パナソニックが8月1日に発売する新ジャンルの家電「スマートクローゼット HCC-R600A」(以下、スマートクローゼット)。ロッカー型のスマートクローゼットは、収納した服のシワ伸ばしや乾燥、除菌・除臭、花粉などの無効化ができる家電です。

同じようなロッカー型衣類ケア製品は他社から発売されていますが、パナソニックのスマートクローゼットならではの強みとは一体なんでしょう? プレス向け体験会からお伝えします。スマートクローゼットの価格はオープン、推定市場価格は330,000円前後です。

  • 会場に展示されていたロッカー型の衣類ケア家電「スマートクローゼット」。本体サイズは幅450×奥行き613×高さ1,734mm。姿見にも使えるよう、本体前面は明るめのミラー処理になっています

  • 最大で3着のハンガーをかけて衣類ケア。本体下部の棚を使うと、ぬいぐるみなどもケアできます。右開きモデルと左開きモデルをラインナップ

  • 別売りのパンツプレス(22,000円)をセットすればズボンの折り目もつけられます。ズボンをぴっちり収めるには少し慣れが必要かもしれません。ひざ裏のシワ伸ばしを重視しています

パナソニックの衣類家電技術が集結!?

パナソニックは衣類に関する多くの家電を開発しています。今回のスマートクローゼットには、パナソニックが手がけてきた衣類家電の技術がいくつも応用されています。具体的には、高機能ドラム式洗濯乾燥機の「ヒートポンプ」、強力な蒸気を発生させるスチームアイロンの「ジェネレーター」、除菌・除臭に効果を発揮するイオン技術「ナノイーX発生器」などです。

  • 空気中の湿気を水に変換して回収する「ヒートポンプ」乾燥ユニット。パナソニックのドラム式洗濯乾燥機「ななめドラム」のLXシリーズにも搭載。一般的なヒーター式乾燥と比べて、低温で乾燥できて衣類を傷めにくく、消費電力も抑えられます

  • ジェネレーター(スチームジェネレーター)とは、蒸気を発生させるスチームボイラーとアイロンをチューブでつなげた家電のこと。一般的なアイロンより強力なスチームを噴射できます。パナソニックは海外向けに発売

スマートクローゼットには、「シワのばし」「ナノイーXコース」「乾燥」という大きく3つのコースがあります。シワのばしは、庫内にスチームを充満させて衣類のシワを伸ばし、ヒートポンプで乾燥。ナノイーXコースは、内蔵のナノイー発生器で生成したイオンを庫内に放出して除菌・消臭、および花粉やウイルスを抑制します。乾燥コースは、ヒートポンプを使って衣類を優しく乾燥したり、冬ならお出かけ前に衣類を温めたりできます。

ところで、同じような「ヒートポンプとスチームを使ったロッカー型の家電」として、2017年に日本上陸した「LG Styler」(LGエレクトロニクス)を思い浮かべた人もいるでしょう。本体の見た目も衣類ケアという機能も似ている両者ですが、もちろん大きな違いがあります。

スマートクローゼットの基本性能やシワ伸ばし能力については別記事『パナソニック「スマートクローゼット」を一足先に実機チェック! 衣類の消臭やシワ取りができるケア家電』をご覧いただくとして、ここではパナソニックのスマートクローゼットならではの機能について紹介します。両者の違いを知ることで、自分に合った製品はどちらなのか、参考になれば幸いです。

  • 筆者が6年前に自腹購入したLG Styler。とにかく便利なので、いまではロッカー型衣類ケア家電がない生活は考えられません。スマートクローゼットも気になる!

