第13期加古川青流戦(主催:加古川市、一般財団法人加古川市ウェルネス協会)は、藤本渚四段と吉池隆真三段の間で争われる決勝三番勝負が11月4日(土)・5日(日)に兵庫県加古川市の「刀田山鶴林寺」で行われました。対局の結果、2連勝した藤本四段が優勝を飾るとともに本棋戦における最年少優勝の記録を打ち立てました。

久々の十代対決

ともに18歳の両対局者、どちらが勝っても初優勝となる決勝三番勝負は本棋戦10年ぶりとなる十代対決に。同週に行われた新人王戦決勝で上野裕寿四段に悔しい逆転負けを喫していた藤本四段としては願ってもない名誉挽回のチャンスです。

吉池三段の先手番で幕を開けた第1局は藤本四段の雁木に吉池三段が右四間飛車で対抗して激しい攻め合いに突入します。終盤の入り口まで好調に進めた吉池三段ですが、終盤の競り合いに見損じがあり逆転。逃げ切った藤本四段が先勝を決めました。

伝家の宝刀は右玉

一夜明けて5日午前に始まった第2局で吉池三段は得意の右玉を披露。練習将棋を指す間柄という二人、藤本四段は戦前のインタビューで吉池三段を「右玉イケメン」と評していました。さて本局、藤本四段は穴熊の堅陣に組み替えて戦いの時を待ちます。

吉池三段は後手番ながら連続で歩を突き捨てて積極的に局面打開を図りますが、ここから藤本四段が懐の深さを示します。手にした歩を駆使して右辺で香得を果たしたのが貴重な戦果で、このまま局面が落ち着けば駒得が生きてくるという大局観です。

藤本四段が優勝

持ち時間各1時間の本局は終盤の入り口にして早くも両者一分将棋に。駒損の吉池三段は端攻めを起点に局面の複雑化を目指しますが、藤本四段はここで冷静な決め手を用意していました。穴熊の金を取らせる代償に角を外したのが読みの入った踏み込みです。

手番を得た藤本四段は豊富な持ち駒を生かして最後の寄せに出ます。終局時刻は12時38分、最後は自玉の詰みを認めた吉池三段が投了。藤本四段は2連勝として自身初となる棋戦優勝を決めました。また、18歳での優勝は本棋戦最年少の記録です。

水留啓(将棋情報局)

この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄

  • 藤本四段(左)は局後、「新人王戦で準優勝に終わった悔しい気持ちをなんとか晴らせた気がします」と笑顔を見せた(提供:日本将棋連盟)

    藤本四段(左)は局後、「新人王戦で準優勝に終わった悔しい気持ちをなんとか晴らせた気がします」と笑顔を見せた(提供:日本将棋連盟)