一般社団法人 ぱちんこ広告協議会(PAA)は、ギャンブル等依存症問題啓発週間中の5月20日(月)に、全日本学生遊技連盟(学遊連)の協力を得て、学生と共に依存問題について考える「依存問題勉強会 ~学生と考えるぱちんこ依存問題」を開催した。

  • (写真左より)学遊連 学生理事の浪岡将史氏、中村ターリック氏、鈴木康太氏、ニラク 総務法務部の武田裕明氏、ワンデーポート 理事・施設長の中村努氏、ぱちんこ広告協議会 理事長の嶋田崇氏、ぱちんこ広告協議会 依存問題勉強会PT 担当理事の松丸仁氏、パチ7のハニートラップ梅木氏

昨今、TVニュースなどでも話題になることが多いギャンブル等依存症。昨年に続いて行われた今回の勉強会では、依存問題勉強会PTの大石大氏とパチ7のハニートラップ梅木氏による司会進行の下、「依存に関する取組み」の状況および、学遊連のメンバーを交えたディスカッションで構成された。

「この業界において、依存問題は非常に重要な問題」という、ぱちんこ広告協議会 理事長の嶋田崇氏の開会挨拶に続いては、ギャンブルに問題がある人の回復支援施設である認定NPO法人ワンデーポートの理事・施設長を務める中村努氏が、依存に関する取組みを紹介する。

  • ぱちんこ広告協議会 理事長の嶋田崇氏

かつてギャンブルにハマり破綻してしまった経験を持つ中村氏だが、「失敗は大事であり、そのときの失敗や経験が自分の基礎になっている」と振り返る。そして、自身の経験を伝えるために、ワンダーポートを立ち上げたが、時代が変わり、社会が変わってしまっているため、「自分の経験を伝えても役に立たない」と冷静に分析する。

  • 認定NPO法人ワンデーポート 理事・施設長の中村努氏

そして、ギャンブリング障害(Gambling Disorder)は、心身の機能障害だけでなく、社会的な障壁が重なって問題が起こると指摘。そのため、依存が病気だから治療すれば良いという話ではなく、社会的な障壁を取り除くことも重要であると続ける。

実際、障害支援には「医療モデル」と「社会モデル」があり、医療モデルはあくまでも治療で、環境の影響はあまり考慮しない。そして、世界的には、個人の特性ではなく、社会によって作られた問題として「社会モデル」を重視するが、日本では、ギャンブルに関する問題は医療モデルだけで、社会モデルについては考慮されていないという。

ギャンブルにはハマりやすい人とハマりにくい人がいるが、ハマりやすい人の特徴として、「衝動的」「強い不安」「一つのことに拘る」「負けず嫌い」「認知の歪み」などを挙げ、こういった個人的な要因に、社会的な要因が重なることで依存は起こるのだが、ニュース報道などでは、あまり社会的要因が語られることはなく、どちらかというと個人的な問題と捉えられがちだという。

そして、ギャンブルに関する問題は、病気や障害ではなく、"失敗"と捉えるべきだと中村氏は主張。「若い人は失敗できるのが特典であり、失敗の中から学んでいくべき。その意味では、パチンコは適度に失敗できるギャンブル」との見解を示した。

続いて、脳汁の実態を解き明かしたことでも知られる、公立諏訪東京理科大学 情報応用工学科 教授の篠原菊紀氏がZOOMにて参加。「スマートPLAYスタイルのすすめ」をテーマに、依存に関する取組みを紹介した。

ギャンブル等依存症は、厳密に言えば「ギャンブル障害」と「危険な遊び方」に区別されるものだが、日本ではその区別があいまいだと指摘。「ギャンブル障害」は、「遊び方がコントロールできない」「人生の関心事や日常生活よりパチンコ・パチスロを優先してしまう」「人間関係や健康・経済面への悪影響があるのに続けてしまう」といった要素すべてが長期間続いており、これらが原因で生活に顕著な障害が発生したり本人や周囲が苦痛を感じたりしている状態を示すもので、そこには達していないが、本人や周囲に健康被害が生じるリスクが高まっている状態は「危険な遊び方」と呼ばれる。

現在、遊技業界では、いわゆるギャンブル等依存症の予防を目指し、自己申告・家族申告プログラムとスマートPLAYスタイルがすすめられており、自己申告・家族申告プログラムでは、遊技金額、回数、時間を制限したり、入店自体の制限などが行われるが、実のところ、時間、金額、回数の制限は、ある程度の有意は相関関係はあるものの、効果量が小さく、あまり有効とは考えられていない。

それに対して、特に「危険な遊び方」においては、「上限を決めて遊ぼう」「空いた時間で遊ぼう」「周りの人にうそをつかず遊ぼう」といった「スマートPLAYスタイル」のほうが、効果量も大きく、予防的に有効だと指摘。実際、このスタイルで遊んでいる高齢者は認知機能が高い傾向にあるという。

実際、ギャンブリング障害は誰もがなりえる障害だが、「リスクには濃淡がある」という篠原教授。そして、リスクのある人こそ、「スマートPLAYスタイルが重要である」とあらためてその有効性を主張した。

続いて行われたディスカッションでは、ワンデーポートの中村氏、篠原教授に加え、ホールの店長を務めた経験もあり、現場での依存対策に取り組んでいる、ニラク 総務法務部の武田裕明氏、さらには、学遊連 学生理事の浪岡将史氏、同じく学遊連の鈴木康太氏、中村ターリック氏が参加した。

  • ディスカッションには、ニラク 総務法務部の武田裕明氏や学遊連のメンバーも参加

ディスカッションでは、「依存のイメージ」などのテーマに沿って、それぞれの立場での意見をぶつけ合い、熱い議論が繰り広げられた。

最後に、ぱちんこ広告協議会 依存問題勉強会PT 担当理事の松丸仁氏が「継続的にこのテーマを取り組んでいけるのはPAAならでは。今後も引き続き取り組んでいきたい」と、今後の継続への意欲を明かし、およそ2時間におよぶ勉強会を締めくくった。

  • ぱちんこ広告協議会 依存問題勉強会PT 担当理事の松丸仁氏