最大の違いは「振動」! パナソニックはシワ伸ばしに風を利用

スマートクローゼットとLG Styler、最大の違いは振動の有無です。LG Stylerはスチームで除菌や除臭ができるほか、ハンガーをかけるバーが振動します。スチームの中で衣類を振動させることで、衣類のシワを伸ばしたり、花粉などのゴミを落としたりできるのです。

一方、スマートクローゼットに振動機能はありません。その代わり、送風口にルーバーを設けており、庫内の風向きをコントロール。スチームでしっとりした服に風を当て、衣類を風で揺らしながら乾かすことによって、シワ伸ばしをサポートします。

  • スマートクローゼット庫内床面。奥にある送風口にルーバーがあります。ここから吹き出した風が庫内を循環し、手前の吸気口に回収されます

  • 庫内の風の動き解説図。ルーバーの角度によって、風は庫内を前回転したり、反転したりします

【動画】スマートクローゼットでシャツのシワ伸ばし(シワのばしモード)。最初にスチームでシワを伸ばし、その後は風を当てて乾燥。シャツの裾から風が入り込み、内側からシワ伸ばしをサポートします。後半はルーバーの動き

「振動しない」ことによる一番のメリットは静音性。とくに除菌・消臭時の運転音は約30dB(郊外の深夜レベルの音)と、とても静かです。日本は狭い住宅が多いものですが、スマートクローゼットなら寝室にも置けるでしょう。壁が薄い賃貸住宅でも利用できそうですね。

  • 本体の下部には、スチーム用の給水タンクと、スチームや庫内の湿気を水にして回収する排水タンク。給水と、排水タンクにたまった水を捨てるのは手動です

  • 会場では寝室に設置したイメージ展示も。電源オフ時は操作部が完全に消えて、「家電」を感じさせないデザインなのもスマートクローゼットの特徴。インテリアとしても優秀です

  • 一度ドアを開くと自動的に電源オン。扉部分にタッチ式の操作ボタンが浮かび上がります(無操作時は1分で消灯、電源オフ)。必要な操作ボタンだけ表示されるため、操作に迷いにくいのも良いですね

もうひとつの違いは「ナノイーX」の存在です。LG Stylerは除菌や消臭などのケアにスチームを利用するのに対し、スマートクローゼットはOHラジカルと呼ばれるイオンを使います。このため、除菌・除臭ケア時はスチームによる湿度アップがありません。水分を嫌う素材の衣類を安心して除菌・除臭ケアできるのはうれしいポイント。おうちで手洗いできない「ドライクリーニング必須」の衣類には、このナノイーXコースが魅力的です。

  • 今回のイベントでは、衣類のプロであるスタイリストの亀恭子氏によるトークセッションも。2023年の秋冬ファッションはパワーショルダーにスパンコール、シースルーといったゴージャスなスタイルが目立つとのこと。うかつに洗濯できない衣類が増えそうですね

衣類ケア家電の選択肢が増えた!

おもにスマートクローゼットと既存製品の違いについて見てきましたが、スマートクローゼットはその静音性や、デリケートな衣類に向いている点が特徴です。とはいえ「スマートクローゼットのほうが優秀なのか?」といえば、一概にそうでもありません。LG Stylerの「振動」によるケアのほうが、わかりやすくて好みというユーザーもいるはず。また、スマートクローゼットは「操作の簡単さ」を考えてあえてIoTにしていませんが、LG StylerはIoT対応。これもユーザーの好みが分かれそうです。

置き場所が寝室しかないならスマートクローゼット、花粉を(無効化するのではなく)物理的に落としたいならLG Stylerなど、自分の生活スタイルに合った製品を選びたいですね。いずれにしろ、いままでLG Stylerという選択肢しかなかった「ロッカー型の衣類ケア家電」にパナソニックという大メーカーが参入したのは大きなトピックです。一度使い始めると、手放せなくなるくらい便利な家電なので、パナソニックの参入で選択肢が増えたことは個人的にもうれしく思っています。

  • 今回の体験会では、入場時に参会者のジャケットを預かってスマートクローゼットで除菌・除臭ケアしてくれました。当日は35℃を越える気温で汗だくだったので、ありがたいサービスでした。今後はイベント会場やホテルなど、個人宅以外への設置も増えるかも?