となるが、しっかりとアップグレードされていた点に好感が持てた。

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    大きなTFTスクリーンは反射が抑えられていて走行中の視認性も高かった

なお、「ブルースカイヘブン2024」(会期:6月1日~2日、場所:山下ふ頭特設会場)のプログラム内においては、2024年モデルの最新ハーレーが乗り比べできる試乗会(エントリフィー:1,000円)が実施される。各モデルに有効な自動二輪免許があれば誰でも最新ハーレー9車種が体験できるイベントで、ストリートグライドもラインアップされている。ハーレーオーナーはもちろん、他メーカーオーナーや、免許はあってもバイクを持っていない人も参加可能だ。アクセスが良くなった今年のブルースカイヘブンで最新ハーレーを体感してみてはいかが?