■Vシネクストは50、51話のような気持ち

――切ないような、寂しいような、それでも満足したような、不思議な余韻を残しつつ「神様」となって人々を見守るようになった英寿でしたが、2023年12月公開の『仮面ライダーTHE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦』では久々に道長や景和、祢音たちと再会しましたね。神の英寿を演じるときには、以前と演じ方を変えたりしましたか。

英寿自身の根幹というか、性格そのものはたとえ神様になったとしても変化していないかなと、自分なりに解釈していました。だから映画でみんなの前に現れたときも、いつもどおりの英寿として演じています。

  • 簡秀吉
  • 簡秀吉

――「ガッチャード&ギーツ」では、愛犬コンスタンティン、愛称「コンちゃん」と英寿とのほほえましい交流が印象に残りました。回想シーンでコンちゃんとたわむれる簡さんがとても素敵な表情をされていましたね。

コンちゃんがとてもいいお芝居をしてくれて、楽しい撮影でした。飼い主さんの声かけに応じて、ちゃんと指定の位置で倒れてくれたりして、すごくいい演技をする犬だなあと感心しながら共演させていただきました(笑)。もともと僕も犬が好きですから、コンちゃんといっしょに遊んでいるシーンは芝居を忘れて楽しんでいました。雨の中でコンちゃんに別れを告げるシーンでも、気持ちが入ってしまって悲しくなりましたね……。

――Vシネクスト『仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング』では現代の英寿と白い髪のエースの2役を務められました。人間と異種族との愛憎をテーマにした重いストーリーや、バイオレンス風味の濃いアクションがある本作の内容について、どういう印象を持たれましたか。

最終話が49話で、Vシネクストはその続きの50、51話のような気持ちで取り組みました。エースを演じるときは、現在の英寿よりもはるかに経験値や知識を積み重ねているような雰囲気を出したいという考えがありました。いろいろなことを経験し、すべて悟っている、達観しているエースの表現として、今の英寿との会話でも「そんなことはもうわかっているよ」みたいな、失笑に近い微笑みを意識的に入れたりしています。

――白い髪のエースのほうは、あまりにも人間離れしたたたずまいなので、少し「怖い」雰囲気を感じました。

簡秀吉

決して悪ではありませんが、すべてにおいてネガティブで、諦めているのが白い髪のエースです。それに対して、そんなことはない、絶望なんてしないぞという意志を示しているのが英寿ということになります。白い髪のエースを演じるときに気をつけたのは、まばたきをしないくらいの勢いで、目標には決して視線を外さない。にらみつけているようなイメージをもって芝居をしていました。

――英寿と白い髪のエースが向き合う2役のシーンは大変だったのではないですか。

全然そんなことなかったです。まず白い髪のエースの向きを撮ったあと、立ち位置を入れ替わって英寿のほうを撮りますが、そのときギーツのスーツアクターをされている中田(裕士)さんに白いカツラを被ってもらって、エースになりきっていただきながら撮影していました。同じ場所で2人分の演技をするのですが、中田さんのおかげでとてもスムーズに進行しました。

「ドゥームズギーツ」に対しての感想は

――エースが変身する金色のギーツ=「ドゥームズギーツ」をご覧になったときの感想はいかがでしたか。

今までのギーツの強化フォームの中で、いちばんのカッコよさだと思いました。歴代のギーツはぜんぶカッコいいと思っていますけど、やっぱり「金色」というのがいいですね。

――ドゥームズギーツの変身ポーズで、特に意識したことは何ですか。

アクション監督の藤田(慧)さんと話し合って「シンプルであればあるほどいいよね」っていう結論に至りました。極力「指パッチン」だけが際立つよう、余計な動きをそぎ落とした変身でいきたかったんです。

――またもや英寿が有刺鉄線に拘束され、身動きできないというテレビシリーズのオープニングを思わせるシーンがありましたね。

簡秀吉

あの有刺鉄線、チクチクして痛いんですよ(笑)。動きを封じられながら芝居をすること自体は大丈夫なのですが、あの状態までセッティングするのにかなり時間がかかりますので、それまでじっとしているのがツラかったですね。

――放送終了後、簡さんをはじめとする主要キャストの方々は『仮面ライダーギーツ ファイナルステージ』で各都市をめぐられました。コロナ禍のため長い間禁止されていた観客の「声出し」が今年から解禁となったそうで、ファンのみなさんからの熱い声援がダイレクトに届いたかと思います。ファイナルステージの思い出をぜひお話ししてください。

僕は映画とか観ていても、すぐ作品世界に没入して泣いてしまうタイプなんですけど、ステージの上で挨拶していると、ペンライトを振ってくれるみなさんの笑顔や、温かい声援に感情が揺さぶられて、ついついうるって来てしまいましたね。やっぱり生の歓声をいただくと、ええなあって思います(笑)。改めて、1年間『ギーツ』を応援してくださったみなさん、そして一緒に作品を作ってきたキャスト、スタッフさんへの感謝の気持ちが湧き上がり、自然に「ありがとう」という言葉が出てきました。

――『仮面ライダーギーツ』に携わっていた、すべての方たちへの感謝の思いがこちらにも伝わってきました。せっかくなので、スタッフのみなさん、キャストのみなさん以外で、この人に御礼を言っておきたい、という方がいらっしゃったら、この場でお話ししてください。もちろん、何人でもかまいません。

いちばん近いところで、一生懸命僕を支えてくれたマネージャーさんにも全力で感謝を伝えたい! そして、僕をこの世に生んでくれた母にも感謝です。今の自分がここに存在するのは「両親」のおかげです!

――『仮面ライダーギーツ』を終えた今、すでにいろいろなお仕事をされている簡さんですが、『ギーツ』で培ったスキルで現在とても役に立っているのは、どんなことでしょうか。

カメラの前に立つことが自然となり、緊張しなくなったことですね。『ギーツ』の1年で鍛えられましたから、そこに何の抵抗もありません。お芝居そのものについては発展途上だと思っていますので「仮面ライダー」を演じて培ってきたものを、これからの仕事でうまく発揮することができればいいなと思っています。

  • 簡秀吉

――俳優として、簡さんが今後やってみたい役柄を聞かせてください。

将来的には、与えられた役ならどんな人物でもこなせるような役者になりたいです。でも今は、制服を着た役を演じてみたいですね。学園ドラマとか、まだ生徒役でいけますかね(笑)

――いつかまた、簡さんが浮世英寿として「仮面ライダー」の世界に帰ってくるとしたら、何年くらい後がいいですか?

そうですね……(しばし考えて)……仮面ライダーギーツ「20周年」くらいのタイミングで、また地上に英寿として現れてみたいです。ちょっと、ヒゲとか生やしていかにも「神様」っぽくしているというのはどうでしょう? 神様も齢を取るのかなあとか、言わないでくださいね(笑)。そんな日がやってくることを夢見て、これからも簡秀吉、頑張っていきたいと思います!

■簡秀吉
2002年10月23日生まれ、京都府出身。高校時代はラグビーに明け暮れ、スカウトをきっかけに芸能界入り。ネット配信の恋愛リアリティー番組『今日、好きになりました。』(2019年)で注目され、テレビドラマ『ナンバMG5』(2022年)、映画『あしたのわたしへ 私の卒業 -第3期-』(2022年)に出演。『仮面ライダーギーツ』(2022年)の仮面ライダーギーツ/浮世英寿役でテレビドラマ初主演。