藤井聡太棋王に伊藤匠七段が挑戦する第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は第4局が3月17日(日)に栃木県日光市の「日光きぬ川スパホテル三日月」で行われました。対局の結果、相居飛車の力戦から抜け出した藤井棋王が114手で勝利。3勝目を挙げ自身初の棋王防衛を達成しました。

意表の村田システム調

伊藤七段の先手番で始まった本局、角換わりに進むかと思われた序盤で後手の藤井棋王が変化します。角道を開ける手を保留して金銀の活用を急いだのは研究勝負を避けるためと思われる工夫。これを見た伊藤七段が棒銀から右銀の交換に持ち込んで局面は一段落です。

棒銀がさばけたのは伊藤七段にとって確実なポイントながら形勢は互角。ここから手番を得た藤井棋王の反撃が始まります。3筋に伸びた先手の歩を目標にじっと持ち駒の銀を打ったのが地味ながら大切な準備。端に覗いた角との協力で先手の銀を打たせ、手得を主張します。

盤石の指し回しで防衛

難解な模様の取り合いを前に両者長考が続きます。黙っていては後手陣にだけ進展性があると見た伊藤七段は角筋を生かした飛車のコビン攻めに期待しますが、藤井棋王はここから読みの入った受けでリードを奪います。角取りを手抜いて飛車取りで返したのが決断の一手。

優位に立ってからの藤井棋王の指し回しは的確でした。繰り出される伊藤七段の勝負手にもひとつひとつ丁寧に対応し、攻めが一段落したところで反撃に乗り出したのが盤石の指し回し。終局時刻は19時7分、最後は自玉の寄りを認めた伊藤七段が投了を告げました。

勝った藤井棋王は3勝0敗1分で自身初となる棋王防衛に成功。あわせてタイトル戦の連覇記録を21と伸ばしています。敗れた伊藤七段は局後「中盤でバランスを崩してしまう展開が多く、それを修正できなかった」と番勝負の反省を口にしました。

水留啓(将棋情報局)

  • 藤井棋王は局後の記者会見で「どの将棋も難しいなかで結果を残せてうれしく思う」と振り返った

    藤井棋王は局後の記者会見で「どの将棋も難しいなかで結果を残せてうれしく思う」と振り返った